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川本眼科だより

川本眼科だより 157医学部受験事情 2013年2月28日

子供の大学受験に関連して昨今の医学部受験事情について調べる機会があり、いろいろと知識を得ました。私が受験した時から36年たっていることを考えると、世の中が変わったほどには変化していないと感じましたが、それでも様変わりした点もあります。

なお、業界関係者という訳ではないので、伝聞や推測に基づく記載が含まれます。その点はご容赦ください。

国立大学は前期に集中

国立大学は、私が受験した1977年には一期校と二期校に分かれ、2回の受験機会がありました。もちろん医学部も同じです。一期校に東大・京大などの旧帝国大学が集中していたために一期校のほうが格上という風潮が生まれ、その弊害に対する解決策として1979年に受験日が統一されました。

今度は1回しかチャンスがないことが問題視され、1987年にはA日程・B日程に分かれました。東大と京大を併願できた年もあったのです。ただ、大量に入学辞退者が出て混乱しました。

その後制度の手直しが何度も行われました。現在、国立大学には建前上は前期・後期の2回受験機会があるものの、前期日程しか試験をしない大学も多く、定員の大部分は前期に偏っています。

国立大学医学部の後期は、少ない定員に大勢の受験者が応募してものすごい倍率です。その一方、前期で医学部に合格すれば後期の受験は放棄するのが普通ですから、あらかじめ合否の予測がしにくく、ギャンブルみたいになっています。

医学部人気は過熱気味

最近の医学部人気は異常なほどです。偏差値もうなぎ登りです。

医師の待遇は別に良くなってはいません。優遇税制はなくなりました。診療報酬は切り下げられ、訴訟のリスクも増しています。倒産する病院、廃業する病医院も珍しくなくなりました。

それでも医学部を目指す人が増えたのは、ほかの仕事の魅力が減ってしまい、相対的に医師の仕事が魅力的に見えてきたのでしょう。

例えば、弁護士は医師と並ぶ人気がありましたが、法科大学院制度の失敗や弁護士数の急増などで魅力がなくなりました。経済界でも経済の低迷で成功するより失敗する人のほうが目立つようになりました。また、大企業に勤めても終身雇用が保証されない現実も明らかとなりました。

医師は、大儲けもできないが、概ね失業する心配もなく、それなりの収入がほぼ保証され、安定した職業として再評価されたのです。

地方国立大の人気

かつて、旧帝国大学と地方の比較的歴史の浅い国立大学では、人気に大きな差がありました。

でも、今では、医学部ならどこでもよい、医師免許さえもらえれば、自宅から遠く離れた地方に行くことも厭わないという受験生が増えました。資格を取るための手段と割り切っているわけです。センター試験の点数が出てから願書を出す仕組みも、この傾向に拍車をかけました。

ただ、地方国立大学のほうでは、都会から来た学生の多くが卒業後に出身地に帰ってしまい、大学に残る人が減って困っているようです。特に女子の場合はほぼ100%出身地に帰るのが現実です。当初予想した以上にこの問題が大変だったため、最近では、大学側は卒業後地元に残りそうな人を優先したいと考えています。そのせいもあって、女子学生の比率自体を一定の割合に抑えたいというのが大学の本音だと言われています。

私立大学の人気

私立大学医学部の人気もうなぎ登りです。

以前は国立の受験層と私立の受験層は全く別でした。私立の医大では、6年間で2~4千万円の学費がかかるため、私立を受けるのはどうしても跡継ぎが欲しい開業医の子弟が圧倒的でした。

最近では、国立と有名私立を併願することはよくあります。国立大医学部が事実上1校しか受けられない状態にあることが大きいと思います。国立に絶対合格できるという人は少ないでしょうし、複数の受験機会が欲しいのは当然です。

また、女子の場合、合格した地方国立大を蹴って自宅から通える有名私立大に進学するケースもそれほど珍しくはないようです。男子ではさすがに国立を選ぶ人が多いでしょうが、慶応や慈恵なら悩む人が多そうです。

私立の医学部は難しくなった

1970年以降に新設された私立の医大に対して、低学力でも寄付金をたくさん出して金の力で医者になる、といったイメージをお持ちの方も多いと思います。昔は確かにそういうことがあったようですが、最近は様変わりしています。

1つには私立医大の経営が安定し、昔ほど寄付金に頼らなくても大丈夫になったという事情があります。建学からしばらくは借金が多く、経営が困難だったために、なりふりかまわず入学者の親からの寄付金を当てにしていた訳ですが、時とともに借金は減り、余裕ができました。あまり低学力の学生を受け入れると医師国家試験の合格率も悪くなり、大学の評判が落ちるので、一定水準以上の学生しか合格させないようにしました。

現在は、いわゆる「新設医大」でもそれなりに勉強しなければ入れません。補欠入学者に寄付金を要請することは今でも普通に行われていますが、極端な話は聞かなくなりました。予備校が発表する偏差値もずいぶん上がりました。
※最近また私立医大を新設する話がありますが、 金の問題がまた起こるので止めて欲しいです。

高学力の学生に入学してもらうため、成績優秀者には授業料の減免などで優遇する私立の医学部も多くなりました。国立大の医学部を受験するような学生が欲しくて、授業料を大幅に下げた私大もあります。授業料が低いほど受験者が多くなり、偏差値も上昇するからです。例えば、順天堂大は6年間の総学費がもともと約3千万円だったのを約2千万円に下げました。その狙いは概ね当たり、人気が急上昇したと聞きます。

面接で点数操作の噂

さて、前述のように、地方大学は女性比率を下げたいと考えています。

また、一般に、医学部では三浪以上の受験生や社会人の再受験生が多いのが特徴ですが、大学側は本音では多浪受験生や再受験生を歓迎していません。教育しにくいし、卒業後も医局の戦力になりにくいと考えているのです。

そこでどうするか。筆記試験は、成績開示もしなければならず、公平に採点せざるを得ません。それに対し、面接はほぼ主観的評価であり、ある意味自由に点が付けられます。面接の採点には意識的、無意識的に特定の受験生を排除する意図が反映されると言われています。確たる証拠はありませんが、この説は信憑性が高そうです。

女性や多浪生や再受験生をどの程度受け入れているかは、在学生での比率をみればだいたい想像がつきます。該当する人は受け入れに消極的な大学を避けたほうが無難です。もちろん、筆記試験が抜群にできれば関係ありませんが。

(2013.2)