川本眼科

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川本眼科だより

川本眼科だより 136化粧と眼 2011年6月30日

女性にとって化粧はどうしても必要なもののようです。(もっとも、うちのカミさんや高校生の娘は化粧らしい化粧をしませんが。)

化粧法にも流行り廃りがあるようで、最近は目をくっきりと見せるための「アイメイク」が普通になり、次第に強調の度を増しています。

化粧品が目の中に入ることは多く、いろいろとトラブルを引き起こします。特に、コンタクトをしている女性の場合、コンタクトへの影響は大きく、取り扱いやケアに十分な注意を払うことが必要です。

 

アイメイクの一般化と流行

アイシャドー、アイライナー、マスカラといった目をくっきりと見せる化粧法が一般的になっています。昔は普段からそんな化粧をしていると「水商売みたい」と陰口をたたかれたものですが、時代は変わり、今ではごく普通の女性が毎日アイメイクをするのが当たり前になりつつあります。

特に、一部の女子高生や女子大生の化粧の濃さはびっくりするほどで、おじさんとしてはつい「素肌のほうが綺麗なのに」とつぶやいてしまいます・・・

化粧も、「他人より目立つように」という意識が働くようで、だんだん強調の度を増す傾向があり、最近ではまつげの生え際よりさらに内側までアイライナーを塗るようになってきています。ここまで塗ると、マイボーム腺(涙の蒸発を防ぐ油を出すところ)の出口を塞いでしまう心配がありますし、化粧品が目の中に入ることも増えます。

眼科医としては、アイメイクするにしてもまつげの生え際までを化粧の限度とすることをお勧めします。

近頃は落ちにくい化粧品が開発されています。ウォータープルーフというのだそうです。通常の洗顔では落とせないのでクレンジングオイルを使用しなければなりません。化粧品自体もクレンジングオイルも、目の中に入ると涙や角膜表面への影響が大きいと指摘されています。

手術の時/角膜にキズがある時

白内障手術の術後には化粧をしないように指導しています。手術で切開した傷口がふさがるのに約1週間かかるため、傷口から眼球内部に化粧品が侵入することを心配しているのです。

目に入らなければよいわけですから、口紅を塗ったからといって問題はないはずですが、洗顔自体を禁止しているため、化粧も禁止になっているのです。

手術の時には化粧禁止も仕方がないと考えていただけますが、角膜のキズぐらいだと「化粧しないわけにはいかない」と抵抗されます。決して良い影響はないのですが、ご本人の生活も考えて「目に入らないように注意しましょう」と妥協しています。

目に入っても、治りが悪くなるか若干悪化する程度でとんでもないことにはならないので。でも、本当は、やめておいたほうが無難です。

化粧がコンタクトに与える影響

裸眼でも化粧の影響はありますが、若い人の場合は眼表面の涙の入れ替わりも早く、角膜のキズも素早く修復されるので問題になることはさほどありません。

それでもドライアイを悪化させている可能性は高いでしょう。年齢とともに涙の入れ替わりは遅くなり、角膜のキズは修復されにくくなりますから、アイメイクも程々にしたほうがよさそうです。

コンタクトの場合は裸眼よりも影響が大きくなります。コンタクト表面にできる涙液層は薄く、乾いたりまだらになったりしやすいですし、コンタクトに化粧品が付着してなかなか取れないからです。

化粧品には油成分とシリコン成分が使われ、どちらもコンタクトの汚染や変質の原因になります。最近、使い捨てコンタクトの素材が「シリコンハイドロゲル」に切り替わってきています。従来素材に比べて3倍以上酸素透過性が高い優れものですが、弱点があります。

タンパク汚れには強いのですが油汚れには弱いのです。今まで以上に化粧品に注意が必要なのです。

コンタクト装用者が化粧する時には

アイライナーを塗る際に目の縁ぎりぎりは避けた方がよいのは既に述べた通りです。

マスカラがコンタクトや結膜に付着しているのは診察時しばしば目にします。目にとって良いこととは思えません。化粧をする時には注意していると思いますが、人間はまばたきもしますし、目を触ることも多いので、後で剥がれて落ちて付着するのでしょう。

MPSやクリーナーでケアをすれば取れることが多いのですが、ウォータープルーフのマスカラは付着するとケアをしても完全に除去するのは困難です。1日使い捨てのコンタクトを使用することも検討してみて下さい。

コンタクトは化粧の前にはめて下さい。アイメイクの後だと装着時にコンタクトが汚染される恐れがあります。外すときは化粧落としの前に外します。外すときは化粧が十分乾いていて落ちにくいですし、一方、クレンジングオイルなどでコンタクトが汚染される心配があるからです。はめるのも外すのもコンタクトが先です。

指についた汚れに注意

化粧品をさわった指でコンタクトをさわると汚れます。コンタクトを外す前にも手を洗わなければなりませんが、外す時にはどうしても指に化粧品が付着するので、こすり洗いなどのケアをする前にもう一度手を洗って下さい。

ハンドクリームも要注意です。手を洗ってもクリームが残っていることも多く、普通の顕微鏡ではコンタクトに問題がないように見えても、特殊な顕微鏡を使い拡大率を上げて観察すると汚れや微細なキズが確認できるそうです。

コンタクトを取り扱う時は指を使うしかありません。ハンドクリームは手を洗えば簡単に取れるものがよく、その代わりこまめに塗り直すことになります。どの製品を使うべきか商品テストをやって一覧表ができていればよいのですが、まだ誰もそういう情報は持っていないようです。落ちにくいとかウォータープルーフをうたった製品を避けるしか手はなさそうです。

逆に、落ちにくい化粧品やクリームを使いたいなら1日使い捨てコンタクトをお勧めします。

2011.6