川本眼科

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川本眼科だより

川本眼科だより 283他科との連携 2023年8月31日

全身と目は影響し合っています。内科をはじめ他科と眼科で連携が必要なことはよくあります。今回は連携にスポットを当ててみることにしました。どうしても内容が雑多になってしまうことはご勘弁下さい。

糖尿病網膜症  内科

糖尿病は内科と眼科の連携がとても大事です。

糖尿病は腎症や神経症など様々な合併症を引き起こしますが、たいていは内科にきちんと通院していればチェックしてもらえます。

唯一、糖尿病網膜症だけは眼科で検査を受けなければなりません。血糖コントロールが比較的良い場合でも網膜症を発症することがあるので厄介です。短期間に急激に悪化する場合もあり、繰り返し定期的に確認が必要です。6ヶ月に1回は眼科受診して下さい。既に発症している場合やハイリスクな場合はもっとこまめに受診が必要です。

糖尿病では内科と眼科の連絡のために連携手帳が作られています。眼科での診断内容を記入しますので、次回内科受診時に医師にお見せ下さい。

帯状疱疹(顔面)  皮膚科・内科

帯状疱疹は体のいろいろな場所に発症します。右か左か片側だけに皮疹を生ずるのが特徴です。顔面や額に皮疹が出たときは眼にも発症する可能性が高いので、必ず眼科にも受診して下さい。

薬の全身投与(点滴や内服)や顔面への軟膏塗布は皮膚科や内科にお任せし、眼科では眼軟膏だけを処方するのが一般的です。ただ、内服薬は発症後72時間以内に開始が望ましいので、眼科で内服薬を出すこともあります。眼軟膏は2週間継続が原則で、内服薬終了後も続けます。

結核・非結核性抗酸菌症  内科

これらの病気ではエタンブトール(EB)という薬を数ヶ月~数年にわたって使い続けますが、この薬は視神経障害・視野狭窄・色覚異常などを起こすことがあります。副作用の徴候を早期発見して中止しないと不可逆的な変化を起こす恐れがあるので、定期的に眼科受診が必要です。

エタンブトールを続けている限りは毎月受診をお勧めします。視神経障害の初期症状を自己評価できることを前提に2~3ヶ月に伸ばしてもよいとされていますが、みんなが自己評価できるとはとても思えません。

ヒドロキシクロロキン網膜症  内科

クロロキンはもともとマラリアの特効薬です。慢性腎炎の薬として日本でだけ認可、1960年代に大量に使われ、クロロキン網膜症という薬害事件を起こし、発売中止になりました。

ヒドロキシクロロキン(プラケニル)はSLEやCLEの標準治療薬とされる必要性の高い薬で、70ヵ国以上で使用されています。網膜症のリスクはクロロキンより低いですがゼロではありません。

この薬を使う場合は、開始前に眼科検査を受け、その後も年1年の眼科検査を受けることが必要です。(日本眼科学会「適正使用の手引き」)

ステロイドと緑内障・白内障  諸科

ステロイドは現代医学では必要不可欠な薬で、内科をはじめ各科で様々な疾患に使われます。使い方が難しく、必ず医師の指示を守って下さい。

ステロイドは緑内障や白内障などの眼合併症を引き起こす心配があります。ステロイドの影響は目薬が最も大きく、次がまぶたへの塗布で、全身投与は少量短期ならたいていは大丈夫です。

ただ、ステロイドに対する反応は人によって大きく異なります。緑内障は避けたいので、ステロイド使用時には眼圧だけは定期的に測るべきです。白内障の問題は手術すれば解決するので、もとの病気の治療を優先するのが普通です。

アトピー性皮膚炎  皮膚科

アトピー性皮膚炎では白内障網膜剥離を起こす恐れがあります。若い人に起こるのが特徴的で、原因は正確には分かっていないのですが、目がかゆいので掻いたり叩いたりを長期にわたって繰り返すのが原因ではないかと言われています。

治療は手術ですが、手術後はピントの調節力が失われて老眼になってしまうので、慎重に手術時期を見きわめます。

アトピー性皮膚炎がまぶたに認められるなら、眼底検査をお勧めします。皮膚科にだけ通院して眼科は忘れられていることが多いようです。特にこどもは見えづらくても訴えないことが多いので注意が必要です。

脳病変と視野・眼球運動  脳外(内)科

脳梗塞や脳出血があると視野欠損を起こします。眼科で視野欠損を発見して脳神経内科/外科に紹介することもあります。視野欠損の形によって脳のどの位置に障害があるかが分かります。

脳腫瘍の手術後、再発を早期発見するため眼科で定期的に視野検査をするよう依頼されることもあります。

脳腫瘍や動脈瘤のため眼球運動障害が起こり、複視(ものが二重に見える)になることがあります。時には、脳外科で即日入院・緊急手術になることがあります。

緑内障で使えない薬  諸科

アセチルコリンは副交感神経を刺激する作用がある神経伝達物質です。抗コリン作用がある薬はアセチルコリンの働きをブロックするため、隅角が狭いと急性緑内障発作をおこす心配があります。

抗コリン作用を有する薬は多く、腹痛・下痢の薬とか、喘息の薬とか、風邪薬とか、睡眠薬とか、ふだんよく使う薬が該当します。

緑内障や狭隅角の人に対して、他科で抗コリン作用がある薬を使う場合は眼科に問い合わせが必要です。実際には使える場合が大半ですが。

他科との連絡手段  諸科

一般的には診療情報提供書(診情)を用います。細かい事項まで記載でき、写真等も添付でき、問い合わせもできるのが利点ですが、手間がかかるので頻繁に連絡するには向いていません。

糖尿病では連携手帳を使うのが一般的です。短時間で記載できて便利ですが、手帳の記載だけでは不十分な場合があり、時に診情を書きます。

緑内障で抗コリン薬を使えるかどうかの連絡には「緑内障カード」を使っています。緑内障の型、薬の使用に制限があるか否かを他科の医師や薬剤師に伝えることができます。

(2023.8)