川本眼科

文字サイズ

小 中 大

川本眼科だより

川本眼科だより 2眼圧あれこれ 2000年4月30日

Q:眼圧が高めだと言われましたが、 眼圧が高いと どういう不都合があるのですか。

Q:眼圧は毎回測らなければなりませんか。

Q:血圧が高いと眼圧が高くなりますか。

眼圧が高いと緑内障になる

眼圧を測るのは、「緑内障」という病気を心配しているのです。

眼圧が高いと、「視神経」がだんだんダメになってしまいます。
視神経は、網膜で見た像を脳に伝える役割を担っています。
視神経は、脳の一部みたいなもので、ダメになると再生しません。
眼圧が高いために、視神経がダメになった状態が緑内障だと考えておけばよいでしょう。緑内障になると、視野が欠け、末期になると視力が落ちて見えづらくなってしまいます。

眼圧の正常値

実は、眼圧単独の数字では正常かどうかの判断はできません。
「体重は何㎏から何㎏までが正常ですか」という質問をされたら答えに困りますよね。それと同じです。

統計的にみると、健康な人の場合、眼圧は、だいたい10から20くらいの間におさまります。単位はmmHg(ミリメートル水銀柱)です。
血圧と同じですね。国際的な取り決めで、圧力を表す単位はPa(パスカル)に統一することになっているのですが、医者も患者も慣れてしまった単位を変えるのは難しいようです。

健康人では10から20までといっても、20なら全く正常で、21なら異常、というものではありません。

22,23という眼圧でも、緑内障の所見が全くない場合があります。これを「高眼圧症」と呼びます。高眼圧症なら治療しなくてよいはずですが、何年かすると緑内障になってくることがあるので、経過観察が必要ですし、場合によっては眼圧を下げる薬を使います。

では、眼圧が18なら大丈夫でしょうか、14ならどうでしょうか?
実は、眼圧が正常でも緑内障の変化をおこすことがあります。これを「正常眼圧緑内障」と言います。眼圧が正常範囲内でも、完全に安心するわけにはいかないのです。視神経や視野の状態をみて判断する必要があるのです。ただ、正常眼圧緑内障でも、眼圧が高いほど進行が速い傾向があります。

眼圧の変動

眼圧は、毎日変わります。1日のうちでもかなり変動します。1日中、2時間おきくらいに眼圧を調べてみると、最も高い時と最も低い時では5くらい差が出ることがあります。

従って、眼圧は繰り返し測定してデータを取っておく必要があります。
いつも眼圧が安定しているのか、それとも変動が大きいのか、一日の中でとくに眼圧が高い時間帯があるのか、繰り返し測定してはじめてわかることがあるのです。

血圧の場合でも変動するのは同じだと思います。最近は家庭用の血圧計をお持ちの方も増え、毎日血圧を測って健康チェックをされている方もいらっしゃるようです。

眼圧には、残念ながら家庭で毎日測るわけにはいきません。
定期的に眼科を受診し、受診のたびに眼圧を測ることをお勧めします。

血圧と眼圧は無関係

本当は、血圧と眼圧の間に微妙な関係はあります。
心拍動と同期して眼圧も脈打っているのは確かで、完全に無関係とは言えません。

ただ、「血圧が高いと眼圧も高くなる」という単純な関係はありません。
血圧が何らかの理由で大幅に上昇したとしても、眼圧はほとんど変動しません。一般の方の理解としては、「血圧と眼圧は無関係である」とお考えいただいて何らさしつかえないと思います。

ステロイドの目薬と眼圧

眼科では、「ステロイドの目薬」をしばしば使います。
結膜炎・虹彩炎・強膜炎・角膜炎など、およそ炎症が関係するときには、必ずステロイドの目薬を使います。最もよく使われる目薬の1つです。
それだけよく効く薬なのです。

しかし、ステロイドの目薬には、「眼圧が上昇する」という副作用があります。
ステロイドには強いもの弱いものいろいろありますが、一般に強いステロイドほど眼圧を上昇させる作用も大きい傾向があります。

ステロイドの目薬を長期間、眼圧も測らずに漫然と使い続けると「ステロイド緑内障」になってしまうことがあります。

こういうことを書くと、必ず「そういう恐い薬は使いたくない」という反応が返ってくるのですが、ステロイドの目薬は、眼科医にとってはふだんからよく使っていて、薬の性質もよくわかっている薬です。経過観察をしながら、十分注意して使えばこんなに重宝なものはありません。

大事なことは、ステロイドを使っているときは、定期的に眼圧を測ることです。たまに、内科の先生が、ステロイドの目薬を出されていることがありますが、無謀だと思います。
ふつう、眼科以外では眼圧の測定はできないので、ステロイド緑内障になってしまってもわからないからです。

日常生活と眼圧

眼圧を上げないために日常生活でどういうことに気をつけたらよいでしょうか。これはとても多い質問です。

私の答えは「ふだん通りの生活で結構です。とくに変える必要はありません」というものです。残念ながら、患者さんの努力で眼圧をコントロールできる余地はほとんどありません。

確かに、「水を1リットルも飲めば眼圧が上昇する」とか「うつぶせを1時間続けると眼圧が上昇する」とかいった事実は知られていて、そのことを根拠に「お茶をあまり飲まないように」「寝るときは仰向けで」といった指導がされることがあるのですが、私は意味がないと考えています。

なぜなら、たとえ水分を多量に摂ってもすぐに尿になって体外に出ていきますし、うつぶせで眼圧が上がってもあくまでも一時的なもので、うつぶせをやめればすぐ元に戻るからです。眼圧は数日・数週間・数ヶ月といった長期にわたって持続的に高いときにはじめて視神経の変化をきたすわけで、短時間の上がり下がりは気にしなくてよいのです。
むしろ、日常生活に不必要な制限を加えることのデメリットのほうが大きいと思うのです。

眼圧を下げる必要があるなら、きちんと薬を使うべきです。
目薬を忘れずにさすとか、きちんと眼科に通って眼圧チェックをすることこそ重要です。

自己管理が重要な病気はたくさんあります。高血圧・高脂血症・糖尿病・・・そういった病気の治療・予防のためにこそ、生活改善の努力をしていただきたいと思います。