川本眼科

文字サイズ

小 中 大

川本眼科だより

川本眼科だより 273iPadで視覚補助 2022年10月31日

だより22「ロービジョン」で視覚補助具としてルーペ、単眼鏡、拡大読書器を紹介いたしました。(ルーペはだより103でさらに詳しく説明)

これらの器具は今でも有用ですが、最近は新たなデバイスが活躍しています。iPadです。

私はこういう分野に特に詳しいわけではありませんが、今後さらに発展することは間違いないので、今回調べたことをご紹介します。

なぜiPadなの?

iPadがよく使われるようになった理由は、「多機能なのに安い」「持ち運べる」からです。

多機能な視覚補助具として拡大読書器があります。文字を拡大でき、拡大率もズームで自由に変えられ、白黒を反転させて読みやすくすることもできます。オートフォーカス機能も付いています。問題は価格で約20万円と高価です。

iPadでも拡大読書器とほぼ同じことができます。それでいて価格は5万円くらいです。大量生産の恩恵です。円安で値上げするらしいですが、それでも圧倒的に安いし、中古品も豊富に出回っています。

携帯性に優れている

iPadは軽く、どこにでも持って行けます。使うか使わないか分からなくても、300g程度なら苦にならないでしょう。

拡大読書器はそうはいきません。大きな画面が使えるのはiPadには太刀打ちできない利点で、拡大率を高くしても広い範囲が表示できるので、自宅で長時間読書をするにはベストです。でも、大きすぎ、重すぎて外には持ち出せません。

ルーペは手軽だが

ルーペはiPadよりもさらに軽く、小さいので、携帯性ではさらに上です。しかし、見える範囲は狭く、拡大率は固定です。

iPadなら思いのままに拡大できますし、暗い場所でも画面上では明るくすることもできます。コントラストや色合いの調整だってできます。

それぞれ得意とする点が異なるので使い分ければよいのでしょうが、iPadのほうがより多くの用途に使えると思います。

もっと安いタブレットもあるが

iPadより安いタブレットはたくさんあります。スペックを見るとiPad同様に視覚補助に使えそうです。でも実際に使われているのはほとんどiPadだと思います。

その理由は今まで視覚補助に開発されたアプリがほとんどiPad用だからです。たくさんの視覚補助アプリがあるからこそ、iPadが便利なのです。今から他のタブレットがこの状況を逆転するのは難しいでしょう。

iPadは日本でも世界でもタブレット市場のシェアは約50%でダントツのトップです。アプリ開発者はできるだけ多くの人に使ってもらいたいので、シェアが大きく変わらない限り、これからもアプリはiPad向けに開発されるでしょう。

視覚補助機能が標準装備

iPadにはもともと視覚障害をサポートする機能が標準で装備されています。VoiceOver は画面で起きていることを音声で説明してくれます。入力フィードバックは文字を入力したときにその内容を読み上げてくれます。大文字か小文字かまで教えてくれます。バリアフリー音声ガイドは映画のシーンを声で解説してくれます。ズームは画面を拡大表示してくれます。

このように最初から視覚補助機能が標準装備されていたことも、iPadが圧倒的に支持される大きな理由になっています。

スタンドは種類豊富

iPadを視覚補助具として使う場合、必要になるのがスタンドです。手で持っていては不安定ですし、疲れてしまいますからね。特に字を書く場合は必須です。

自作する人もいますが、最近ではいろいろな種類のスタンドが売られています。持ち運びしやすいもの、フレキシブルアームでいろいろな方向に向けられるもの、机やベッドに固定できるものなど様々です。価格は2千円~1万円くらいです。

iPadに後付けできるレンズ

iPad内蔵のカメラレンズは薄くて小さい割には解像度も高くて優秀ですが、時には倍率や焦点距離を変えたいときもあります。そういう要求に応えて内蔵レンズの上からかぶせて使える後付けレンズが売られています。

こういうものが登場するのは、やはりiPad自体がよく売れていて需要があるからこそです。

老眼にも使えそう

視覚補助具は一般的にはロービジョンの人が見たり読んだりすることを助けるものですが、拡大することは単なる老眼の人にも役立ちますから、iPadは老眼にも使えるはずです。

老眼の人がルーペを使っていることはよくあります。iPadはルーペほど手軽ではないですが、見える範囲がルーペより広いので、きちんとスタンドを付ければ読書にぴったりです。歳を取ると細かい文字を読むのに苦労するようになり、読書を諦めてしまう人が多いのですが、大きな文字なら読めるのであれば、iPadを試してみる価値があると思います。

老眼対策としてハズキルーペという文字を拡大してくれる製品があります。メガネ型で視野が広いのが利点ですが、倍率固定の既製品で最高でも1.85倍です。iPadなら拡大倍率を自由に変えられるので、より多くの人に、より多くの場面で適しています。

電子書籍にもニュース閲覧にも

そして当然のことながら、iPadは拡大読書器以外の様々な用途に使えます。

iPadは電子書籍のリーダーとして使えます。読書するなら、紙の書籍を拡大して読むよりも電子書籍のほうが読みやすいかも知れません。読みやすいフォントに変更できますし、文字の拡大はいつでも自由にできて、しかも文字の大きさに合わせて改行位置も変えてくれます。

iPadで最新のニュースを読むこともできます。新聞を拡大読書器にかけて読むより読みやすいと思います。記事をiPadに読み上げさせるという芸当だって可能です。

音楽を聴いたり、映画を見たり、メールで連絡したり、オンライン会議に出席したり・・専用の視覚補助具には逆立ちしてもできない芸当です。

多目的に使えて安いので、iPadは今後ますます使われるだろうと予想しています。

(2022.10)