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川本眼科だより

川本眼科だより 14遠近両用コンタクト 2001年4月30日

近視のため長年コンタクトをしてきましたが、最近手元が見えづらくて困ります。仕事柄メガネをするわけにはいきません。遠近両用コンタクトで解決するでしょうか。

少し遠視気味と言われていますがふだんメガネをしたことはありません。最近新聞の字が読めなくなって困っています。老眼鏡をかけるのは年寄り臭いのでしたくありません。遠近両用コンタクトをすればよいと聞いたのですが。

老眼になるとメガネに替える?

老眼というのはピントを合わせる調節力が衰えることを言います。これは正視でも近視でも遠視でも同じようにおこります。近視でコンタクトを使用していてほぼ完全矯正にしている場合、老眼が問題になる年齢は正視の方とほぼ同じで、だいたい45歳くらいです。
 
老眼の初期には、少しコンタクトの度を落とし、低矯正にすることで対応される方が多いようです。遠くの見え方を犠牲にして、近くが見やすくなるようにするわけです。
 
低矯正にした場合、一番困るのは車の運転でしょう。明るいうちは大丈夫でも、夜間の運転には無理があります。瞳孔が開いてボケ方が大きくなるからです。そこで、運転専用にコンタクトの上からかけるメガネを作る方もいらっしゃいます。
 
老眼が進むと、多少低矯正にしたくらいでは対応できなくなります。そこで、近くを見るときはコンタクトの上から老眼鏡をかけることになります。最初はたまにしかかけませんが、そのうちに老眼鏡のお世話になることが多くなります。
 
この時点で、コンタクトをあきらめて遠近両用メガネにしたり、ふだんは近視のメガネをかけて近くを見るときはメガネをはずすスタイルにしたり、コンタクトからメガネに移行する方が多くなります。コンタクトの上からメガネをするというのでは、確かにコンタクトのメリットがあまりありません。
 
それでも、強度近視の場合や、左右の度が大きく違う場合など、どうしてもコンタクトが必要なケースもあります。

遠近両用コンタクト宣伝の裏側

コンタクトだけで、遠くも近くも見えるようにはできないものでしょうか。
 
実は、遠近両用コンタクトというのはかなり昔からあります。しかし、欠点が多くて普及しませんでした。
 
最近、今までの遠近両用コンタクトの欠点を改善した新商品が次々に発売され、メーカーが積極的に宣伝するようになりました。
 
背景には、今までのように若い人だけを対象にしていたのではコンタクトの需要が限界に達しており、競争も激化していて利益が見込めない、というメーカー側の事情があります。
 
従来、45歳以上になるとコンタクトからメガネに切り替える人が多かったわけですが、それまでコンタクトを使ってきた人は、コンタクト装用に抵抗感はなく、装着指導の必要もありません。コンタクトを使いつづけてもらえれば、需要は大きく拡大する、とメーカーは考え、新商品開発に取り組んだのです。
 
最近では、使い捨ての遠近両用コンタクトも登場しました。
 
メーカーの事情はどうあれ、選択肢が増えることは良いことだと思います。

遠くも近くも見え方は7割

残念ながら、新しい改良型の遠近両用コンタクトも夢の商品ではありません。1枚のレンズを遠用と近用の両方に使えるようにしようとすれば、どこかにしわよせはくるのです。
 
今宣伝している遠近両用コンタクトの多くは、遠用部と近用部を同心円上に並べて、遠くと近くと2ヶ所にピントが合うようにしてあります。
 
この方式だと、遠くの見え方は、普通のコンタクトで合わせた場合の7割くらいだと考えておけば間違いありません。近くの見え方も同じで、老眼鏡で一番見えるようにした場合の7割くらいだとお考え下さい。
 
今まで普通のコンタクトをしていた方が遠近両用コンタクトを試してみた場合、遠くの見え方を基準に比較してしまうと満足できないでしょう。

メガネが使えない職業には福音

たとえ、ふつうのコンタクトより見え方が劣ったとしても、コンタクトだけで遠近とも見えるというのは大きなメリットです。
 
世の中には、職業上メガネを使うわけにはいかないことがあるからです。
 
例えば接客業です。従来は、お客様の前では見えなくても無理をしてメガネをかけないということが多かったと思います。遠近両用コンタクトがあればずいぶん助かるわけです。

左右で遠用・近用を分ける方法

普通のコンタクトで遠近両用を実現する試みもあります。右目は遠くが見えるように、左目は近くが見えるように、左右でピントが合う位置をずらすという方法です。「モノビジョン」などと呼んでいます。
 
慣れると結構便利なようです。老眼鏡をかけなくてもすむのが大きな利点です。普通のコンタクトですから値段も安くつきます。
 
誰でも成功するわけではありません。やっぱり両目のバランスが合っていたほうが見やすいのです。ただ、最初は違和感が大きくてもだんだんうすらぐようです。また、立体感はかなり損なわれます。

コンタクト未経験者には難しい

今までコンタクトをしたことがない方が、老眼鏡の代わりに使うというのは無理でしょう。
 
遠くの見え方が悪くなってしまい、ご満足いただけないと思います。また、コンタクト装着やケアの煩わしさにも耐えられないと思います。
 
まずはメガネを使うことをお考え下さい。メガネではどうしても不都合な場合に、遠近両用コンタクトを検討してみることになります。

使い捨てで試してみる

以上説明してきたように、遠近両用コンタクトは、すべての人に勧められるものではないが状況によっては大変便利、という商品です。
 
こういうものは「百聞は一見に如かず」で、実際に試してみないと見え方や使い勝手がわかりません。
 
幸い、使い捨ての遠近両用コンタクトが発売されたので、実際に試してみることが可能になりました。当院にトライアルレンズが置いてあります。また、ハードレンズでも、うまく使えなかった場合は返品可能になっています。
 
遠近両用コンタクトは、当院で取り扱っておりますので、興味がある方は御相談ください。

2001.4