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川本眼科だより

川本眼科だより 99目薬の副作用(2) 2008年5月31日

緑内障の目薬は比較的副作用が多い傾向があります。とくに目薬を2種類も3種類もささなければならないとそれだけ副作用も増加します。
 
副作用のために目薬を中止しなければはならないこともあります。
しかし、緑内障の場合、目薬を使わなければ進行する危険があります。ほかの目薬に変更して解決できればよいのですが、ほかの目薬にもそれなりに副作用があるので、変更したほうがよいとは限りません。
 
たいていは、副作用があっても目薬をやめるわけにはいかず、ある程度我慢していただかなければなりません。

緑内障点眼薬の効果

緑内障の目薬は眼圧を下げるために使われます。眼圧が十分に下がれば緑内障の進行が遅くなることは科学的にはっきり証明されています。
 
1種類の目薬だけで十分に眼圧が下がってほしいのですが、1種類だけでは効果が不十分で2種類、3種類と使わなければならないこともしばしばです。
 
眼圧がよく下がって副作用はないことが理想ですが、残念ながら副作用はつきもので、何種類も使えばそれだけ副作用も多くなります。
 
緑内障の目薬は、ほとんどの場合、途中でやめるわけにはいきません。やめれば眼圧が上がって緑内障が進行してしまうからです。一生さし続けなければならないことも多いのです。
それだけに、副作用の問題は重要で、早めに対処する必要があります。

PG関連薬とまぶたの色素沈着

緑内障に対して第一選択薬(最初に使う薬)になっているのがPG関連薬です。特にキサラタン、トラバタンズは1日1回点眼ですむ利点もあって圧倒的に多く使われています。レスキュラは1日2回のため最近あまり人気がありません。
 
なぜ第一選択薬かというと、眼圧下降効果が高いうえに、全身への影響を考えなくてよいからです。眼科医にしてみると安心して使えます。
 
副作用として一番気になるのは「まぶたに色素沈着をおこす」という点です。女性の方は目のまわりが黒ずむのは気になりますよね。
 
実はまぶただけでなく、虹彩にも色素沈着をおこします。白人の場合は相当気になるようです。しかし、日本人の場合、肉眼では虹彩の色素沈着は全くわからないので問題になりません。
 
幸い、まぶたの色素沈着は目薬を中止して2ヶ月ほどすれば元に戻るとされています。また、目薬をさした後すぐに目のまわりを丁寧に拭き取ることによってかなり防げます。
おしぼりで拭けばティッシュより拭き取れるでしょうし、顔を洗ってしまえば完璧です。
 
PG関連薬は目の充血もおこします。一番充血しやすいのはトラバタンズです。
点眼後6時間くらいで充血のピークが来て点眼後12時間くらいまで続くので、夕食時くらいに点眼することをお勧めしています。寝ている間に充血のピークが来て朝にはだいたい収まっているというわけです。
 
キサラタンもレスキュラも充血しますが、トラバタンズほどではありません。

βブロッカーと喘息

βブロッカーには、チモプトール(リズモン・チモレート等)、ミケラン(ブロキレート)、ベトプティックなどたくさんの目薬があります。
 
喘息の患者さんがβブロッカーの目薬を使っていると、目薬の成分が全身に吸収されて、喘息発作をおこすことがあります。
 
喘息発作はひどくなると呼吸ができなくて死に至ることもあるので、これは重大な副作用です。目薬の副作用の中で一番危険だと思います。
 
ですから、βブロッカーの目薬を使う場合は喘息の有無を確認する必要があるのですが、眼科医は緑内障の病状に気を取られてつい全身状態の把握がおろそかになってしまうことが多いのです。
 
患者さんも、まさか目薬が喘息と関係しているとは思っていないので、眼科医に喘息のことを話していないことがよくあります。
 
喘息を治療している内科医も、目薬のことなんか全く気にしていないのが普通です。喘息発作がおこっても内科医は目薬のせいだとは思わないことが多く、わざわざ目薬の種類まで調べません。
 
誰も気づかないまま結構恐ろしいことになってしまっている可能性があるわけです。

炭酸脱水酵素阻害剤とかすみ目

炭酸脱水酵素阻害剤の目薬には、トルソプト、エイゾプトがあります。
 
さした後に少しぼーっとする感じになります。だいたい数分間で収まるものですが、まれにぼやけた状態が長時間続くと訴える患者さんもいらっしゃいます。
 
全身への副作用はほとんどないので安心です。ただ、さし心地に難があるわけです。

角膜障害は共通の副作用

緑内障の目薬のほとんどに共通するのが角膜障害をおこしやすいことです。「角膜のキズ」というやつです。かなり頻度は高く、とくに高齢者ではおこりやすくなります。
 
目薬によって多少角膜障害がおこりやすい、おこりにくいということはあります。ですから、目薬を変更してみたりすることはありますが、残念ながら他の目薬にも角膜障害の副作用があって、なかなか改善してくれません。
 
軽症なら人工涙液の目薬を使って角膜を保護しながら緑内障の目薬を継続します。
 
重症なら緑内障の目薬を中止せざるを得ません。ただ、緑内障が進行する危険があるので、できるだけ中止にはしたくないのです。

緑内障の場合、副作用のチェックのためにも必ず月1回は診察を受けて下さい。(たとえ目薬が残っていても受診が必要です)

2008.5