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川本眼科だより

川本眼科だより 173保険金の請求 2014年6月30日

たいていの方が生命保険に加入しています。そして、生命保険加入者の大多数は医療特約を付けています。また、生命保険には入っていなくても、医療保険には加入している方もいらっしゃいます。

私は保険の専門家ではありませんが、仕事柄、生命保険請求のための診断書を書く機会が多く、その際に得た知識をお伝えしたいと思います。

約款ですべて決まる

生命保険や医療保険で保険金が支払われるか否かはすべて約款で決まります。約款は細かい字でびっしり書いてあり、きちんと読んだ人はほとんどいません。魅力的な宣伝文句が並ぶパンフレットと営業員のセールストークだけで判断して保険契約を結んでいるのが普通です。でも、そういうパンフレットには細かい契約条件は書いてありません。やはり約款には目を通しておくべきだと思います。私は約款を拡大コピーすることにしています。老眼には文字の小ささがつらいので。

約款は保険会社によって少しずつ違います。ただ「支払いの対象になる病気の種類」などの根幹部分はほぼ横並びになっています。役所の指導があるのかも知れません。

入院給付金

入院給付金は「入院1日あたり〇〇円」という形で支払われます。眼科では入院期間が短いので金額もたかが知れています。硝子体手術や網膜剥離手術の場合でも1週間くらいの入院です。多くの保険では免責期間というものがあり、短期間の入院では入院給付金をもらえません。

逆に、「日帰り入院」でも入院給付金が支払われる保険もあります。そのことを強調する宣伝に心を動かされますが、1日分の給付金だけの話ですし、当然その分保険料が割高ですから普通は得になりません。(それより給付限度日数のほうがずっと大事です!)

なお、眼科手術のうち圧倒的に多い白内障手術は「外来手術」で「日帰り入院」ではありません。日帰り入院かどうかは、会計時に医療機関が発行する明細書に「入院基本料」が算定されているか否かで判断できます。

手術給付金

手術給付金は「手術ごとに決められた金額」が支払われます。例えば白内障手術を受けた場合にもらえます。

右眼と左眼は別々の部位として扱われるので、違う日に手術していればそれぞれ給付金をもらえます。私の知っている限りそれが正しい取り扱いです。ただ、インターネットには、右眼と左眼を同一部位とみなして1回分の給付金しか支払わないと保険会社が主張したという事例が見られます。担当者が間違った解釈をしているのでしょう。

普通、入院手術でも外来手術でも手術給付金は支払われます。しかし、かんぽ生命だけは特殊で、入院しない限り手術給付金ももらえません。それを理由に入院手術を希望した方がいらっしゃいましたが、入院には何かとお金がかかるので、得になったかどうかは疑問です。

レーザー治療と手術給付金

レーザー治療も手術給付金の対象になります。ただし近視矯正手術(レーシックやスマイル等)は対象外です。

右眼と左眼は別々の部位としてそれぞれ給付金が支払われます。レーザー手術の場合、一度給付金を受け取ると、次は60日以上間隔があかないと支払われないというルールがあります。これは保険契約を締結した時期によって異なります。

保険会社所定の診断書

給付金の請求には、それぞれの保険会社が定めた書式に医師が記入して証明することが必要です。保険会社に連絡すると必要な書類がもらえます。

この際、「病名」と「手術名」を尋ねられるようです。単に書類をもらうだけならグチャグチャうるさいことを言わずに渡してくれればいいのに、と思ってしまいますが、保険会社の方にも事情はあるのでしょう。

患者さんもなるべく早く保険金をもらいたいでしょうから、できるだけ書類をお持ちになったその日に書いてしまうことにしていますが、記載しなければならない事項が多いと何日かお待ちいただく場合もあります。ご了解ください。

診断書料は自費です。当院の診断書正規料金は3千円+税ですが、比較的簡単な保険診断書の場合は2千円+税を頂戴しております。

なお、入院給付金を請求する場合は必ず入院した病院で証明してもらって下さい。手術給付金の場合も手術した施設で証明するのが本来ですが、要は手術した事実さえわかればよいので、当院で証明することがあります。今まで問題になったことはありません。

請求の時効

保険の請求は約款で3年が時効とされています。3年以上放置してあった場合、保険金をもらえなくても文句は言えないということです。

ただし、実際にはもっと時間が経っていても支払いをしてくれるケースが多いようです。すっかり忘れていたら、保険の代理店が親切に請求を勧めてくれることもあります。あきらめずに請求してみましょう。

保険会社の調査

時々、保険請求の件で保険会社の調査員が来訪されることがあります。 患者さんの同意書は必ず提示されます。できるだけ当院からも患者さんに電話連絡して了解いただくようにしています。

問題になるのは、保険契約を結んだ時点で既に病気になっていなかったかという点です。いつ病名を告げたのか、いつ頃どんな説明をしたのか、微に入り細にわたり質問されます。その場でたくさんの書類に記入を求められることもあります。面倒くさいので避けたい面会ですが、仕方ありません。

病気を知っていたのに保険会社に申告していなかったならば告知義務違反となり、給付が受けられません。それどころか保険契約そのものが解除されてしまうかも知れません。

古い契約の場合は調査されません。契約してから手術まで2年以内だと問題になるようです。

白内障の発症時期って・・

保険請求の診断書では「白内障の発症時期」を記載することが要求されます。ただ、白内障は水晶体の加齢の延長線上にあり、生理的変化と病的変化をはっきりと区切るのは無理があります。

苦し紛れに、発症時期は「不明」とし、病気の原因は「加齢」としていますが、それで問題なく請求できているようです。

請求のための相当に形式的な証明書ですから、医学的に正しいかどうか申告に悩む必要はなさそうです。

(2014.6)