川本眼科

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川本眼科だより

川本眼科だより 271失明を防ぐ 2022年8月31日

失明を防ぐことは眼科として最優先の課題です。どうしたら失明を防げるのか、その対策を考えてみたいと思います。

なお、川本眼科だより86「失明の原因」と内容が重なりますが、これは15年前の記事です。当時と今では失明原因も変わってきており、今回は最新の知見を踏まえて内容をアップデートしています。

失明原因トップは緑内障

日本における失明原因は、1位緑内障、2位糖尿病網膜症、3位変性近視、4位加齢黄斑変性、だそうです。

15年前に比べると1位と2位が入れ替わりました。糖尿病の管理が進歩して失明する人が減ったのです。緑内障は診断法も治療法も進歩してきましたが、加齢に伴って進行する病気なので高齢化社会ではどうしても失明者が増えます。

ちなみに欧米では失明原因1位は加齢黄斑変性で、当時も今も変わりません。当時は食生活などが欧米化していずれ日本も欧米と同じになるだろうと予測されていましたが、予測は外れました。メラニン色素の量の違いが原因かも知れません。それでもじわじわ増えています。

15年前は網膜色素変性が3位でした。今はランク外のようで「その他」に分類されています。この病気は遺伝疾患でさほど頻度は変わらないはずです。恐らく高齢化で他の原因の失明原因が増えたのでしょう。

なお、世界的には失明原因1位は白内障です。今でも発展途上国ではそんなに簡単に白内障手術を受けられないのです。

緑内障の失明対策

緑内障の治療は「眼圧を下げて視野の悪化を防ぐ」です。残念ながら悪化した視野を元に戻すことはできません。なるべく早期に診断し、目薬を使い続けることが失明対策です。目薬だけでは不十分と判断すれば手術をします。

ところが緑内障では勝手に目薬をやめて、通院自体を中断してしまう方が多く、大問題となっています。そういう方の多くは何年もたってからまた受診されますが、久しぶりに受診した頃には、緑内障が相当に進行してしまっています。

これは緑内障では自覚症状が出にくく、進行しているかどうかは検査でしか分からないため、目薬の効果を実感しにくいからです。

医師が治療開始時に緑内障について詳しく説明し、治療を中断した場合には視野欠損が進行するリスクがあることを患者さんがよく理解することが大事です。

糖尿病網膜症の失明対策

糖尿病が原因の病気ですから、最も大事なのは糖尿病をしっかりコントロールすることです。

食事と運動が基本で、薬より重要です。患者さん自身の努力にかかっていますから、糖尿病のことをよく知ることが大切です。糖尿病教室や教育入院はとても良いことです。

しばしば働き盛りの人が多忙を理由にきちんと通院せず、悪化させてしまっています。これも早い段階では自覚症状が出ないため、「こんなに見えているのだから失明なんかするはずがない」「自分だけは大丈夫」と自分に甘い判断をしがちだからです。

悪化して増殖型網膜症になったらレーザー治療が必要です。レーザーで何とか失明を防ぐことができたとしても、視力が低下してしまうことまではなかなか防げません。既に相当に悪化している場合、レーザーをしても失明を防げないこともあります。

糖尿病を甘く見るな!が教訓です。

変性近視の失明対策

近視が強くなると、網膜に様々な変化が起こります。網膜が薄くなったり、出血したり、上の層と下の層にずれができたり、萎縮して視細胞が消失したり・・・ こういう異常な状態を総称して変性近視と呼んでいます。病的近視という言い方もあります。

近視は学童期に進みます。失明対策は子供の時に近視進行予防治療をして強い近視にしないことです。近年、近視の進行を防ぐ方法がいろいろと発見されました。「近業を避ける」「太陽光を浴びる」「アトロピンをさす」「近視進行予防のコンタクトを使う」などの手段を組み合わせればかなりの効果が期待できます。

変性近視になってしまったら、完治はしませんが、レーザーや硝子体注射(眼への注射)などの方法で治療が可能ですから、定期的に通院して早め早めに対処することが大事です。

加齢黄斑変性の失明対策

加齢黄斑変性にはドルーゼンという前駆病変があります。これが見つかったら定期的に眼底検査を受けることをお勧めします。加齢黄斑変性を早期発見できるかも知れません。

紫外線対策もしっかりしましょう。外出時はサングラスを忘れずに。つばの広い帽子を併用するともっと良いですね。

発症したら硝子体注射をします。完治は難しいですが、コントロールはできます。ただ繰り返し注射が必要なので、結構大変です。

網膜色素変性の失明対策

遺伝疾患であり、現在確立された治療法はありません。ただ、紫外線によって進行することは分かっており、加齢黄斑変性同様に紫外線対策は大切です。

なお、失明対策ではありませんが、暗所視支援眼鏡という夜盲対策のメガネがあります。この病気の患者さんには助けになると思います。

白内障の失明対策

日本では白内障は失明原因にならなくなっています。簡単に手術が受けられるからです。逆に言えば手術しなければ失明することもあるのです。

80歳を過ぎて進行した白内障の手術をするのは、手術が難しくなって合併症の危険が増えてしまいます。通院も大変です。あまり待ちすぎずに早めに手術することをお勧めします。

ロービジョン対策

どの病気でも、完全に失明する前には低視力すなわちロービジョンの状態になります。

ロービジョンに対しては、ルーペや拡大読書器などの補助機器があり、上手に使えば生活がずいぶん楽になります。

下記の施設を訪ねてみることをお勧めします。

1)リハビリテーションセンター

2)名古屋ライトハウス 情報文化センター

(2022.8)