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川本眼科だより

川本眼科だより 159サングラス 2013年4月30日

5月になれば紫外線の強さは真夏に近いと言われています。目の紫外線対策と言えばサングラスですね。患者さんからご質問をいただくことも結構よくあります。

今月はサングラスの話題を取り上げました。正しい知識を持って、上手に使いこなしましょう!

紫外線と可視光線

光には波長があります。人間の目に見える光は波長が400~800nm(ナノメートル)くらいです。これを可視光線と呼びます。波長によって、紫、青、緑、黄、橙、赤に見えます。

紫より波長の短い光を紫外線と呼びます。紫外線は目に見えません。波長が短いほどエネルギーが大きく、それだけ人間の体に対する影響が大きくなります。皮膚に対しては、日焼け、しみ、皮膚癌などを引き起こします。目に対しては、角膜障害白内障翼状片加齢黄斑変性症など、たくさんの病気の原因になります。

赤より波長の長い光を赤外線と呼びます。赤外線も目に見えません。波長が長いので本来エネルギーは小さいのですが、水に吸収されやすい波長の赤外線は、人体など水分を多く含む物質を離れた場所から加熱できます。(赤外線ヒーター等)

紫外線が強いのは4月~9月

太陽が水平線に近い時は、光が大気中の長い距離を通ってくるので、波長の短い紫外線は吸収されて減弱します。(波長の長い光は届く)  太陽が真上にあると、光は大気中の短い距離しか通らないので、紫外線が強いまま地上に到達します。

夏至に近いほど太陽の位置は高く、紫外線が強いわけです。お彼岸くらいでも、正午前後の時間帯では結構紫外線が強いのです。1日の平均でみると、4月~9月は紫外線が多い時期です。

勘違いしがちですが、気温と直接関係はなく、4月などまだ気温は肌寒いくらいでも正午頃には紫外線が強く、夏のうだるように暑い日でも日が沈む直前なら紫外線は弱くなっています。

紫外線防止と眩(まぶ)しさ緩和

サングラスの目的は主に2つあります。

紫外線を防ぐことこそ一番大切な目的です。紫外線は多くの目の病気を起こしますが、とりわけ加齢黄斑変性症は治療困難な厄介な病気で、紫外線対策をして予防することが大事です。

眩しさを和らげることも重要です。白内障では逆光に弱くなり眩しさを強く感じるようになります。サングラスが有効な対策になります。

なお、紫外線対策には日傘やつばの広い帽子なども使われますが、地面や建物に反射して目に入る紫外線を防ぐことができないので、あくまでもサングラスと併用するものだとお考え下さい。

色の濃さと紫外線透過率は別

サングラスの色の濃い薄いは可視光線を通す割合で決まります。紫外線は目に見えないわけですから、色の濃さとは関係ありません。色が濃いほど紫外線も通さないような気がしますが、ほとんど見た目が透明でも紫外線を99.9%遮断することが可能ですし、逆に色が濃くても紫外線を比較的通しやすいこともありえます。

ですから、紫外透過率は表示で確認するしかありません。透過率1%以下の製品か、UV400 と表示してある製品を選びましょう。実際にはよほどの安物でない限り、まともなサングラスはみんなそうなっています。日本ではサングラスでない普通のメガネレンズでも UV400が当たり前になっているほどです。(実はUVカットを謳っていなくても紫外線を7割以上吸収しています)

サングラスの脇から入る紫外線

脇から入る紫外線の問題は、以前NHK「ためしてガッテン」が取り上げたことで世間に知れ渡りました。

普通のサングラスは上下左右に隙間があります。この隙間から紫外線が入ってきます。瞳孔が開いているとそれだけ紫外線が入りやすくなります。

この問題の対策は、なるべく脇の隙間が少なくなるようなデザインのサングラスをかけることです。顔の側面までレンズがカーブして覆ってくれるとか、サイドが幅広になっているとか。ゴーグルみたいに隙間が塞がっていれば最良です。でも、目立ちすぎて気恥ずかしいですよね。

色の濃いサングラスをかけると色が薄いサングラスよりも瞳孔が開きます。瞳孔はカメラの絞りと同じで、目の中に入る光の量を調節しています。「ガッテン」では、色が濃いサングラスをかけると、瞳孔が開いて脇の隙間から入る紫外線が増える心配があると説明していました。

眩しければ色の濃いものを

「ためしてガッテン」の理屈は正しいのですが、世間には誇張された形で伝わり、色の濃いサングラスは健康に悪いかのような誤解を生みました。ネットでもそういう記述がたくさんあります。

実際にはほとんど心配する必要はありません。むしろ、必要なら、積極的に色が濃いサングラスを選びましょう。

眩しさを防ぐのはサングラスの二大目的の1つです。当然色が濃いほど眩しくありません。眩しさを防げなければサングラスをかける意味は半減します。

晴れた日に屋外に出れば室内の何百倍も光が強いことがあります。それだけ明るければ可視光線を9割吸収する色の濃いサングラスをかけても瞳孔は縮みます。それに、サングラスの脇から入るのは紫外線だけではなく、可視光線も脇から入ります。ということは瞳孔は相当に縮んでいるはずで、たいていは大丈夫と思います。

ガッテンは「色が濃いほど紫外線を防げるのではないか」という先入観が誤りだと指摘しただけです。色が薄いほうが良いと主張した訳ではありません。ただ、話題作りをしようとセンセーショナルに取り上げる手法は批判を免れないでしょう。この番組は昔から勇み足をよくやります。

青色光への対策は必要か

最近、ブルーライト(青色光)の害が言われ始めました。青色光は、可視光線の中では波長が短くエネルギーが大きい光、要するに紫外線に近い光です。そのため、目の病気を発症/悪化させるのではないかと心配されています。

白内障手術で用いる眼内レンズでは、青色光が入るのを減らすため、黄色く着色したレンズが使われるようになりました。LEDに青色光が多く含まれることを気にする人もいます。大量生産品の場合、念のためにあらかじめ低コストでできる対策をしておくことは良いことだと思います。

ただ、青色光が現実に問題を起こしているという証明は全くありません。それに、青色光の害は紫外線の害よりはるかに少ないと予想されます。商売のために騒がれている側面が大きいので、あまり過剰に心配する必要はありません。優先すべきは紫外線対策であり、青色光への対策は紫外線対策を完璧にした後で取り組むべきものと考えます。なお、私自身は青色光対策など、何もやっていません。(パソコン画面の背景は青色にしていてフィルターも付けていません)

(2013.4)