川本眼科

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川本眼科だより

川本眼科だより 73車の運転と眼 2006年3月31日

車は便利です。どこに行くにも車という人も多いことでしょう。広大な駐車場が付属した巨大な小売り施設もたくさんあり、確かに安いし品揃えは豊富だし便利この上ないのですが、しかしもし車に乗れなければ全く利用できません。
 
眼の病気で見えづらくなってくると、運転にも支障が出てきます。眼科では、車の運転に関して御相談をいただくことが多いので、今回は運転に関する話題を取り上げてみました。

普通免許更新に必要な視力

運転免許を取得したり更新したりする時は、視力検査を受けなければなりません。メガネが必要な人はメガネをかけて視力検査を受けます。その場合は免許証に「眼鏡使用」と注記されます。
 
日本では、普通免許や二輪免許の場合、両眼で0.7の視力が必要です。さらに、片目ずつ単独で0.3の視力が必要です。
 
片目の視力が0.2以下だと別室に連れて行かれて視野検査を受けさせられます。良いほうの目の視野が150度以上あれば大丈夫です。
 
もっとも、実際の更新手続きでは両目をあけて視力検査をするだけのことが多く、本人がわざわざ申し出なければ視野検査をしなくても通ってしまうようです。この辺の具体的な取扱いは試験場によって異なるそうです。一般に、運転試験場より警察署での検査のほうが甘いという評判です。
 
ちなみにアメリカでは運転免許に必要な視力は0.5だそうです。アメリカでは公共交通が発達せず、車に依存した生活様式が一般的なので、基準が緩くなっているのでしょう。

実際の車の運転に必要な視力

以上は、法律で決められた基準ですが、運転時実際に必要な視力はどの程度なのでしょうか。
 
たぶん、慣れた道を昼間走るのであれば法定の基準より視力が低くても大丈夫でしょう。しかし、夜間は基準通りの視力があっても相当見えづらいと思います。はじめての道を走らなければならないなら、標識や掲示もしっかり見えなければ困ります。事故を減らすためには、0.7という基準は妥当と言えるのではないでしょうか。
 
ただ、生活上どうしても車の運転が必要な場合もあり、よく知った道を昼間しか走らないのに、一律にダメというのも厳しすぎるようにも感じます。運転免許がなくなると今までの生活を続けることはできなくなり、家に引きこもることになったり、子供の家に同居せざるを得なくなったり、つらい選択を迫られることもあるからです。
 
ただ、加齢とともに明らかに運転能力が低下し家族は運転をやめさせたがっているのに、本人がどうしても運転免許証を手放したがらないケースは結構多く、視力検査が通らなくなることで本人もあきらめがつくという面はあるようです。

二種免許・大型免許の場合

二種免許や大型免許では基準が厳しくなり、両眼で0.8、片目ずつで0.5の視力が必要です。さらに深視力といって、ものを立体的に見る検査を受ける必要があります。
 
深視力が通らなかったと御相談を受けることも結構ありますが、ものを立体的に見る力自体は子供の時に決まってしまっていて、大人になってから向上させることはできません。
 
ただ、実際には、白内障が進行してぼやけたりかすんだりするために検査を通らなくなっていることも多く、この場合白内障手術を受けることで解決することがあります。ただし、術後必ず通ると断言はできません。やってみないとわからないのです。

免許の更新と白内障手術

白内障は60歳以上の方には大変多い病気です。白内障が進行して視力が下がり、運転免許の更新ができなくなるという事態はよくあります。
 
この場合、白内障手術をすればたいてい免許の更新ができます。(眼底病変など白内障以外にも病気がある場合はできないこともあります)
 
ただし、手術は希望すればすぐ受けられるわけではありません。川本眼科で手術をお申し込みの場合、ふつう2ヶ月ほどお待ちいただかなければなりません。また、手術のあとメガネが必要な場合には、メガネを作るための時間も必要です。
 
更新手続きの時にはじめて視力低下に気づいた場合には、期限内に手術をするのはちょっと無理です。でも、急いで手術すればなんとか期限に間に合うときは配慮いたします。

運転免許が失効したとき

更新の期限に間に合わなかった時はどうなるのでしょうか。
 
運転免許証の有効期限が過ぎると一度失効になりますが、6ヶ月以内であれば視力検査を受け直すだけで再交付が受けられます。
 
6ヶ月以内なら特に理由がなくて「うっかり更新し忘れた」という場合でも再交付が受けられます。この場合診断書は必要ないのですが、新たに免許を取得し直したという扱いになり、ゴールド免許(優良運転者)などの特典はなくなってしまいます。
 
失効時に視力が悪く眼科で治療中だったという診断書を出せば、継続扱いとなり、ゴールド免許などの特典も継続することができます。
 
6ヶ月を過ぎてしまっても、3年以内なら、診断書を提出して手続きすれば再交付が受けられます。この場合は、手術をして視力が回復してから1ヶ月以内に手続きしなければなりません。3年以内ならいつでも大丈夫と誤解しているととんでもないことになります。
 
なお、失効時点で更新可能な視力があった場合は認められません。つまり、一度は更新手続きをして試験場(警察)で視力検査を受けておく必要があります。失効まで眼科に全然かかっていなかった場合も適用されません。失効になってしまう前に、早めに眼科を受診されることをお勧めいたします。
 
なお、失効中に運転するともちろん無免許運転になってしまいます。どうぞご注意下さい。

2006.3