川本眼科

文字サイズ

小 中 大

川本眼科だより

川本眼科だより 289医学情報をどこで得るか 2024年2月29日

何でもスマホで調べ物をする、という人は多いのではないでしょうか? 簡単に情報が得られるという利点は確かに大きいのですが、一方で情報が不正確だったり間違ったりしていることも頻繁にあります。さらに、意図的にニセ情報が流されていて、ネット情報はもはや安易に信用できないのが現状です。

今回は、正確な医学情報を得るための方法を考えてみましょう。

ネットは確かに便利

昔は一般の人が医学情報を手に入れるのは簡単ではありませんでした。新聞・テレビ・ラジオ等マスメディアを通して知識を得るか、書店や図書館で一般向けに書かれた本を探すか、時間と労力をかけてもなかなかズバリ知りたい情報には行き当たらなかったのです。

かかりつけの医師に直接尋ねるのが一番の早道であったと思いますが、一昔前の医師はいかめしい顔をしていて、そんなに気安く何でも質問できる雰囲気ではありませんでした。そもそも大病院では3時間待ち3分診療などと言われ、医師はいつも忙しそうで、大勢の患者さんが診察を待っていることを考えると、ゆっくり質問をすることも憚られました。

インターネットの普及はこの状況をガラッと変えました。ネットで検索すれば、たちどころに大量の情報が得られます。実に便利です。

しかも、その情報はふつう無料です。高価な医学書を買えば何万円も払って入手しなければならない情報が、惜しげもなくタダで広く一般に提供されています。何てありがたいんでしょう。何て素晴らしいんでしょう。

ネット情報には嘘が多い

残念ながら、うまい話にはしばしば落とし穴があります。インターネットも最初の頃は良質な情報が圧倒的に多かったのですが、だんだん誤った情報が増え、途中から意図的にニセ情報が流されるようになって、今やネットは嘘だらけです。

ネットに情報を流すことは誰にでもできます。誰かが審査するわけでもありません。講演会の開催や本の出版にはお金がかかりますが、ネットに情報を流すためのコストはほとんどタダです。

その上、ネットは匿名性が高く、誰が情報を発信したのかは本人が名乗らなければわかりませんし、誰かになりすますことも容易です。

ネットにアクセスする人が飛躍的に増えると、これを商売のタネにしようと考える人も増えます。アクセスが増えると報酬が得られるという仕組みがあるので、他人が注目しそうな作り話を流してアクセスを増やそうとします。健康不安を煽り、病医院での治療を否定して、何やら怪しげな商品を買わせる手口もよく見かけます。

収益と関係なくデマを流す愉快犯もいます。

ネットの嘘をどう見破るか

慣れてくるとあからさまな詐欺サイトはうさんくさいと見分けがつくようになりますが、手口はだんだん巧妙になってきていて、嘘を簡単には見抜けません。

たくさんのサイトを見比べてみるのは1つの方法ですが、効率は悪いし、嘘やデマを繰り返し大量に拡散させる手法もよくあり、同じ情報が何度も書かれていれば正しいとは言えません。

医学に関するデマは、相手が素人で、正しい知識を持ち合わせていないことを利用しています。これに対抗するには正しい知識を得て、真偽を判定する目を養うしかありません。それには信頼できる情報源を確保する必要があります。

本を読みましょう。ネットよりはるかに信頼性が高いです。医師の意見を聞きましょう。専門家はネットよりずっとずっと信用できます。

信用できるサイトが手がかり

検索で出てきたサイトに片っ端からアクセスして全部読もうとしがちですが、かえって惑わされてしまいます。特に、意図的に嘘をついている場合は、人の感情を揺さぶり不安を煽ってくるので、冷静な判断ができなくなってしまいます。

どこの誰だか分からない人物が書いた記事や、出所がはっきりしない伝聞は、最初から疑ってかかりましょう。

「ここは信用できる」というサイトを見つけましょう。専門家が責任を持って書いた記事が頼りになります。科学的に客観的に書かれた記述をまずは信用して、それを手がかりにするのです。もし他のサイトに全然違うことが書かれていたら、作り話ではないかと疑ってみることです。

MSDマニュアルがお勧め

MSDマニュアルをお勧めします。それぞれの分野の専門家が執筆していて、内容は正確で吟味されています。家庭版とプロフェッショナル版があり、両方とも誰でもアクセスできます。

https://www.msdmanuals.com/ja-jp/

正確さを重視しているので、専門用語が多く使われていて難しく感じるかも知れませんが、医師が勉強しているのと同レベルの知識を得ることができます。私も自分の専門分野以外で知りたいことがあるとちょくちょく利用しています。

目の医学情報

日本眼科学会が「目の病気」を解説していて、病名や症状から調べることができます。「治療法一覧」「目の構造」で眼科の基本的な知識が得られます。図や写真も多く、充実しています。

https://www.nichigan.or.jp/public/disease/

日本眼科医会の「目についての健康情報」もお勧めです。すべてその領域の専門家が執筆していて、記述が正確です。しかも一般の方向けに書かれているので分かりやすいと思います。

https://www.gankaikai.or.jp/health/

製薬会社のサイト

製薬会社のサイトも充実しています。内容はすべて専門家が監修していて信用できます。

参天製薬は「目の情報ポータル」というサイトでいろいろと情報提供しています。

https://www.santen.co.jp/ja/healthcare/eye/

千寿製薬は「目薬と眼の病気について」というサイトで情報提供しています。

https://www.senju.co.jp/consumer/note/

開業医の情報提供

開業医のクリニックがネットで情報提供していることもよく見かけます。開業医は何でも屋ですから、必ずしも自分の専門領域でなくても記事を書いています。たいていは無難な内容ですが、たまにかなり偏った見解を述べる先生もいます。自院の宣伝だなあと感じることも・・

一方、そういうサイトでは、一般的な解説からはみだしたニッチな領域の話が聞けることがあるのが魅力です。内容が正確かどうかは、書き手次第ですね!

ネットは便利ですが、デマや嘘も多いです。

信用できるサイトを利用しましょう。

(2024.2)