川本眼科

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川本眼科だより

川本眼科だより 59AED(自動除細動器) 2005年1月31日

最近、川本眼科の待合室に、「AED」という機械が設置されたことにお気づきでしょうか?
 
これは突然死の主な原因である「心室細動」を治療する機械です。心室細動は、電気による「除細動」でしか救命できません。それも数分以内に処置しなければならないとされています。
 
眼科では、除細動器が必要になるようなことはまずないのですが、医療機関として万が一の事態にも対応できるよう、除細動器を設置することにいたしました。
 
AEDは、愛知万博の会場にも50台以上設置される予定です。今後、駅や空港などの公共施設には当然のように設置され、一般の方が使用できるようになっていくと思われます。

心臓突然死と「心室細動」

それまで元気だった方が突然倒れ、そのまま死に至ることがあります。これを「突然死」と言います。突然死は日本国内だけで年間5万人と言われています。
 
2年前、高円宮がカナダ大使館でスカッシュをしていた最中におなくなりになったのはまだ記憶に新しいところです。私(院長)の友人は、高校時代にジョギングをしていて突然死しました。突然死はスポーツ中とは限りません。私の母は睡眠中に突然死しました。
 
突然死はふつう心臓が原因です。ほかの病気では、たとえ脳梗塞や脳出血でも、そんなに急に死亡するということは考えにくいのです。心臓が原因になっているという意味で、「心臓突然死」という言葉を使います。
 
そして、心臓突然死のほとんどは「心室細動」が原因だとされています。これは、心臓の筋肉がバラバラに動いてしまい、血液を送り出すポンプの働きができなくなってしまった状態です。この状態は「心停止」とみなします。ほとんどの心停止は、心臓の筋肉が完全に動かないわけではなく、心室細動なのです。

数分以内に除細動を

いったん心室細動になってしまうと、電気ショックによる「除細動」以外に救命する手段はありません。そのための機械が「除細動器」です。救急医療を扱ったドラマなどで、除細動のシーンをご覧になったことはありませんか?
 
除細動はできるだけ速やかに行わなければなりません。心室細動がおこってから3分以内に除細動ができれば救命率は70%ですが、5分経つと50%、7分経つと30%弱しか救命できなくなり、10分以上経つとほとんど助かりません。
 
つまり、除細動は時間との勝負です。救急車を呼んでも到着まで平均で約6分かかっているそうです。ですから、可能なら救急隊の到着前に除細動を行いたいのです。

AEDは誰でも使える

心室細動になってから数分以内に除細動を行うためには、いつでも、どこにでも、除細動器が置いてある必要があります。
 
しかも、一般人でも除細動器を扱えるようにする必要があります。医療の専門家はどこにでもいるわけではないので、専門知識のない一般人に頼るしかありません。
 
AEDはこういう要請に応じて作られた機械です。電極を胸に貼りつけるだけで、機械が自動的に心室細動かどうかを診断してくれ、音声で操作を指示してくれます。操作は誰でも使えるよう、簡単になっています。

AEDの普及状況

アメリカでは、2000年5月にクリントン大統領が全米にAEDを普及させることを提唱しました。現在、連邦政府ビル、旅客機、空港、駅、スポーツ施設、ホテル、ショッピングセンター、集会所、カジノなどにAEDが設置されています。通りすがりの人が、はじめて触わるAEDを使って人命を救っているのです!
 
日本はこの件に関してはかなり遅れていたのですが、2004年7月にAEDを一般の方が使用してもさしつかえないということになりました。
 
AEDは、除細動のみに特化しているため、従来からある医療機関向け機能満載型の除細動器にくらべて相当安いのもうれしい点です。量産効果もあって5分の1くらいになっています。これだけ安いと、めったに使わない場所にも置けるというものです。
 
日本でも、愛知万博会場や中部国際空港などにAEDがそれぞれ数十台設置されることになりました。旅客機などにもここ数年で急速に設置が進んでいます。この1年、医師会なども大量購入していますし、病院でも、フロア毎に除細動器を置くようになっています。また、地方自治体が公共施設にAEDを置く動きも拡がっています。

救急の講習

厚生労働省の当初の案では、AEDは講習を受けた場合に限って使えることになっていましたが、最終的には講習を受けなくても使えることになりました。人命救助の可能性をできるだけ追求した結果です。
 
ただ、さすがに、全く講習を受けないで、救命処置をスムーズに行うのは難しいでしょう。例えば、「上半身の服を脱がせる」ことは基本なのですが、知らなければもたもたしてしまうでしょう。もし機会があったら、救急処置(人工呼吸・心臓マッサージ)やAEDの取り扱いに関する講習を受けておくことをお勧めします。
 
私(院長)も、医療関係者・救命救急士向けの講習を中京病院で受けてきました。朝から晩まで丸一日みっちりのハードな講習で、眼科ではあまり遭遇しない事態でもあるので、結構大変で汗をかきましたが、いざというときの自信がつきました。修了証は中待合いに飾ってあります。

救命処置をあなたも

AEDは近い将来広く普及するでしょう。しかし、普及しても、誰かが使わなければ宝の持ち腐れです。実際にAEDを使うのは、普通の一般人━━つまり、あなたです。
 
人命を救うには、早期の処置が非常に大切です。その時必要なのはマンパワー、人手です。119番に電話する人、人手を集める人、人工呼吸をする人、心臓マッサージをする人、AEDを持ってくる人・・・大勢の力が必要なのです。
 
もし、救命の現場に出くわしたら、できるだけ手伝ってあげて下さい。完璧にできる必要などありません。できることをすればよいのです。電話をするだけでも、大事な仕事だと思います。
 
逃げないで、助けてあげて下さい。(^o^)

2005.1