院長のつぶやき 混合診療の二重基準 2006年4月19日
混合診療というのは、保険診療と自費診療を一緒に行うことだ。
混合診療は禁止されていることになっている。一連の診療行為で
一部でも自費診療の部分があれば、全部を自費にしなければ
ならないとされている。
ところが、混合診療禁止には、実ははっきりした明文規定がない。
何が混合診療で、何が混合診療でないかもはっきりしない。
かなり恣意的に運用されていて、困ることが多い。
例えば、歯科は完全に混合診療だと言える。虫歯の治療で途中から
自費になることはよくあることだ。しかし、これも建前上は混合診療では
ないのだそうだ。産科でも、正常分娩は自費、異常分娩は保険と
決められているので、順調 そうなお産でも途中から問題がおこって
帝王切開になったりすれば保険が使えることになる。
私はこれも妊娠したときからの「一連の診療行為」だと思うのだが、
混合診療ではないのだそうだ。それに、診断書を書いた時の文書料は
自費だが、これも混合診療ではないとされている。
診断書も診療行為の一部だと思うのだが。
「特定療養費制度」というものもある。差額ベッド代とか高度先進医療とか、
紹介状のない初診料とか、医薬品の適応外投与などで特に認められた
場合、保険診療でも別途自費を徴収できることになっている。
これも実質は混合診療だと言える。
眼科でも、一昔前は、保険で行う白内障手術なのに眼内レンズを自費で
購入していただいていた。これも本当は混合診療だろう。
この4月には、コンタクトの定期検査が自費になった。
初診時や自覚症状がある時は保険が使える。コンタクト診療全体が
「一連の診療行為」だと思うのだが、混合診療ではないのだそうだ。
カルテも、自費と保険では別にしなければならないという指導もされていて、
ややこしいことこの上ない。両方のカルテを読まないと全体の経過が
つかめないし、時間の順序がわかりにくくてしかたがない。
要するに、すでに実質的には混合診療が相当導入されている。
それらは別に違法ではない。それなのに、一連ではなさそうな
診療行為でも、保険診療と自費診療を同日に行うことはまかりならん、
などというやたら厳しい指導がされたりする。
二重基準(ダブル・スタンダード)ではないだろうか。
明文化されていないために、役人やら学会・医会のお偉いさんが勝手に
解釈して恣意的に運用することがまかり通っているのだ。
厳密に法的根拠を突き詰めていくと、何が許され、何が許されないのか
明確ではない。それなのに、変に目立ったりにらまれたりすると
罰せられるかも知れない、というわけだ。
はたしてこれで法治国家と言えるだろうか?