川本眼科

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川本眼科だより

川本眼科だより 70眼内レンズで近視治療 2005年12月31日

レーシックという近視手術をご存じでしょうか。安全性も高く、手術成績も良好で、近年めざましく普及してきました。
 
ところが、レーシックはあまり近視が強すぎると受けられないことがあります。角膜を削る量が多くなりすぎて問題がおこりやすくなるのです。本当は、高度近視の方こそ手術に一番期待を寄せていらっしゃるのだと思いますが・・・。
 
最近になり、高度近視の方でも可能な新しい近視手術が実用化されました。今回はこの最新の近視手術をご紹介いたします。

レーシックの普及

レーシックは角膜を削って近視の度を軽くする手術です。川本眼科だよりでも2回取り上げてご紹介しています。
 
川本眼科と連携している名古屋アイクリニック(金山)では、すでに6000眼のレーシックを行なっています。手術後9割以上の方が1.0以上の裸眼視力を得ています。
 
医師や看護師などの医療関係者が積極的にレーシックを受けているという事実が、レーシックの優秀性を物語っています。(医師は38名、看護師は78名) 中京病院の眼科医自身もレーシックを受けているのです。

高度近視だとレーシックは不適

ところが、レーシックは近視が強すぎると受けられないことがあります。
 
角膜を削って近視の度を軽くするわけで、近視が強ければ強いほどたくさん角膜を削ることになります。角膜の強度を保つために必要な厚みは残しておかなければなりません。それに、たくさん削るとグレア(夜間光がにじんだように見える)が生じやすくなるという問題もあります。
 
日本眼科学会のガイドラインでは、レーシックでの屈折矯正量を6D(ジオプター=近視の度の単位)までが安全だとしており、どんな場合でも10Dを超えないことが望ましいとしています。つまり高度近視でレーシックをすることは考えものだと言うのです。
 
高度近視の人はがっかりですね。近視が強い人ほど近視を治したいわけですから、残念な思いもそれだけ強いことでしょう。

近視治療のための白内障手術

高度近視でも、白内障手術をすると近視を治してしまうことができます。白内障手術では、濁った水晶体を取り除き、かわりに人工のレンズ(眼内レンズ)を目の中に入れます。眼内レンズの度はいろいろあり、この度を選ぶことで、術後完全に近視を解消してしまうこともできます。
 
つまり、白内障手術は、近視や遠視に対する屈折矯正手術の意味も持っているのです。
 
そのため、高度近視の場合、白内障がまだ軽くても、早めに手術をしてしまうことがあります。要するに、近視治療を主目的として水晶体を取り除き眼内レンズを入れる手術をするのです。仮に全く白内障になっていなくても手術は可能です。

水晶体を取らずに眼内レンズを
 

しかしながら、若い方で水晶体を取り除く手術をするとピントを調節する力がなくなってしまいます。要するに老眼になってしまうのです。
 
そこで、最近、水晶体を取らずに眼内レンズを入れる手術が開発されました。「有水晶体眼内レンズ挿入術」というのが正式名称です。
 
この手術では、どんなにひどい近視でも手術をすることができます。しかも、若い方に手術をしても老眼になる心配はありません。
 
すでに、川本眼科から紹介してこの手術を受けられた患者さんもいらっしゃいます。結果は上々でとても満足していただけました。
 
手術としては、白内障手術に慣れた術者であればそれほど難しいことはありません。きわめて安全な手術と考えてよいでしょう。

白内障をおこすリスク
 

唯一の問題は、手術によって白内障になる危険があることです。手術時に水晶体に触るとその部分は濁ってしまいます。濁りが全体に波及すれば白内障です。
 
しかし、若い方の場合、たとえ水晶体の一部分が濁ってもそのまま全体が濁ることはまずありません。
 
もともと白内障になりやすい60歳以上の方では、この手術のあと白内障が進みやすいという結果が出ています。ただ、そういう方は白内障の手術をしてしまえばよいので、それほど大きな欠点だとは思いません。

視機能はレーシックより良い

この手術についての臨床試験の結果は素晴らしく、術後の視機能はレーシックよりも良かったのです。レーシックでは、手術前にコンタクトで得られる最良視力より良くなることはないのですが、「有水晶体眼内レンズ」では、しばしば術前視力を超えています。
 
これは、レーシックと異なり、角膜中央部分に操作を加えないせいだろうと言われています。
 
現在、手術代金が高すぎるのが難点ですが、近視の度が強い方でメガネやコンタクトから解放されたいと願っているなら、十分検討に値する手術だと思います。
 
なお、手術は川本眼科と連携しているリフラクティブ・アイ・クリニックで行っています。興味のある方は医師に御相談下さい。

2005.12