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川本眼科だより

川本眼科だより 292学校医のお仕事 2024年5月31日

学校には、内科・眼科・耳鼻科の学校医、学校歯科医、学校薬剤師を置くことが定められています。私も近隣の学校4校の眼科学校医を担当しています。今回は学校医のお仕事についてご紹介いたしましょう。

学校医には誰がなるのか

一般的に、教育委員会が地域の医師会に学校医の紹介・推薦を依頼します。医師会では、学校に近い開業医を割り当てるのが普通です。地域医療への貢献は開業医としての責務なのです。

ただ、学校医を喜んで引き受けるという医師はあまりいません。報酬の問題ではなく、時間を取られすぎるという問題です。内科医は比較的多いのですが、眼科医や耳鼻科医は絶対数が少なく、1人で何校も兼任しなければなりません。私は今、桜田中、菊住小、桜小、呼続小の眼科学校医を兼任しています。4校でも十分大変ですが、地方では1人で30校以上担当している場合もあるそうです。無茶苦茶ですよね。

学校健診?検診?

学校医の仕事のうち最も重要なのは、学校健診、就学時健診です。

余談ですが、健診と検診の違いをご存じでしょうか? 健診は健康診断の略で健康状態を調べることを意味します。検診は病気を早期発見するための検査や診察を指します。用語の違いを強調する人もいますが、たいていの人は混同して使用しており、しかも内容的にも相当程度オーバーラップしているのも事実ですので、厳しく区別する意義はないと私は思っています。「学校検診」という用語も誤用とは言えません。

学校健診の視力検査

学校健診・就学時健診では養護教諭が簡易な視力検査をします。1.0の指標が見えればA、0.7の指標が見えればB、0.3の指標が見えればC、0.3の指標も見えなければDという判定になります。これは370方式と呼ばれ、大勢を手早く調べるために考え出されたやり方です。異常がある可能性がある児童をふるいにかけるわけです。

視力がB以下の場合、眼科受診が勧告されます。実際には近視の場合が大半ですが、弱視の可能性もありますし、網膜や視神経などの重大な病気である可能性だってあるわけです。受診勧告が出されたら放置せずきちんと眼科を受診しましょう。もちろん、結果的に異常がないことも多いですし、過剰に心配する必要はありません。

近視については、最近近視進行を抑制する方法がわかってきて、できるだけ低年齢で近視が軽い段階から治療開始することが推奨されています。近視管理のため、学校健診の役割は大きくなりました。

学校健診での診察

眼科医の診察もありますが、「肉眼で見てすぐ分かる程度の異常を拾い上げる」というもので、検査機器は使用しません。既に眼科で診断が付いていることも多く、健診で新たに病気を発見することは少ないのが現状です。これを改善するには、高価な検査機器を揃え、検査の人員を確保する必要があり、それをすべての学校で実現するとなるとほとんど不可能です。学校健診には限界があり、眼科受診の代わりになるものではありません。

学校健診で比較的多く見つかるのは軽いアレルギーとか無症状のさかまつげなどです。私は学校医になった当初はせっせと受診勧告していました。しかし、放置しても重大な問題は起こさないし、かゆくなるとかゴロゴロするとか何か症状が出た時点で受診するのが合理的と考え、最近ではほとんど受診勧告を出していません。こどもを眼科に連れて行く親御さんも大変ですし。

斜視・弱視の発見

斜視・弱視はなるべく低年齢のうちに見つけ出す必要があります。9歳くらいになると治療への反応が悪くなり、視力が十分に向上しなくなってしまうのです。親御さんは異常に気づいていないことが多いので、就学時健診や学校健診が果たす役割は相当に大きいと言えます。

私は学校健診に視能訓練士を同行させ、小学校1年生2年生を対象に斜視のスクリーニング検査をさせています。昨年まではそのための費用は出してもらえず、視能訓練士の時間外手当は私の自腹でした。今年から検査補助者にも手当が支給されるようになったのですが、まだ金額が足りず、やっぱり自腹です。

色覚検査

学校での色覚検査は、色覚差別撤廃の流れで一度は廃止されたのですが、色覚異常を家族や本人が知っておくことはやはり必要だとの声が上がり、最近復活しました。私も実施に賛成です。昔と違い、希望者だけを対象とし、プライバシーを配慮した上で検査されるようになっています。

当初は川本眼科で検査していましたが、希望者が増えたので、今は学校健診の際に視能訓練士が学校で検査しています。

異常の有無は小1小2で分かったほうが学校で配慮してもらえます。専門施設で色覚異常の型や程度を調べる検査があり、職業選択をする前で、かつ本人にも理解してもらえる時期、つまり小学校高学年以降での検査をお勧めしています。

学校保健委員会

学校保健委員会というものが年に1~2回開催され、健診結果などが報告され、学校医はコメントを求められます。

なるべく出席するようにはしていますが、診療時間と重なる時は欠席します。医師会・眼科医会などの会合等、他の用件と重なることもしばしばで、優先順位を検討して出欠を決めます。

その他の業務

学校でのケガに対応を依頼されることもあります。転んだ、ボールが当たった、など様々です。比較的軽症なら診療所レベルで対応し、重症なら大きな病院にお願いすることになります。

ほかに児童の目の問題について様々な相談を受けることもあります。例えば、オンライン授業やデジタル教科書について相談を受けました。

保健だよりなどへの寄稿を求められることもあります。川本眼科だよりで取り上げた内容を焼き直して紹介することが多いです。

(2024.5)