川本眼科

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川本眼科だより

川本眼科だより 131目への注射いろいろ 2011年1月31日

眼科では目に注射することがあります。目玉そのものに注射することもありますし、表面の浅い箇所に注射することもあります。目の周囲に注射することもあります。 

 
いろいろな種類があるので混同しがち。眼科医も注射のやり方についてそんなに詳しく説明したりしませんし。確かに、患者さんは別に知らなくても支障ないわけですが、でもちょっと興味がありませんか?
   
今回は眼科医が駆使する各種の注射方法を大公開いたします。

球後注射(眼球の後ろに注射)

 
下まぶたの皮膚を触ると骨がありますよね。骨より少し上に針を刺して針先を眼球の後ろまで進めて注射液を注入します。
 
眼の手術をする時、麻酔するのによく使われます。以前は白内障手術でもこの注射で麻酔をしていました。「手術自体は痛くなかったが麻酔の注射は痛かった」
 
現在は白内障手術時は目薬の麻酔だけで済ませるのが主流で「全然痛くなかった」 ただし、白内障より時間がかかる手術の時には今も球後注射で麻酔をします。

結膜下注射・テノン嚢下注射(白目表面への注射)

白目表面の極薄で半透明の膜が結膜で、その下のぶよぶよした組織がテノン嚢、その下の硬くて白い眼球の壁が強膜です。結膜下注射は白目の浅い所にする注射、テノン嚢下注射は白目の比較的深い所にする注射と考えておけばよいでしょう。結膜下注射は黒目に近い所に注射しますが、テノン嚢下注射はかなり奥まで針を進めて注射することが多いです。
 
薬剤の局所投与を目的とし、目薬よりも長い時間効果が持続すると期待して使われます。目薬で同等の効果があれば普通使いません。
 
川本眼科でも、時々この注射をしています。

硝子体注射(眼球の中に注射)

黒目や黒目のすぐそばに針を刺すと水晶体を傷つけて外傷性白内障を起こします。眼球の後方に針を刺すと網膜に穴があいて網膜剥離を起こします。水晶体にも網膜にも当たらない狭い領域から針を刺して眼球内部の硝子体内に薬を入れる方法が硝子体注射です。
 
昔からある方法なのですが、他の注射方法に比べてリスクが大きいため、以前はめったに実施されませんでした。眼球内は血管がないせいもあって感染防御ができず、数個の細菌が侵入しただけで眼内炎になってしまうのです。
 
最近、抗VEGF薬という薬が登場しました。アバスチン、ルセンティス、マクジェンなどです。硝子体注射でこれらの薬を投与すると今まで治療法がなかった加齢黄斑変性症や黄斑浮腫などによく効きます。しかし、残念なことに効き目が長続きしないので何度も注射しなければなりません。その結果、硝子体注射の施行回数は爆発的に増えました。
 
手術室で注射するのが安全とされているため、川本眼科では行わず、必要な場合は連携している中京眼科に注射をお願いしています。

まぶたへの注射

そのほか、「眼瞼けいれん」にはまぶたにボトックスの注射をします。まぶたが腫れる炎症性の病気でまぶたにステロイドの注射をすることもあります。ものもらいの手術の時はまぶたの皮膚に局所麻酔の注射をします。
 
皮膚は知覚神経が密集しているので、皮膚への局所注射は大変痛いものです。特に麻酔の場合は薬液の注入量が多く、液が狭い組織間を広げる時に痛みが強いのですが、手術が痛いよりはましなので我慢していただいています。
 
実は目玉にブスッと刺す硝子体注射はほとんど痛くありません。意外でしょう? 白目には知覚神経が少ないのです。

眼注という言葉は使われなくなった

「眼注」という言葉があります。「眼への注射」の略で、十数年前まで「結膜下注射」の意味でよく使いました。外来で結膜下注射を実施することが圧倒的に多く、他の注射方法はめったに行わなかったせいでしょう。
 
ただ、時代は移り、効果の高い目薬が開発されるにつれ患者さんに負担を強いる結膜下注射はだんだん減っていきました。一方、最近では硝子体注射が激増しています。そうなると、眼注という言葉はどの注射方法を指すか曖昧なので次第に使われなくなり、代わりに「結注」「硝注」「テノン下注」という言葉を目にするようになりました。まだ一般的用語とは言えませんが。

2011.1.31