川本眼科

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川本眼科だより

川本眼科だより 265目の検診 2022年2月28日

先日、中日新聞社が「眼科検診」についてインターネット上の講演会を企画し、私も中京グループの先生方(市川先生、加賀先生、馬嶋先生)とともにお話しさせていただきました。

この機会に川本眼科だよりでも「目の検診」について取り上げたいと思います。

人間ドックでは不十分

人間ドックや各種健診でも目に関する検査項目があります。そこで指摘を受けて眼科を受診される方も多く、目の病気を発見するのに役立っています。

ただ、人間ドックで調べる項目は、裸眼視力、眼圧、無散瞳眼底写真くらいです。実はこれでは不十分で、多くの病気が見逃されてしまいます。つまり、人間ドックで異常なしという結果だったとしても、決して安心できないのです。

矯正視力が大事

視力には裸眼視力矯正視力があります。裸眼視力はレンズなしで測った視力、矯正視力はレンズを使って出せる最高視力です。

裸眼視力が悪い原因の大半は近視や乱視などの屈折異常です。近視や乱視なら適切なレンズを使えば良く見えるので、矯正視力は良好です。もし矯正視力が悪ければ、何か目に問題があるということが分かります。ひょっとしたら失明につながるような重大な病気かも知れません。

つまり、目の病気を発見するには矯正視力を測らなければなりません。しかし、矯正視力を測るには技術や経験が必要で、人間ドックでは測りたくてもふつう測れないのです。

眼圧だけでは緑内障を見逃す

眼圧測定の主な目的は緑内障の発見です。確かに眼圧が高ければ緑内障の可能性は高く、精査が必要です。

しかし、日本人の緑内障の8~9割は正常眼圧です。眼圧だけでは大半の緑内障を見逃してしまうのです。眼科では視神経乳頭を詳しく観察したり視神経線維の厚みを調べたりすることで緑内障を早期に発見することが可能ですが、人間ドックではそこまで詳しく調べません。

無散瞳の眼底写真は暗い

眼底写真を撮ると様々な網膜・視神経・硝子体の病気が発見できます。糖尿病網膜症とか黄斑前膜とか視神経炎とか硝子体出血とか無数にあります。とても大事な検査です。

眼科では、正確に診断をつけようとするときは必ず目薬(散瞳剤)で瞳孔を開きます。瞳孔は虹彩の中心にある穴です。瞳孔を開いたほうが医師は網膜周辺まで細かく観察できます。眼底写真も鮮明に写ります。

しかし、人間ドックでは無散瞳で写真を撮ります。無散瞳とは「瞳孔を開く目薬を使わない」という意味です。若いときには瞳孔は比較的大きいのですが、加齢とともに瞳孔は小さくなります。高齢者では瞳孔が小さくなりすぎて光が奥まで届きにくく、眼底写真が暗くなってしまって細かい病変が観察できなくなります。

無散瞳眼底写真による診断力はかなり劣ると考えたほうがよいでしょう。

眼科受診のきっかけに

以上のように、人間ドックや健康診断では目の病気のごく一部しか見つかりません。そのことは最初から承知しておく必要があります。

それでも、人間ドックが眼科受診のきっかけになることはよくあります。その結果、指摘された点以外に目の病気が見つかることもあります。限界があると知った上で上手に利用して下さい。

眼科で検診を受ける

眼科を訪れれば、矯正視力も測れますし、正常眼圧緑内障も初期から発見できますし、瞳孔を開いて詳しく調べることもできます。それ以外にもOCT、自発蛍光、隅角検査、視野検査などたくさんの検査が可能です。人間ドックとは診断力が全く違います。

全く無症状で健康診断ということですと自費になってしまいますが、何か症状があってそのための検査ということなら保険診療です。また何か異常が見つかれば、その病気に対する診断・治療が必要なわけで、やはり保険診療になります。しかも実際に何か病気が見つかることはかなり多いと考えてよいでしょう。

眼科検診のやり方は施設によって異なります。自費だと1~2万円でしょうか。検査項目の数と種類によって変わってくると思います。

名古屋市の健康診査

名古屋市が無料で実施している健康診査の中には眼底検査の項目があって、内科等では検査ができないため、無散瞳眼底写真を撮ってくれと当院に検査依頼が来ます。

この場合、検査項目が決められていて当院で勝手に変えられません。そのため当院で検査していても人間ドックと同じ問題があります。瞳孔が小さくて良い写真が撮れず、「判定不能」にすることもしばしばです。

ただ、せっかくの機会なので、無散瞳眼底写真だけでなくOCT検査もしています。無料サービスです。主に緑内障を発見するためです。

緑内障は無症状で進行する

早期から症状が出る病気は自分で気づくので発症早期に手当ができます。厄介なのは緑内障です。自覚症状がないまま末期まで進行してしまい、そのうえ失明もありえます。こういう病気こそ検診の必要性が高く、あらゆる機会を捉えて調べるべきです。

目の検診の頻度は?

目の検診の頻度は、どんな病気をターゲットと考えるかによって変わってきます。私のお勧めは40歳以上は1年に1回、60歳以上は半年に1回です。これは緑内障の有病率が40歳以上で約5%で年々増加するという調査結果に基づいています。また60歳以上になれば加齢変化が加速して老眼・白内障・ドライアイ・流涙・眼瞼下垂など様々な問題が出てくるからでもあります。

若い方でも、近視が強い方は緑内障にも網膜剥離にもなりやすいので毎年検診を受けましょう。ご家族に網膜色素変性など遺伝疾患がある場合も毎年調べましょう。緑内障は遺伝疾患ではありませんが、緑内障になりやすい体質は受け継がれるので、家族が緑内障ならハイリスクです。

(2022.2)