川本眼科

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川本眼科だより

川本眼科だより 267両眼同日手術 2022年5月6日

白内障は両眼におこるのが普通です。日帰りで両眼とも手術する場合、従来は左右で1週間あけていましたが、最近は両眼を同じ日に手術することが多くなっています。ただし、同日手術を実施している眼科は限られます。

なぜ同じ日に手術することが増えたのか、問題はないのか、メリットとデメリットをご説明いたします。

片目だけ手術するか両目か

白内障はほとんどが加齢に伴って起こります。加齢が原因の場合は、多少の左右差はあっても、両眼とも白内障になっているのが普通です。

以前は白内障の程度に左右差がある場合、見えづらい目を先に手術し、反対側の目はもっと進行するのを待ってから手術するのが一般的でした。

しかし、反対側の目も近い将来に手術が必要になると予想されるなら、なるべく両目とも手術したほうが、術前検査も1回で済みますし、通院回数も少なくて済みます。白内障手術の安全性が高くなるにつれて、両眼手術が増えてきています。

1週間あける理由

両目とも手術すると言っても今までは片目ずつ1週間間隔で手術するのが普通でした。現在でも多くの施設で1週間あけています。

なぜかと言うと、術後すぐは強い炎症が出たり角膜の浮腫がおこったりしてすぐには視力が出なかったからです。1週間くらいすると感染の危険が減り、炎症が引き、角膜浮腫も改善して見やすくなるので、それから反対側の手術にとりかかっていたのです。

1週間間隔は負担が大きい

1週間あけるのは安全な方法だと思います。しかしながら患者さんは結構大変です。

術後はいろいろと生活の制限があります。テレビを見ないで下さい、スマホやパソコンもダメです、洗髪や洗眼も禁止です、車の運転もお勧めしません・・・ 当院の場合だとたいてい5日目に許可をしています。そうすると、許可をもらってもまたすぐ次の手術になるわけで、結局2週間ほど不便な生活が続きます。

仕事も術後1週間お休みしていただきますが、1週間間隔で手術すると結局2週間お休みしなければならず、それが困難な方が多いのです。

また、手術の際にはできるだけご家族の付き添いをお願いしていますが、ご家族もお仕事があったり遠方に住んでいらっしゃったり、2回付き添うのは大変なようです。

同日手術が可能になった理由

白内障の手術時間は劇的に短くなり、術後の炎症も非常に軽くなりました。手術翌日でも視力が良く出て生活に困らなくなりました。その結果、1週間待たなくても大丈夫になったのです。

数年前にこわごわ始めました。感染症など深刻なトラブルが両眼同時におこったら大変ですから。実際には重大な問題は起こっていません。点眼内容が左右全く同じになるので間違いが減り、術後の検査も効率的にできるなど、利点が多いと分かりました。通院回数が減り、生活制限期間も短縮して、患者さんの負担は減りました。

同日か中1日か1週間間隔か

川本眼科では、両眼の白内障手術を受ける方に3種類の選択肢(同日/中1日/1週間間隔)をお示しして選んでいただいています。

結果的に同日手術を選ばれる方が最も多く、今では8割くらいの方が同日手術になっています。問題がなければ、さっさと1日で終わったほうがうれしいですものね。

同日手術は一部の眼科だけ

同日手術はどこの眼科でも受けられるわけではありません。「手術翌日にはかなり見えていること」が前提になるので、手術の腕に相当な自信がないと手がけられません。将来的にも同日手術を手がけるのは限られた眼科だけだろうと予想しています。

なお、入院の場合は同日にこだわる意味が薄れますので、同日手術はほとんど行われていません。入院が長引かないように、2日連続で手術したり、中1日くらいで手術するのが普通です。

近視・遠視が強い方は同日を

白内障手術では、強度近視をごく弱い近視にしたり、強度遠視をほぼ正視にしたりすることができます。これは白内障手術の大きなメリットで、術後は生活がすごく快適になります。

この場合、片目だけ手術した直後には不同視と言われる状態になります。不同視は屈折度数の左右差が大きすぎ、メガネもかけられないという状態で不便です。

1週間間隔で手術すると1週間不同視が続いてしまいます。その間、左右がアンバランスで、メガネをかけてもかけなくても見えづらく、不自由です。こういうケースでは積極的に同日か中1日を選ぶことをお勧めしています。左右の度が揃っていたほうが見やすいですから。

手術当日は見えづらい

両眼同日手術の場合、必ず家族や友人等どなたか付き添っていただくようお願いをしています。

手術した眼はその日1日やはり見えづらいです。眼帯はせずサングラスをかけるだけにしており、全然見えないわけではなく、トイレに行くぐらいのことは十分できます。それでも両目とも見えづらければ1人で家まで帰るのは心配です。

どうしても付き添いがいなければ同日手術は避けたほうが無難です。

保険金の給付条件を確認して

生命保険の医療特約や医療保険に加入していると、手術給付金がもらえます。給付条件は約款で定められていて保険会社によって違います。

同日手術では手術給付金を1回分しかもらえず、別々の日にすると2回分もらえることがあるので、注意が必要です。保険会社に事前に確認しておくことをお勧めします。お金は大事ですから。

白内障以外の同日手術

白内障以外で両眼同日手術が行われているのは私の知る限り、レーシック等の近視矯正手術だけだと思います。多忙な方が多く、2回手術のために休むことがしにくいし、手術後比較的短時間で見えるようになりますし、片目だけ手術すると不同視になるので不便という理由です。この理由は白内障の場合と同じですね。

(2022.4)