川本眼科

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川本眼科だより

川本眼科だより 18エアコンの温度 2001年8月31日

エアコンの温度設定では苦労しています。
 
人によって温度の好みが大きく異なるからです。 もっと涼しくしてほしいという要望をいただくこともありますし、冷房が効きすぎているという苦情をいただくこともあります。
 
今月は、エアコンの温度を話題に取りあげてみました。

高齢者ほど冷えすぎを嫌う

エアコンの温度設定には苦労しています。人によって好みの温度が大きく違うからです。
 
一般に高齢者ほど冷えすぎを嫌います。若い方は一般に低めを好む傾向があります。私自身、昔はがんがん冷やすのが好きでしたが、最近は冷房は弱めのほうがよいと考えるようになりました。
 
高齢者が冷えすぎを嫌う最大の理由は、体温調節機能が衰えているせいです。室外から室内に移動したときなど、温度差が大きいと、急に血管を収縮させたりして対応する必要がありますが、高齢者ではすぐに対応できず、大きなストレスとなります。これをヒートショックと言います。ヒートショックをおこさないためには温度差を5℃以内に抑えるとよいとされています。
 
反対に、若い方は温度差をあまり苦にしません。暑いときに冷気にあたると快感があるので、できるだけ冷房を目一杯働かせようとします。20℃くらいでも平気なようです。若い方では代謝が盛んという理由もあるのでしょう。
 
女性のほうが冷房に弱い人が多いという印象があります。自律神経失調症が多少女性に多いという理由もありますが、やはり女性のほうが夏薄着になっていることが多いせいだと思います。

夏は26℃で

政府はエアコンの温度を28℃にすることを推奨しています。これは省エネのためです。私の自宅のエアコンも28℃に設定しています。自宅では薄着で構わないですからね。
 
しかし、やはり28℃では暑いと感じる方が多いようです。半袖で長時間座ったままというオフィスならよいのでしょうが、出入りが激しい上に不特定多数の方が出入りするという条件では、もう少し低くする必要があります。
 
22℃まで下げると、暑い外を歩いてきた人が涼むにはいいのですが、長時間その中にいると露出した手足が冷えてしまい、冷房病になりかねません。外との温度差も大きくなりすぎて、ヒートショックをおこしてしまいます。
 
そんなわけで、大多数の方が快適に過ごせる温度というのは24~26℃ではないかと考えています。当院では、その中でやや高めの26℃(玄関に近い待合室は25℃)にしていますが、これは高齢の患者さんが多いという眼科の条件を考慮したものです。
 
26℃でも寒い、と言われることがあるのですが、万人すべてに満足していただくことはそもそも無理なので、寒がりの方は上に着るものを1枚お持ちいただきたいと思います。

扇風機の併用

当院の工夫の1つが扇風機を併用することです。もともと院長の自宅で始めたことですが、なかなか快適だったので、診療所にも採用し、現在は待合室と診察室2つに扇風機を取り付けています。
 
風があるのとないのとでは、人間の体感温度は大きく異なります。暑い外から入ってきた人はできるだけ涼みたいでしょうが、エアコンの温度設定だけで対応しようとすると長時間室内にいる人は冷えすぎになってしまいます。汗をかいていれば扇風機の風により気化熱が奪われてそれだけ体感温度が下がります。汗も乾いて一石二鳥というわけです。風がいやな方は風があたらない位置に座っていただければよいわけです。
 
風により空気を循環させて部屋の中の温度差をなくすというのもメリットです。エアコン自体も風を出しますが、冷気が直接あたるのを嫌う方が多いので、エアコンの風は弱めにして扇風機と併用しています。

湿度が低ければ快適

同じ温度でも、湿度が低ければ快適になります。それだけ汗が乾きやすくなるのです。
 
湿度を低めに温度はやや高めにすると、暑がりで汗っかきの方も、寒がりの方も、妥協できることが多いようです。
 
長時間冷房を運転していれば湿度は低くなるので、診療開始1時間くらい前からエアコンを稼働させて、できるだけ湿度を抑えるようにしています。これは室内の温度差をなくすことにも役立っています。暑い部屋を急速に冷やそうとすると、暑い空気は軽いために上に、寒い空気は重いために下に集まり、足元ばかりスースー寒いということになりやすいのです。
 
もっとも、ドライアイの患者さんにとっては、湿度は高めのほうがよいわけで、何事にも良い点悪い点があるものです。

冬は22℃

冬の暖房はエアコンを22℃に設定しています。
 
冬は夏にくらべて温度に関する苦情は少ないので助かります。たぶん、服を着たり脱いだりという調節が容易なせいでしょう。冬は外気の湿度が低いせいもあるのかも知れません。
 
上から暖めるエアコンでは、理想的な頭寒足熱にはならないのですが、長時間稼働させているとそれほど温度差は大きくならないようです。ここでも扇風機の併用が上下の温度差をなくすのに役立ちます。
 
当初考えていた床暖房を床への配線・配管上の制約とコスト面から断念したため気にしていたのですが、とくに心配するほどのことはなかったようです。

断熱性・気密性

一般に、断熱性・気密性が高くなるほど冷暖房の効率はよくなります。上下の温度差が少なくなるので快適になるとされています。
 
当院でも、できるだけ断熱材を厚めに用い、窓ガラスはすべて複層ガラスにしてあります。しかし、玄関の出入りが多いので、ここでの損失が大きく、外から冷気や熱気が侵入して上下の温度差が大きくなりやすいのです。これに対する対策として風除け室の設置が考えられます。引っ越し前の川本眼科で採用していましたが、両方のドアが開いてしまって結局大した効果がなく、バリアフリーの点からも不利になるので、今回はやめてしまいました。
 
玄関に近い待合室では、どうしても外気の影響が大きくなります。ご容赦下さい。

2001.8