川本眼科

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川本眼科だより

川本眼科だより 243コロナは長期戦 2020年5月1日

緊急事態宣言が5月末まで延長されました。

新型コロナウイルスCOVID-19の話題はいささか食傷気味ですが、この時期に眼科の病気の解説をしてもあまり興味を持っていただけないと思い、眼科領域でのコロナウイルス関連の話題等ご紹介いたします。

スペイン風邪は2年かかった

1918年頃「スペイン風邪」が猛威を振るいました。6億人が感染し、2~4千万人が死亡したと推計されています。正しくは風邪ではなくインフルエンザですし、発生源もスペインではなく米国だそうです。汚名を着せられたスペインにとっては迷惑な話です。

スペイン風邪は、いったん下火になった後に、第2波、第3波が来ました。第2波が最も激甚な被害をもたらし、終息まで約2年かかりました。 コロナ問題が短期で収まることを望みますが、残念ながら長期化は避けられないでしょう。

未感染者が多ければ再燃する

既に新型コロナウイルスは蔓延し、社会的接触を制限してもしぶとく生き残ります。いったんは下火になったように見えても、どこかに潜んでいます。感染したか否かがわかりづらい狡猾なウイルスですからなおさらです。

制限が緩和されればまた感染は広がるでしょう。
未感染者が多ければ次の波は必ずやってきます。また接触制限を強化するしかありません。ウイルスの感染状況に翻弄されながらの生活が長期間続き、完全に元の生活に戻るには2年はかかるのではないかと私は予想しています。

薬は? ワクチンは?

コロナウイルスに対する治療薬の治験は世界中で650件も行われているそうです。残念ながら、細菌感染に対する抗生物質のような劇的な効き目は期待できません。感染後に重症化を防ぐ程度の効果です。死亡者を減らし、医療崩壊を防ぐ役には立つでしょうが、それですべて解決するなどと過度な期待はしないほうが良さそうです。

ワクチンはどうでしょう? 残念ながら開発には1~2年はかかり、当座の間に合いません。しかも、気になるのはワクチンの効き目です。接種すればほぼ完全に感染を防げるなら理想的ですが、効果が不十分ということもありえます。心配なのはウイルスのほうが変異を起こしてワクチンが効かなくなる事態です。つまり、ワクチン開発で完全に終息するかどうかも不確実です。

完全に終息するには?

夏になれば終息するという期待はしぼみました。熱帯地方でも感染は拡大しているからです。

真に有効なワクチンが完成し、大多数の人々がワクチンを接種すれば、流行は収まります。でも、ワクチンの感染防御効果が不十分という可能性もあるし、強い副反応が出るかも知れません。もし副反応を恐れて大勢の人が拒否すれば社会的には流行は収まりません。

ウイルスに感染して治癒した人はウイルスに対する免疫を獲得します。免疫を持った人が人口の6~7割を占めれば流行は終息すると言われています。スペイン風邪もそうして終息したと考えられます。でもそれには長い時間がかかります。

人と人との接触を制限することで、感染の拡大は減速します。ただし、見方を変えれば、それは免疫を持つ人が増えないということでもあります。感染爆発を防ぎ、医療崩壊を防ぐために、今接触制限が必要だということに私は全面的に賛成ですが、それは集団として免疫を獲得する期間を長引かせる側面もあるということを理解しておく必要があるでしょう。

社会生活や企業活動の再開は?

都市封鎖や大規模な休業を長期間続ければ経済は底なしの大不況になります。感染症も怖いですが、一方で貧困や倒産や不況も人を不幸にし、時には死に至らしめます。

一度感染して免疫を獲得した人はふつう再感染しません。新型コロナで再感染の可能性が報告されていますが、治癒後もPCR検査が陰性⇔陽性を繰り返すことがあるせいだと考えます。

免疫を獲得すれば感染のリスクなく人と人との接触が可能になるので、そういう人から学校や企業や経済活動を再開できるでしょう。

感染したかどうかを調べる検査が抗体検査です。問題は判定結果の信頼性です。抗体検査で免疫を獲得しているか否か確実に判定できればよいのですが、結果が信用できなければ何にもなりません。信頼性の高い抗体検査が開発されることが鍵となります。

コロナウイルスの結膜炎

新型コロナウイルスCOVID-19は結膜炎を起こすことがあると報告されています。頻度は約1%で、ほとんどの場合発熱や呼吸器症状も伴っています。現時点で得られる情報で判断する限り、結膜炎だけの症状でコロナ感染を疑う必要はないと思いますが、今後新たな報告が出され対応が変わってくる可能性はあります。

結膜がウイルスの侵入口になる可能性が指摘されています。口や鼻では呼吸をする際にウイルスを含む飛沫を吸い込みますが、目に飛沫が飛び込む可能性はかなり低いので、結膜から侵入するならウイルスが付着した手で目をさわることで感染すると考えられます。対策はやっぱり手洗いです。

眼科学会・眼科医会はウイルス感染の疑いが濃い人を診察するときにはメガネやゴーグルの装用を推奨しています。一般の人がそこまで心配してメガネやゴーグルを使う意味があるかは疑問です。接触相手にマスクをしてもらい、できるだけ距離を保つほうが有効だと思います。

眼科手術をどうするか

コロナ問題は長期戦になるので、厳格な制限をかけて多くの手術を停止してしまうのは考えものです。眼科手術そのもので感染するリスクは低く、入院や通院で人と接触することが増えるので慎重に判断する必要があります。

緊急性の高い手術、例えば、網膜剥離、眼内炎、急性網膜壊死などでは、迅速に手術する以外の選択肢はありません。

待機することが可能な手術ではどうでしょうか。代表例は白内障で、コロナ感染が蔓延している状況では延期も検討すべきです。結局、感染状況と必要性を天秤にかけて判断するしかありません。白内障でも1~2ヶ月なら待てるが1年は待てないという場合もあるでしょう。

コロナの流行と共存する道、すなわち、必要な手術を選別して、感染防止対策をきっちりしつつ実施していくことが現実的です。

(2020.5)