川本眼科

文字サイズ

小 中 大

川本眼科だより

川本眼科だより 116医師と学会 2009年10月31日

学会で休診って多いですよね。患者さんの立場としてはあまり休診が多いのは困ると思いますが、医師は一生勉強を続ける必要があり、学会参加は大事な自己研鑽の一つです。

今回はみなさんの知らない学会の世界についてお話しします。

学会が多すぎる!

医学の世界では、学会がびっくりするくらいたくさんあります。毎週のように、全国各地で学会が開かれています。

眼科関係で、しかも全国規模の学会だけ挙げてみても、1年間に、水晶体研究会、眼科手術学会、角膜カンファランス、角膜移植学会、糖尿病眼学会、日本眼科学会総会、眼内レンズ屈折手術学会、白内障学会、小児眼科学会、弱視斜視学会、眼感染症学会、眼炎症学会、コンタクトレンズ学会、臨床視覚電気生
理学会、眼光学学会、緑内障学会、眼薬理学会、神経眼科学会、臨床眼科学会、網膜硝子体学会、眼循環学会・・とこれだけあります。国際学会が日本で開催されることもあります。さらに北日本眼科学会、九州眼科学会などの地域の学会があり、愛知県眼科医会だけでも年に6回くらい講演会を開き、2日間がかりの生涯教育講座が開かれ、薬剤メーカーや医療機器メーカーが主催するセミナーもしょっちゅうあります。

ちょっと異常な世界です。よっぽど勉強が好きな人がそろっているんですかねえ。私なんか、とてもつきあっていられないので大部分をパスしますが、それでも月に2回くらいは学会や講習会に行っています。

それだけ、新しい薬、新しい術式、新しい機械、新しい概念が次々に現れ、変化が速いわけですが、正直なところ、いささか消化不良に陥っています。

観光ついでは過去の話

20年くらい前には学会も結構のんびりしていました。地方学会のついでに観光に出かけるというのはささやかな楽しみでした。会場自体、観光に出かけやすい場所が選ばれていました。

いつの頃からか、学会の規模が巨大化するにつれて、そんな優雅さはなくなり、だんだんせちがらくなってしまいました。

プログラムは満載で、複数の会場で並行して進むので、あっちの会場、こっちの会場と移動するのも大変です。食事すらプログラムに組み込まれて、朝はモーニング・セミナー、昼はランチョン・セミナー、夜はイブニング・セミナーと、いずれも会場で弁当やサンドイッチを食べながら話を聞くというスタイルです。「飯ぐらい、ゆっくり食べさせろ!」と言いたくなります。真面目に聴けば朝から晩まで全く休む暇がありません。

今は、学会期間中、会場から一歩も出ない人が多くなりました。私もそうです。参加できる学会は限られていますから、参加できた時はなるべくたくさん新しい知見を仕入れてくるよう心がけています。

大都市に集約化

日本眼科学会や日本臨床眼科学会では参加者数は4~5千人に達するそうです。眼科医の総数が日本全国で1万2千人くらいですから3人に1人は参加しているわけですね。

これだけの人数を収容できる施設が地方にはありません。いくつかの会場に分散するのですが、シャトル・バス待ちの行列にはうんざりしますし、歩いて移動できる距離でも雨が降れば濡れてしまい嫌になります。不便この上ありません。

地方では宿も不足します。盛岡で学会があったとき、私は宿が取れず新花巻のホテルを予約しました。毎日新幹線で会場に通うつもりでした。幸い直前に盛岡市内のホテルにキャンセルがあって助かりましたが。

大人数を収納できる会場があり、宿の数も十分あり、交通も便利な所となれば、開催地は限られます。現在は、愛媛大学が学会を主催する場合でも四国ではなく国立京都国際会館で開催しますし、新潟大学が主催する場合なら東京国際フォーラムで開催します。地方の風情を楽しむとか観光に出かけるわけにはいかなくなりましたが、これも時代の趨勢で仕方ないことでしょう。どうせ会場から出ないならどこで開催しても同じですから。

開業医は参加しにくい

開業医はたいてい土曜日は午前中だけ診療しています。大きな病院では土曜休診があたりまえになりました。学会の日程も病院勤務医の都合に合わせて組まれ、金・土の2日間だけ開催されることが増えました。土・日の2日間にしてもらうとずっと行きやすくなるのですが。

日曜までの日程になっていても、土曜に目玉になる講演やシンポジウムが置かれ、日曜は午前中だけあまり重要でないプログラムが置かれます。開業医が土曜午前の診察を済ませてから出かけたのでは、肝腎のところはもう終わっています。

結局、参加しようとすれば、少なくとも土曜休診にせざるを得ません。しかし、患者さんの中には土曜しか受診できないという方が相当数いらっしゃるのであまりいつもいつも土曜休診にするわけにはいきません。

ここ数年は、年2~3回だけ土曜休診にしています。このぐらいなら許容していただける範囲かな、と思っています。それでも、休診にしたあとには必ず「診てもらいに来たのにお休みだった」という苦情があります。「申し訳ありませんでした」と謝っています。

診療レベルの向上のために

確かに、患者さんの立場では、医療機関が休診するのは困ります。せっかく時間を取ってやってきたら休みだったというのでは文句の一つもつけたくなります。

しかし、医療は常に進歩しています。過去の常識が覆され、診療のやり方が全く変わってしまうこともあります。学会で勉強することは医療レベルを向上させるために不可欠なことです。川本眼科の診療方法も開業当初と今ではずいぶん変わっています。最先端の知見に合わせて少しずつ修正を加えているからです。

休診でご迷惑はおかけしますが長期的には患者さんの利益になることだと思います。どうか寛大なお気持ちで「学会で休診」をお許し下さいますように。

なお、休診予定はできる限り1ヶ月前には掲示するよう努力しております。留守電にも休診予定を録音してあります。事前にチェックすることをお勧めいたします。

2009.10