川本眼科

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川本眼科だより

川本眼科だより 79目と照明 2006年9月30日

眼科医をしていると、患者さんから「どんな照明が目によいのか」という質問を受けることがあります。今日は、私の知っている範囲でお答えしようと思います。
 
実を言えば、照明について専門的な勉強をしたことはありません。眼科医になるのに、照明についての知識は必要ないのです。ですから、今回の話には誤りがあるかも知れませんのでご了承ください。

室内全体を明るく

電気スタンドのような局所を明るく照らす照明器具だけを使うと目が疲れやすくなります。できるだけ室内全体を明るくした上で、不足する分だけ補助照明で補うようにしましょう。
 
また、高齢になると視力が衰えますし、瞳孔も開きにくくなります。若い頃の2倍明るくする必要があると言われています。
 
コンピューターのディスプレイに照明の光が映りこむのも疲れ目の原因になるとされています。なるべく位置を工夫しましょう。

白内障なら直接光を避ける

白内障になると、光が水晶体の濁りで乱反射し、まぶしく感じます。ですから、なるべく直接光が目に入らないようにしたほうがよいでしょう。
 
特に寝室では目が天井を向くので、天井の照明をまぶしく感ずることはよくあります。寝たきりになっているお年寄りなどでは、ご本人の訴えがなくとも配慮してあげたいものです。
 
可能なら、間接照明にするのが一番よいのですが、できなければ天井の照明はシェードつきのやや暗めのものにし、床置きスタンドなどの補助照明で補うのが現実的な解決策でしょう。

蛍光灯のちらつき

古くなった蛍光灯はちらつきます。でも、世の中には新品の蛍光灯でもちらつきが気になってしかたがないという人もいます。
 
蛍光灯は交流電源を使っています。交流は電気の流れる方向が1秒間に50~60回変化しています。この変化の回数を周波数といい、中部電力の場合は60ヘルツです。
 
そのため、蛍光灯は理論的には1秒間に100~120回(電源の周波数の2倍で)点滅します。人間はふつう1秒間に40回程度しか点滅を判別できないので、蛍光灯はずっと点灯しているように見えるというわけです。
 
しかし、実際には蛍光灯内部の水銀イオンの動きが均一でないため、端にある電極付近では明るさのゆらぎが生じてしまい、それがちらつきとして感じられるのだそうです。
 
ちらつきがあると目が疲れる原因になります。たとえちらつきを意識していなくても、無意識のうちに脳に負担がかかって疲れるのだと主張する人たちもいます。

白熱電球はちらつかない?

蛍光灯を攻撃する人たちは、蛍光灯をやめて白熱灯にすることを勧めています。
 
でも、本当は白熱電球でも交流電源を使っている限り、電源電圧の変化に応じて明暗の変化があるはずです。ただ、フィラメントが熱せられている間は光り続けるため、交流による明暗の変化はほとんど目立ちません。
 
白熱電球の光には味がありますので熱烈な支持者がいることも事実です。しかし、いかんせん電気の消費量が違いすぎます。同じ明るさなら白熱電球は蛍光灯の約4倍の電気を食います。省エネに逆行してしまいます。

インバーター蛍光灯がお勧め

60ヘルツの交流電源をインバーターを使って2万ヘルツ以上に変換する方式の蛍光灯です。
 
1秒間に4万回以上の点滅となればさすがにちらつきを感じることはありません。それだけ目に優しいと言うことができます。
 
それだけではありません。効率がよいため、同じ明るさなら普通の蛍光灯より2~3割省エネになるそうです。(条件による) 逆に同じ量の電気を使えばそれだけ明るくなります。
 
しかも、インバーター式ならスイッチを入れた途端に即時点灯。待つ必要がありません。
 
蛍光灯から出るジジジ・・という音もインバーター式ならありません。
 
欠点は値段が高いこと。ただし、電気代が安くなりますから、長期間使うなら回収できます。
 
もう1つの問題は、近所の店で売っていない場合があること。でも家電量販店なら売っていますし、通販でも手に入ります。
 
総合的に考えて、メインの照明器具として現時点ではベストの選択だと思います。ちなみに川本眼科で使っているのもインバーター蛍光灯です。(ダウンライトと組み合わせてあります)

バイオライト

目の健康をうたった照明がいろいろ出ています。有名なものに「バイオライト」があります。これは交流電源を一度直流にすることで完全にちらつきをなくした照明です。手元を照らすスタンドなどの補助照明として使うのが普通です。ミニクリプトン球をやや高めの電圧で使っていて、太陽光に近い自然の光だと主張しています。信奉者も多いようです。
 
実は私も昔使ってみたことがあるのですが、正直なところ私には値段ほどの価値があるかどうかわかりませんでした。確かに、目との距離が近いとちらつきを感じやすいので、安い蛍光灯のスタンドよりは良いと思います。しかし、白熱電球やインバーター蛍光灯との差は感じません。それに長時間点灯していると熱くなりますし、電球もよく切れます。電気の消費量が大きいのも欠点です。
 
目の健康のためならお金に糸目をつけないという方は試してみてもよいでしょう。

2006.9