川本眼科

文字サイズ

小 中 大

院長のつぶやき

院長のつぶやき 受診されていない方のお問い合わせ 2018年4月26日

時々、電話・メール・郵便等で医療に関するご相談をいただく。

申し訳ないが、原則としてお断りしている。
最大の理由は「診察しないと分からないから」

患者さんのお話だけで判断することにそもそも無理がある。
診察もしないで軽々しい発言をすれば患者さんを間違った方向に導く。

「先生のホームページに書いてある症状にぴったりだ」
何でも自分の病気と同じと感じてしまうのはありがちなことだ。
実際には、症状から病気を絞り込んだ上で「鑑別診断」が必要だ。
複数の考えられる病気のうちどれなのか、追加の検査をして決めていく。

鑑別診断なしでは「もしAなら〇〇、もしBなら××」という仮定の話になる。
ところが患者さんは「もしAなら」の部分を無視しがちだ。
全部自分に当てはまることとして受け取ってしまう可能性が高い。
一度間違った理解をすると、あとで思い込みを解くのは難しい。

テレビやラジオや市民講座などでよくある病気相談の決まり文句は
「主治医の先生に聞いてみて下さい」「主治医の先生とご相談下さい」
結局、実際に診察している先生が一番情報を持っているのだ。
説明不足を補うぐらいはできても、より優れた診断を下すのは無理だ。

---

そうは言っても、やむを得ず対応することもある。
このまま放置すると危ないと感じるときだ。

先日あった電話相談。うちのスタッフが電話を受けた。
(待ち時間2時間などという状況で医師が電話に出ることは不可能)
それも本人ではなくお父様についての相談。
緑内障で3種類の目薬を使っている。目がゴロゴロショボショボして痛い。
川本眼科のホームページに緑内障治療薬の副作用が載っていた。
眼圧は下がっているので、点眼を中止してもよいのではないか。

この相談も、診察しなければ正確な返答はできない。
緑内障の進行具合がわからない。
実際に角膜障害などの副作用が起きているかもわからない。
要するに、電話で答えられるはずがない相談だ。
医学的に正しい答えは「主治医の先生とよくご相談下さい」

だが、このとき私は一歩踏み込んだ対応をした。
夜遅く、ようやく業務が終了してから折り返し電話した。
その上で、点眼を継続することの必要性を強調した。
そして目薬を続けるように勧めた。

診察もしないでここまで言うのは本当は正しくない。
視野に進行が見られず、角膜のキズがひどければ中止もあり得るからだ。

だが、明らかに患者・家族は目薬を中止にしたがっていた。
私に相談してきたのは中止することにお墨付きが欲しかったからだ。
「もし角膜のキズがひどければ中止もあり得る」などと言えば、
仮定の話だということを無視して中止すると予想できた。

さらに、3種類併用という点から、かなり進行した緑内障と判断した。
少しくらい角膜障害があっても目薬を続けざるを得ない可能性が高い。
角膜障害については少し対応が遅れても主治医が対応する。
それよりも今は目薬を続けるよう説得したほうが良い、と考えた。
勝手に目薬を止めて、さらに通院も中断するようなことがあれば、
手遅れになりかねない。失明もありうる。

科学的、論理的には正しくなくても、実際の臨床上は
1人1人に合わせた柔軟な対応が求められることもあるのだ。

---

ちなみに、また電話相談を受けて欲しいと依頼されたが、
「今回は特別で、次の相談はご勘弁下さい」とお断りした。

船頭が2人いては船は進まない。
後は実際にかかっている主治医に任せたほうが良い。

緊急対応が済めば、電話だけ、メールだけ、手紙だけ、
の危なっかしい遠隔診療はお勧めできない。

(2018. 4.26)

院長のつぶやき

最近の投稿
2020年8月2日
最近の川本眼科
2020年6月8日
コロナの日常
2019年11月4日
名古屋市医師会急病センター
2019年11月1日
川本眼科25周年
2019年2月25日
リニア新幹線
2019年2月3日
北側への増築工事
2018年4月26日
受診されていない方のお問い合わせ
2018年4月16日
身体障害認定基準の改正
2018年4月13日
スマホの買い替え
2018年2月25日
入試出題ミス救済処置への疑問