川本眼科

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川本眼科だより

川本眼科だより 238眼科と美容 2019年11月30日

眼科診療では美容上の問題を考慮しなければならないことがあります。

目薬の副作用でも美容上の問題が生ずることがあり、患者さんの意向も踏まえた上で治療薬選択の決め手になることもあります。

手術でも美容的な観点から実施することがあります。眼科・形成外科・美容外科のどこで扱うべきかが問題になる手術もあります。

今回は眼科で美容が問題になるケースをご紹介いたします。思いつくままに取り上げますので、話が雑駁になることはお許し下さい。

目薬と美容

緑内障の目薬ではしばしば美容的な問題が起こります。緑内障が進行したら元には戻らないので、長期間さし続けなければならないですし、簡単にはやめられないからです。

目薬には充血をおこすものがあります。充血の程度が軽ければ「それくらい我慢しましょう」ということになるのですが、問題は片目だけさす場合です。人間は左右の比較にはとても敏感なので、片目だけ充血するとすごく目立ってしまいます。そのため、なるべく両眼点眼にしますし、片目だけさすときは、多少効き目が弱くても充血しない目薬を選んでいます。

PG系の緑内障点眼薬だと瞼に色素沈着を起こす副作用があります。点眼直後に顔を洗うことでかなり防げますが、若い女性などで本人が嫌がる場合には他の目薬に変更します。

ただ、美容を重視しすぎて良く効く目薬を避けたせいで病気が悪化してしまったら本末転倒です。美容よりも治療効果優先です。

まぶたの手術

眼科では、逆さまつげの手術法を状態に応じて使い分けますが、このうち埋没法という手術法は、美容外科で二重まぶたの手術として行われている手術法とほぼ同じです。眼科で受ければ保険診療、美容外科で受ければ自費診療になります!

ただし、美容目的で眼科に行っても逆さまつげでなければ断られますし、眼科では逆さまつげさえ直れば見栄えの点は重視しませんから、やはり美容目的なら美容外科に行くべきでしょう。

まぶたでは「ものもらいの手術」「眼瞼下垂の手術」「できものの切除」など美容的な点が問題になる手術はたくさんあります。まぶたの手術は美容外科や形成外科との境界領域であり、どこの科が対応するか問題になりますが、角膜への影響を確認したり、視力や眼圧を測定したりするのは眼科でないとできないので、多くの場合は眼科が手がけます。ただ、瘢痕の修復は形成外科、美観を重視した切開や縫合は美容外科が得意にしているので、ケースバイケースです。

美容眼科?

このように眼科と美容外科には重なる部分があるため、両方を標榜しているクリニックもあるようです。確かにまぶたの手術など両方に精通していることが強みになる領域もありますね。

言わば美容眼科というわけですが、そういうクリニックでは、シワを取るためのボトックス注射とかヒアルロン酸の注入などを売り物にしているようです。先日の臨床眼科学会でも美容分野についてのセミナーがありました。時代ですね。

皮膚科も美容外科と重なる点が多いので、その分野に力を入れて美容皮膚科と称して人気があるクリニックがあります。

美容に関しては自費診療になり、医師の側には保険診療に伴う制約を受けないというメリットがあるようです。ただ、保険診療と自費診療を混合してはいけないという規則があるので、なにかとややこしいと思います。

美容に伴うトラブル

目は美容上大事なポイントです。目には様々な美容手段が使われるので、それに伴うトラブルもたくさん発生します。

まずはコンタクト。中でもカラーコンタクトのトラブルは多発しています。定期検診も受けずにネット購入というのが一番危険です。

まつげエクステで使う接着剤のかぶれも結構よくあります。中高生に多いのは驚きです。施術する人の技量が問題だと思います。

二重まぶたにするための液やテープでかぶれるケースもあります。軽症だと我慢してしまい眼科に受診しないでしょうから氷山の一角でしょう。

アイメイクも問題で、アイシャドーやアイライナーをほとんどまぶたの際ギリギリまで塗るような化粧法が流行っているようですが、マイボーム腺という重要な分泌腺を塞いでしまうことになり、炎症をおこす原因になります。マスカラやアイライナーの色素で角膜が汚れているのはよく見る情景です。目の健康に良いとは思えません。

美容手術後のトラブル

二重まぶたの手術の後でゴロゴロと異物感が続くという相談を受けることがあります。手術直後からという場合もありますが、相当時間がたってから起こることが比較的多い印象です。

手術で使った糸は、生体にとっては異物なので、体の外に排除しようとする反応が起こり、糸が手術直後より浅い位置に移動したと考えられます。

異物感に悩む患者さんが「糸を取って欲しい」と希望されることもありますが、これは実際には極めて困難です。糸がどこにあるのか外からは見えないし、たとえ皮膚を切開しても容易には見つけられないからです。

私は糸を見つける自信がないので、手術した医師に相談するようお勧めしたり、形成眼科を専門とする医師に紹介したりしています。たぶんどんな名医でも難しいと思います。

整容を目的とする眼科手術

失明して回復の見込みがない眼を手術することは普通ありません。しかし例外はあり、失明していても見栄えを良くするために手術することはあります。

例えば片目が失明していると外斜視、つまり目が外に寄った状態になることがあります。見た目が悪いので患者さんが希望すれば斜視手術をします。視機能を改善する意味は全くないわけですが、社会生活を送る上では重要です。

同様に、視力の向上が期待できなくても、見た目を良くするために白内障手術や眼瞼下垂手術をすることがあります。患者さんに強い希望があることが条件になります。

(2019.11)