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川本眼科だより

川本眼科だより 237白内障と緑内障 2019年10月31日

白内障と緑内障は、名前こそ似ていますが別の病気です。一般の方の認識としては両者は無関係と考えていただいて構いません。

ただ、それほど頻度が高い訳ではありませんが、白内障の進行が影響して起こる緑内障も存在します。このあたりはあまりにも専門的になりすぎて、患者さんへの説明にはいつも苦労しますし、時間をかけても伝わっていないと感じます。

今回はこの難しいテーマを取り上げますが、すべてを網羅的に説明するのは医学雑誌の特集記事みたいになってしまいますので、一般臨床で比較的遭遇しやすい問題に限定してお話しします。

水晶体融解緑内障

水晶体が濁って見えづらくなるのが白内障です。白内障になって視力も大幅に下がっているのに放置していると、水晶体が溶け出すことがあります。そうなると強い炎症を起こし、眼圧も急激に上昇します。これが「水晶体融解緑内障」です。こうなると緊急手術が必要です。

さすがにここまで白内障を放置する人は多くはありませんが、高齢者で手術が嫌だと拒否し続けた人や、片眼だけの白内障で生活に困らないと放置した人に起こります。通常の白内障より手術はずっと難しくなりますし、合併症が起こるリスクも何倍も高くなります。眼圧があまりに高いと短期間で視野が大幅に障害されて元に戻りません。

もちろん、こんなことになる前に手術すべきだと思います。

眼底疾患等で良い視力が期待できない場合、ふつう白内障手術はしませんが、水晶体融解緑内障を避けるために手術することもあります。

房水の流れと隅角

眼球内部の水晶体より前方は「房水」で満たされています。房水は絶えず入れ替わって流れ続けています。房水は毛様体で作られ隅角から流出していきます。隅角は虹彩の根元にあり、房水の下水口になっています。

水晶体が膨らむと狭隅角に

白内障が進行すると水晶体は厚みを増します。すると虹彩は前方に押され、隅角が狭くなります。

隅角が狭いと何かの拍子に部分的に閉塞してしまうことがあります。いったん閉塞すると房水が虹彩の後ろに滞留するためにさらに閉塞がひどくなる悪循環を起こし、ついには完全に閉塞します。

こうなると房水の出口がないため眼圧が上がり続け、通常は10~20ですが、30→40→50と上昇します。この状態を「急性緑内障発作」と呼びます。

急性緑内障発作は、短期間で急激に視野や視力が障害され、治療しても元に戻らず、最悪の場合失明もありえます。

幸い、発作はそうめったに起こるものではありません。でも誰に起こるか予測が難しく、白内障が軽くて視力が良好でも狭隅角化していれば起こる可能性があるため、早めの白内障手術をお勧めする理由になっています。

閉塞隅角緑内障の治療に手術

緑内障には「開放隅角緑内障」と「閉塞隅角緑内障」があります。(他にもあるが省略)

たいていは「開放隅角緑内障」です。単に緑内障と言われた場合はこちらだと思ってよいでしょう。ふつう目薬で治療します。

「閉塞隅角緑内障」でも目薬の治療をすることはありますが、隅角の閉塞を根本的に解除するために、水晶体摘出すなわち白内障手術が一般的になりました。たとえ視力が良好で本人が困っていなくても手術するのです。水晶体の代わりになる眼内レンズは薄いため、術後隅角が大きく広がります。今や治療の第一選択になっています。

かつては「閉塞隅角」ではLI(レーザー虹彩切開術)が一般的な治療でしたが、LIをしても白内障が進めば結局白内障手術も必要になることから、今日では「LIより白内障手術」という流れに変わってきました。

「緑内障を予防/治療する目的で白内障手術」ということになるわけですが、丁寧に説明したつもりでも患者さんがよく理解できなくて混乱することが多いですね。患者さんの理解力に応じて納得できる説明を心がけていますが、結局「緑内障になると困るから手術しましょう」という大雑把すぎる説明しかできないこともあります。

隅角の観察

川本眼科は最近CASIA2(前眼部OCT)という機械を購入しました。これは角膜・結膜・虹彩・水晶体あたりを横から見た断面図として表示できる画像診断装置です。

特に素晴らしいのは隅角を簡単に撮影して記録できることです。今まで隅角を見るには特殊なレンズを角膜に接触させて観察するしかなく、患者さんも大変ですし、記録に残すことも困難でした。

これからは狭隅角の心配のある患者さんの経過観察が容易になります。今まで医師の勘に頼っていましたが、計測して定量的に正確に評価できるようになりました。

白内障手術後の眼圧上昇

話は変わりますが、白内障手術後に眼圧が上昇することがあります。手術の際にヒアルロン酸というゼリー状の物質を眼内に入れ、手術終了前に洗浄して取り除きますが、丁寧に洗浄しても隅角にヒアルロン酸が残ることがあり、房水の流出を邪魔するので眼圧が上がります。

眼圧が高いのを放置すれば通常の緑内障同様に視神経が障害されて視野が欠けますが、一般的には一過性で数日で眼圧は正常に戻るので緑内障とは呼んでいません。でもまれにはいつまでも眼圧が下がらないことがあります。

治療は普通の緑内障と変わらず、「眼圧を下げる」に尽きます。点滴で眼圧を下げ、内服薬で眼圧を下げます。眼圧を下げる目薬を使うこともあります。

 

 

2019.10