院長のつぶやき 医師免許証の偽造 2007年10月10日
新聞報道によると、岐阜県で無資格のニセ眼科医が逮捕されたそうだ。
2001年に岐阜県関市の眼科診療所で非常勤医として働き、2002年関市に
眼科診療所を開設、その後大垣市の病院に勤務し、2005年に北方町で
コンタク ト店隣接の眼科「アイクリニック北方」を開業したという。
驚きあきれるしかない事件だが、「悪い奴が捕まりました。
世の中いろんなことがあるもんですねえ」で済ましてしまっては
ならないと思う。最大の問題は、医師資格の確認が従来きわめて
いい加減で、その辺の事情をよく知った人間なら簡単に「なりすまし」が
可能だったことだ。
医師免許証は賞状や表彰状みたいな代物だ。顔写真はついていないし、
偽造防止のための工夫など何もされていない。町の印刷屋が
その気になれば誰にも見分けがつかないようなニセ免許証を
作ることだって容易だ。
そのうえ、病院に就職する際も、たいていは医師免許証のコピーしか
要求 されない。
原本を見せろと言われることはまずない。
医師免許証は大きくて折れ曲がらないように持ち運ぶのが
大変だというのも理由の1つだ。
しかしコピーなら名前を改竄することも簡単だ。
コピーなら本人に気づかれずに他人がこっそり悪用することも可能だ。
診療所を開設する際も、医師免許証のコピーでよい地域もあった。
ほかにもニセ医者事件があったので、さすがに今は必ず原本と
照合することになっているはずだが、これもそんなにしっかり
確認するわけではない。本物によく似た紙にカラーコピーして
原本だと言えば通ってしまう可能性は高い。
さらに、最近になって医師免許取得者のデータベースができたので、
届け出の際にチェックすればニセ医者を防げるという。
これも実は問題がある。
ニセ医者が医師免許証の名前通りの人間になりすませば、
データベースには確かにそういう名前の医師が存在するので見抜くことが
できない。結局、根本的な解決にはシステムを改変するしかないだろう。
医師免許証のスタイルを変更すればいいのだ。
運転免許証のように顔写真付きにすれば、他人がなりすますことは
できなくなる。
ホログラムのような偽造防止技術を使ったものにすれば、コピー機で
偽造という安易な方法は使 えない。ICチップ埋め込みなんていう技術を
利用することも考えられる。その気になれば簡単に変更できるはずだ。
そして、携帯が容易な大きさにした上で、コピーでなく本物の
医師免許証の提示を求めればよい。コピーが必要なときはコピーを
持ってこさせるのではなく、担当者がその場でコピーを取るべきだ。
医師という重要な身分を証明する最大のよりどころであるはずの
医師免許証なのだから、このくらいのことは当然だと思うのだが。
2007.10.10