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川本眼科だより

川本眼科だより 287アンチエイジング 2023年12月31日

若々しく健康でありたいと誰しも願います。でも悲しいかな、誰にも老いは忍び寄り、「年には勝てない」と嘆くことになります。

ただ、同じ年齢なのにすごく若々しい人がいるのも事実で、年の取り方には個人差が大きいようです。何か若さを保つ秘訣はあるのでしょうか?

今回は加齢に抵抗する方法、アンチエイジングについて取り上げます。

健康寿命

WHOは2000年に健康寿命という概念を提唱しました。例えば寝たきりで自力ではトイレも行けないような状態ではあまり長生きしたくありませんね。入院したり介護を受けたりして日常生活が制限されている状態は楽しくありません。WHOは「自分の心身で生命維持し、自立した生活ができる生存期間」を健康寿命と定義し、寿命の質を高めることが大切だと説いたのです。

日本では平均寿命は84年、健康寿命は74年です。その差10年が医療や介護に頼って生きている期間で、たいていは加齢に伴って体力が衰え、病気を発症し、不健康になってしまうわけです。

食事・運動・環境・精神衛生

アンチエイジングは「年をとっても健康に」という取り組みです。実のところ、特別な秘策などありません。食事・運動・環境・精神衛生が大切です。当たり前過ぎますか?

でも、当たり前のことができていないから老化が進むのです。バランスの良い食生活を心がけ、毎日コツコツと比較的軽い運動を続ける、それだけで結果は大きく違ってきます。何事にも通じることですが、「継続は力なり」です。

食事が最も大事

昔日本でも人生50年と言われていました。長寿になったのは第二次世界大戦後のことです。世界ではまだ短命の国もたくさんあります。

寿命を決める最大の要因は食生活です。栄養状態が良くなればどの国も寿命が延びます。貧しいと糖質ばかりの食事になりがちで、それでは長生きできないのです。

タンパク質を多く摂り、糖質は控えること、これが寿命に最も関係があります。もちろん野菜も健康を保つには大事ですが、寿命は少し延びる程度です。そもそも筋肉も臓器も皮膚も毛髪も人体はタンパク質でできています。食べたタンパク質はアミノ酸に分解されて原料になるのです。

健康に長生きしたければ、肉や乳製品、豆腐や納豆などを食べて下さい。あとは偏らずいろいろなものを食べること。不足する栄養素がないようにするためです。

適度な運動を毎日コツコツと

運動は若さを保つために決定的に重要です。

運動には筋トレと有酸素運動があります。

筋トレは筋肉量を増やすための運動です。筋トレしなければ筋肉はどんどん減ってしまいます。転倒しやすくなり、きちんと姿勢を保つことさえ難しくなります。逆に高齢でも運動すれば筋肉は発達します。元気に登山する人だっています。

有酸素運動は心肺機能を向上させることが主な目的です。さっさと早足で歩いて息切れしないとか、坂や階段をスイスイ登れるとか・・

実際にはどんな運動か厳密に区別する必要はありません。お勧めは早歩き。両方の要素を備え、その人の体力に合わせて運動強度をコントロールできるから。「激しすぎる運動は活性酸素を増やすので有害」などと言い出す人もいますが、人間の体には抗酸化の仕組みもあるのでそんなに心配しなくて大丈夫。サッカーができるのならしても構いません。ゆっくりのんびり歩くのでもOKですが、運動時間を長めに取りましょう。

酸化ストレスが老化を招く

人間は酸素を取り込んで生命活動を維持していますが、その過程で必ず活性酸素が生成されます。活性酸素が過剰に増えた状態を酸化ストレスと呼びます。

活性酸素は細胞や遺伝子を傷つけ、老化を促進させることがわかっています。老化を防止するには酸化ストレスを避けることが大事です。

酸化ストレスの原因は、タバコ、大量の飲酒、高血糖、日焼け、大気汚染、精神的ストレスなどたくさんあります。これらの多くは生活習慣改善で避けられます。

アンチエイジングのためには、禁煙し、お酒はほどほどに、食べ過ぎを避け、とくに糖質を取り過ぎないようにし、日焼けは極力避け、排気ガスは吸い込まないよう気をつけ、睡眠を十分取って精神的ストレスが少ない生活を送って下さい。

サプリメントに効果はあるか

抗酸化作用をうたったサプリメントがたくさん登場しています。こういうサプリは効果があるのでしょうか?

抗酸化作用とは活性酸素を除去する働きを言います。リコピン、カプサイシン、ベータカロテン、アントシアニン、ポリフェノール、ビタミンC,ビタミンEなどたくさんあります。これを錠剤にしたものが売られています。

効果はあるかも知れません。ただ、しっかりした臨床試験をしたわけでもなく、効果も副作用もデータが不足しています。

私は、抗酸化成分はできるだけ食事から摂取することをお勧めします。食事ならその成分だけでなく体に必要な様々な栄養素を摂取できます。未知の大切な栄養素が取れるかも知れません。

また活性酸素には病原菌の侵入を防いだりがん細胞の活動を抑えたりする働きがあるので、サプリメントの形で大量摂取した場合にはかえって悪影響がある可能性があります。食事で摂るぶんにはそういう問題は起こりにくく、より安全です。

個人的な体験から

私も65歳を過ぎ、高齢者の仲間入りをしましたが、比較的若々しく見えるようです。それはたぶん生活習慣のおかげです。

食事ではタンパク質と野菜をたくさん食べるようにしています。牛乳も毎日飲みます。3食きちんと食べます。間食はしません。

一時厳格なダイエットに励んだら髪の毛が薄くなって、やめたら元に戻りました。栄養失調は髪にも悪影響があるようです。

運動も毎日します。昔からスポーツは苦手で外を走ることさえ面倒くさいのですが、20歳頃から健康のために毎日テレビやネットを見ながらエアロバイクやルームランナーで運動してきました。

タバコは吸わず、酒もほとんど飲みません。紫外線が強いと思えば必ず日焼け止めを塗ります。

振り返って、これらの生活習慣はアンチエイジングに効果があったと信じています。何も特別なことをしたわけではないけれど、毎日毎日継続することが大事だと思います。

(2023.12)