川本眼科

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川本眼科だより

川本眼科だより 158CTとMRI 2013年3月30日

日本ほどCTとMRIが普及している国はありません。OECD加盟国の平均と比べ、6~7倍の台数が稼働しているのだそうです。

眼の病気でもCTやMRIによる画像診断が必要な場合があります。どんな場合に必要なのか、具体的にどこで撮影したらよいのか、ご説明いたします。

眼球内のことは光学的検査

眼球は「ものを見る」という目的のためにカメラのような構造になっています。光が通るように透明な組織で作られていて、角膜・虹彩・水晶体・硝子体・網膜・視神経乳頭など、主要な部分を外部から直接観察することができます。レーザー光線も通過するので、レーザー光線を使った検査機器も数多く開発されました。

眼科では、このような光学的検査機器を駆使することで診断ができるため、直接的に観察して詳しく調べることができます。他科では、皮膚や脂肪で隠されてしまうので、X線、CT、MRIなどに頼るしかありませんでした。

逆に、眼科でX線、CT、MRIを使うことはかなりまれです。

眼球外はCTやMRI

眼球外に病変がある場合、光は通りません。光学的検査機器は無力です。CTやMRIの出番ということになります。

眼球のすぐそばに問題があって、眼に影響を与えているという場合が考えられます。この場合は眼球周囲に絞ってかなり詳しく調べます。

例えば、眼球の周囲の骨が骨折しているとか、眼球周辺に腫瘍や血腫があるとか、視神経が圧迫されているとか、甲状腺の病気で眼球を動かす筋肉が腫れているとか、いろいろな病気があり、診断にはCTやMRIが必須です。まぶたの腫瘍のように外から見える場合でも、広がりや内部の形状を知るために撮影することもあります。

脳に問題がないか調べることもあります。例えば頭部外傷の場合、目のまわりの腫れや出血より頭の中に出血をおこすことのほうが深刻です。眼科で視野欠損が発見されたのがきっかけになって、脳梗塞や脳腫瘍が見つかることもあります。こういう場合は頭部全体を調べることになります。

CT/MRI撮影可能な近隣施設

CTもMRIも撮影できるところはたくさんあります。川本眼科だけで対処できる問題であれば、あるいは、重大な病気の可能性が少なく「念のため」ならば、どこでも構わないでしょう。

CT撮影は、近隣の医療機関に依頼することにしています。当院の向かいにある石川クリニックなら歩いて2分ですし、車で5分以内に北村病院、笠寺病院、小松病院などがあります。CTならたいていその日のうちに撮ってもらえます。

MRI撮影は、設備のある病院が少ない上に、検査に時間がかかるので、希望してもかなり先の予約になるのが普通です。近隣施設で唯一当日撮影ができるのが名古屋セントラルクリニックです。川本眼科からインターネットを使って撮影予約ができるのでありがたいです。

大きな病気の可能性があるとき

症状によっては、大きな病気の可能性があるかも知れません。例えば、複視(ものが二重に見える)では、脳内の動脈瘤(血管のこぶ)が神経を圧迫していることがあります。もしそうなら、速やかに脳外科で手術しなければなりません。ほかにどんな症状があるか、いつ頃から症状が出現したかなどを総合して可能性の高さを判断します。

このように、CTやMRIで病変が見つかった場合、たいていは川本眼科だけでは対処できません。手術となれば設備の整った大病院にお願いすることになりますし、眼科だけでなく他科に依頼することが必要になるかも知れません。治療効果判定の際にもCTやMRIを撮る必要も当然出てくるでしょう。後の治療や経過観察を考慮した場合、そのまま治療に移行できる大病院で撮影するほうが得策と考えられます。

症状から大きな病気の可能性があれば、最初から中京病院、大学病院(名大・名市大・藤田保健衛生大)等の総合病院に紹介するようにしています。まずは悪いほうの可能性を考えるのです。

幸いにしてあまり重大な病気でなかった場合には、検査が終了後に川本眼科に戻っていただければすむことですから。

画像情報の提供

昔はCTやMRIを他の医療機関に依頼した場合、特にお願いしなければ写真の提供はしてもらえませんでした。フィルムが大きく、簡単には持ち運べませんし、コピーするのも相当の費用がかかるので難しかったのです。お願いしても期間限定の貸し出しというスタイルが一般的でした。

しかし、最近では画像情報のデジタル化が進み、CDやDVDに安価に画像情報をコピーできるようになったので、気軽にデータをいただけるようになりました。名古屋セントラルクリニックなどは特別にお願いしなくても、全例データの提供をしてくれます。

やはり、自分で画像を確認できるのは安心感があります。放射線科専門医の読影コメントがついている場合でも、実際の写真と見比べて確認できます。ありがたい時代になったものです。

なお、インターネットで提供する方式も検討されています。便利そうですが、CTやMRIは画像データが大きすぎて今のところネットで送信するのは少々無理があるようです。でも通信環境が整備されれば将来は普通になるかも知れません。

(2013.3)