川本眼科

文字サイズ

小 中 大

川本眼科だより

川本眼科だより 6眼科の救急 2000年8月31日

急いで眼科を受診する必要があるのはどんな症状があるときですか。

川本眼科でも夜間や休日の救急に対応してもらえないでしょうか。

救急のときどこで診てもらえばよいでしょうか。

突然見えなくなったら大至急

眼科で最も緊急性があるのは「網膜動脈閉塞」です。名前の通り、網膜にある動脈という血管が詰まって、網膜の中心部がダメになってしまう病気です。発症から40分以内に適切な処置をしなければ、視力の回復が難しいとされています。

症状は、突然片目が見えなくなる、というものです。痛みはありません。そのため、患者さんにもそれほど切迫感はないのが普通です。

40分なんて、ちょっとぐずぐずしていればすぐ経ってしまいます。つまり、眼科を受診したときには既に手遅れのことが多いのです。治療の手だてを尽くしても、矯正視力で0.1くらいまで下がってしまうことは普通です。

この病気が疑われる患者さんは、最優先で診療いたします。手早く視力を測り、血流を回復させるために急激に眼圧を下げます。

眼外傷も緊急性は高い

眼外傷というのは、要するに目のケガです。

交通事故などで眼球の中身が露出するような大きなケガでは緊急性があることは明らかです。ただし、命を守るために脳外科などの診察が優先されます。

緑内障発作はすぐ眼圧を下げる

緑内障発作では眼圧が急に上昇して目が痛くなります。また、目がぼやけてかすみます。さらに頭痛や吐き気がおこります。通常症状が激しいので受診が遅れることはまずありません。ただし、70歳以上だと案外痛みが少なく、切迫感がないこともあります。

すぐに眼圧を下げる処置をしたほうがよいのですが、1日くらい治療が遅れても失明するようなことにはなりません。

頭痛や吐き気のため、まず内科を受診されることも多く、内科医に緑内障のことが念頭にあればよいのですが、内科で検査などに時間を取られて緑内障の治療が遅れることがあります。

角膜のキズは急がない

救急で眼科に受診される患者さんで最も多いのは目の痛みです。人間、痛みには敏感です。

目の痛みの大半は、角膜のキズによるものです。目にゴミが入った場合もあります。目を守るために角膜には知覚神経が密集しているので、わずかなキズでも大変痛いのです。

角膜のキズについては、ふつう治療を急ぐ必要はありません。また、救急で処置をしても、痛みを完全にとることはできません。

目が赤い、腫れたは心配ない

目が赤くなった、というのも多い症状です。

目が赤くなる病気としては、まず、結膜炎・強膜炎・ぶどう膜炎などの炎症性疾患が考えられます。めやにが多ければ結膜炎でしょう。ふつう緊急性はありません。

白目が赤くなってめやにも何もない、という場合に考えられるのは「球結膜下出血」です。白目の血管が切れる病気で、突然目が真っ赤になるため、患者さんはびっくりして救急で受診されることが多いのですが、実は全く緊急性はありません。結膜炎などとの鑑別は必要です。

白目が盛り上がってゼリーのように見える、というのも多い症状です。「結膜浮腫」といいます。目がかゆくてかいてしまうとおこりやすく、目立つので患者さんは何事かとびっくりして救急を受診されます。しかし、実はあわてる必要はありません。自然におさまってしまうことも多く、目を洗って様子をみて、翌日になってもおさまらなければ受診すればよいでしょう。

まぶたが腫れる「ものもらい」「めんぼ」も、2~3日治療開始が遅れても大きな問題はおこりません。

以上のように、「すぐに処置をしなければ手遅れになる」という意味での真の救急は眼科では少ないのです。

緊急性がないと判断できるときは、なるべく通常の診療時間に受診することをお勧めします。救急では十分な検査ができないからです。

夜間救急をしない理由

川本眼科では、現在夜間や休日の救急は取り扱っていません。

「網膜動脈閉塞」「眼外傷」「緑内障発作」といった、真の救急疾患に対応しようとすれば、どうしても人手が要ります。夜間に医師や看護婦を動員できるのは大病院だけです。しかも、こういう病気の多くは入院治療が必要で、診療所で診ても結局大病院に紹介することになってしまいます。

ゴミが入って目が痛い、といった軽い病気の場合はどうでしょうか。もちろん、これも患者さんには苦痛ですから、近くの診療所で早く治療ができればそれにこしたことはありません。

しかし、川本眼科では、医師は2人しかいません。夜間に急患を診た翌日、誰か別の医師が診察を替わってくれるわけではありません。翌日の診療にしわよせが来てしまいます。簡単な病気でも、電話を受けて診察の準備をして、診察のあと後片づけをして戸締まりをして、ということになり、どうしても1時間くらいはかかってしまいます。

幸い名古屋市には、夜間や休日の救急に対応している大病院がいくつかあります。救急については、こういう施設にお任せするのが合理的です。

そんなわけで、将来も夜間や休日の救急を取り扱う予定はありません。御了承下さい。

救急ならここへ

日曜祝日の受診なら、医師会の「休日急病診療所」をお勧めします。眼科の開業医が交代で診察しています。私も年に2回くらい診察に行きます。普通の診療所のスタイルで医師も看護婦も診察室で待っていますから、「ゴミが入った」といった軽い病気でも気軽にかかれます。入院設備はありませんので、ここで対応できないときは大病院に紹介されることもあります。

夜間の救急は、当院とも関係の深い「社会保険中京病院」をお勧めします。ここの特徴は、「救急科」というのを設けて、とりあえず急患は救急科が対応することです。必要なときは眼科医を呼び出します。

ほかに救急に対応しているのは、藤田保健衛生大、名市大、名大、愛知医大などの大学病院、杉田眼科、三宅眼科などです。

夜間は検査などもできることは限られているので、とりあえずの処置だけして、翌日また受診するよう指示されることが普通です。

名古屋市医師会 休日急病診療所
 東区葵1-4-38  TEL937-7821
 ※南区の急病診療所は内科・小児科だけです。

社会保険中京病院
 南区三条1-1-10 TEL691-7151

2000.8