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川本眼科だより

川本眼科だより 235医療機器の更新 2019年8月31日

眼科では検査や治療のためにたくさんの機械を使います。機械の助けなしには現代の眼科診療は全く成り立たないと言ってよいでしょう。

しかし、医療機器はいつまでも使えるわけではありません。故障が多くなって寿命と判断されれば更新しますし、寿命が来る前でも機能が向上した新製品が登場すれば更新します。

今回は医療機器の更新についての話題を取り上げます。

医療機器も古くなる

医療機器は高価です。高い精度や高い安全性が要求される上に少量生産だからです。川本眼科にある機械もたいてい〇百万円、中には1千万円を超えるものもあります。当然なるべく長く使いたいところです。メンテナンスさえきちんとすればある程度寿命を延ばすことはできます。

それでも機械は古くなると調子が悪くなります。故障して修理が必要になります。故障の頻度が増えるとさすがに寿命だと判断されます。

残念なのは、まだ使えそうでも「修理不能」と言われてしまうことが増えていることです。なんでも部品の保有期限が8年くらいで、それを過ぎるともう修理部品がないために修理不能になってしまうのだそうです。

法律上の義務は8年でも、できればメーカーにはもっと長く修理できるような体制を整えてほしいと思います。もちろん在庫を持つにはコストがかかるのでしょうが、医療機器は非常に高価ですし、その機械を使い続けているユーザーが相当数残っているなら、修理に応じることは製造者の責任だと思うのですが。

新しい機種に更新

医療機器がまだ使えても、機能の優れた新機種が出てくれば買い替えることがあります。家電製品の買い替えと同じです。新旧の機種でどのくらい性能に差があるのか検討し、さらに価格を考慮した上で買い替えるか決めることになります。

短期間に新機種が登場し、性能の向上が著しい場合は短期間で更新することになります。逆に製品として成熟し、新機種でも性能があまり変わらないなら、古い製品を使い続けます。

例えば、スマホなら約2年で、車なら約5年で買い替える人は多いけれど、冷蔵庫ならたいてい壊れるまで使いますよね。それと同じです。

川本眼科の場合だと、OCTは高価でも短期間に2回買い替えました。短期間で劇的に性能が向上し、古い機種が陳腐化してしまったからです。「白黒テレビ→カラーテレビ→ハイビジョン」くらいの変化が数年で起こったのです。

一方、視力計は開業以来25年ずっと使い続けました。ほぼ完成された製品で古くても十分使えますし、可動部分もないので故障しにくいのです。今年増築に伴って3mで測定可能な液晶表示の視力計にはじめて買い替えました。

処分・中古売買・下取り

更新すると古い機種は要らなくなります。古くなって使えそうもなければ処分します。今は捨てるにもお金がかかる時代ですが、更新の場合にはふつうメーカーや卸業者がサービスとして無料で処分してくれます。

まだ使えそうなときは中古業者に売るという選択肢もあるようです。私は売買のどちらでも中古業者を使ったことはありません。医療機器の場合はメンテナンスが特に重要なのに、中古業者では保守サービスがほとんど期待できないからです。

メーカーは中古売買は嫌います。新製品が売れなくなりますから。下取りと称して値引きを提示してくることが多いです。下取りしても販売するわけではなく処分してしまうようですが。

診療報酬で評価されないと

患者さんに最新の医療を提供するには、医療機器を更新し続けなければなりませんが、それにはお金がかかります。その原資は診療報酬で、医療行為ごとに細かく点数が定められています。

問題は、診療報酬の点数が医療の実態を正しく反映しているとは言えないことです。眼科の学会では必要だと強調されている検査に診療報酬が認められていないことは少なくないのです。やむを得ず無料サービスで検査することもありますが、それでは長続きしません。

機械が古くなってしまっているのに、お金さえあればもっと良い機械が買えるのに、医師が採算を考えて更新をためらうのは、患者さんにとっても決して望ましい状況ではないでしょう。患者さんが最善の医療を受けられるように診療報酬を設定してほしいものです。

最近更新した医療機器

この機会に川本眼科で最近更新した医療機器についてご紹介しましょう。

患者さん用の電動イスが新しくなっているのにお気づきですか? 今までの電動イスの背もたれが弱く、患者さんが体重をかけるとひっくり返る恐れがあるとスタッフから報告があったので買い替えました。

視野計も2台あるうち古いほうを更新して最新機種で揃えました。これで2台で連携しやすくなりましたし、ツァイスが開発した最新の検査プログラムが近い将来使えるようになる予定です。

レーザー装置は2種類ありますが、ヤグ・レ-ザーを買い替えました。新機種ではSLTという緑内障のレーザー治療ができます。

ほかにも更新したい医療機器がありますが、すべて同時期に更新するのは無理ですから、優先順位を付けて、患者さんにとって役に立つもの、必要性の高いものから順次計画的に更新していきたいと考えています。外来一般診療の範囲では、大病院にも負けないレベルを目指します!

学会の医療機器展示で情報収集

医療機器メーカーは東京に集中しています。名古屋には営業所がない会社もあり、その場合には卸業者に頼ることになります。卸業者は販売だけでなくメンテも代行している重要な存在です。

医師が医療機器についての情報収集をするのは大きな全国学会です。メーカーが一堂に会して新しい医療機器の実物を展示しており、詳しい話を聞いたり、実際に機器に触れて試してみたりすることができます。これは貴重な機会です。学会に参加する目的の1つになっています。

学会で興味をもった製品があれば、自院に営業担当者を呼んでさらに詳しく説明してもらいます。さらに多くの場合、製品を貸し出してもらって試すことが可能です。何しろ高価ですから慎重になります。検討に検討を重ねた上で購入するのは当然です。

(2019.8)