院長のつぶやき 網膜色素変性症と難病医療費助成 2017年11月12日
難病医療費助成制度は、難病を患う人の医療費負担を軽減する制度だ。
治癒する見込みのない難病では、医療費負担が重い。
何年も、何十年も、病医院通いが続き、終わりがない。
この制度では、医療費負担が3割から2割に引き下げられる。
また、所得に応じて、自己負担上限額が設定される。
要するに、医療費を少し安くしますよ、という制度で、無料にはならない。
無料でなくても、安くなるのは、ありがたい。
眼科でこの制度の対象になるのは「網膜色素変性症」が圧倒的に多い。
緑内障、糖尿病網膜症と並び、日本人の3大失明原因の1つになっている。
昔から指定難病として取り扱われてきた。
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難病医療費助成制度は対象となる疾患を増やしてきた。
2015年には110疾患から306疾患まで拡大した。
福祉が充実するのは良いことだ。
だが、対象疾患を増やすのと引き替えに「重症度分類」が導入されていた。
このことはつい最近知った。
今までは、診断が確定すれば助成が受けられた。
これからは、病状が一定以上重症でなければ助成されない。
良いほうの眼で判断することになっているので、
片目が失明寸前で、もう一方の眼にも発症しているような場合でも、
対象外にされてしまうことがある。
最近、当然該当するだろうと思っていた患者さんが、対象外になってしまった。
困ったことに、今まで助成を受けていたのに、
基準の変更が原因で助成が受けられなくなる人もいる。
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人口の高齢化に伴って医療費が膨張していることは知っている。
医療費抑制が必要なことも理解している。
(だからといって厚労省のやり方に全面的に賛成はできないが)
しかし、網膜色素変性症は進行性の病気でだんだん悪化していく。
軽症でも、定期的な通院は必要だし、検査もしなければならない。
重症度分類で助成対象に該当する場合、しない場合を比較しても、
通院回数も、診療に必要な医療費の額にも、大して違いはない。
助成するかしないか差をつける合理的理由は見当たらない。
一生病気と闘わなければならない人が、
指定難病の対象疾患と診断されながら、
一定以上の重症度に達するまで助成を受けられないのは、
かなり過酷な制度設計だと思う。
(2017. 11.12)