川本眼科

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院長のつぶやき

院長のつぶやき まぶたが腫れる食物アレルギー 2015年8月23日

アルコンのサマーセミナーに参加した。
島根大学皮膚科の千貫(ちぬき)祐子先生の話が面白かった。

「茶のしずく石鹸」で小麦アレルギーが起きたというニュース。
ひと頃ずいぶん話題になった。
千貫先生はこのアレルギーを解明した人。
にこやかに、でもとても明晰な語り口の講演。

講演は医師向けなので基礎的な話は常識として触れない。
そこで、一般向けに基礎知識を補いながら講演内容を紹介する。

アレルギーは異物が体内に侵入することで「感作(かんさ)」される。
主にタンパク質が原因となる。
侵入から感作の成立まで10日くらいかかる。
いったん感作されると、次に同じものが侵入した際に過剰な反応を起こす。
これがアレルギー反応である。

食事の場合は普通タンパク質を摂取しても感作されない。
動物の肉を食べても普通アレルギーは起こさない。
小麦にも米にもタンパク質は含まれる。
でも、小麦でできたパンやうどんを食べてもアレルギーは起こさない。

ところが、タンパク質が皮膚から吸収されると感作されやすい。
まぶたの皮膚は薄くて柔だから異物が侵入しやすい。
手の皮膚では感作されにくいが、まぶたでは感作されやすいのだ。

茶のしずく石鹸には小麦加水分解産物が含まれていた。
これがまぶたの皮膚から吸収されて感作を起こした。
その結果、小麦による食物アレルギーを起こすようになってしまった。

実は食物由来の成分が含まれる石鹸、シャンプー、化粧品は多い。
今回と同じような問題が起こっている可能性は高いという。
ただ、感作の頻度は高くないので、気づかれていないと考えられる。
茶のしずく石鹸は大ヒットだったので、たまたま問題化したらしい。
そもそも使っていても発症する確率は0.1%に満たない。

あまり数多くのシャンプーや化粧品を次から次に試していると、
こういうアレルギーを発症する不運に見舞われるかも知れない。
自分の定番を決めて浮気しないほうが安全だ。

皮膚で感作された場合、食物を消化管を通して吸収した場合でも、
最初に感作した皮膚にアレルギー反応が強く出る。
すなわち、感作されやすいまぶたが腫れることが多い。

まぶたが腫れた場合、食物アレルギーの可能性もあるというお話。

さらに、花粉で感作されることで食物アレルギーを起こすこともあるという。
花粉にも食物にも共通のタンパク質が含まれている場合がある。
完全に同一でなくても類似性が高ければ起こりうる。

ハンノキ/シラカバの花粉症→リンゴ、桃、梨、サクランボ等のアレルギー
ヨモギの花粉症→ニンジン、メロン、リンゴ、キウイ等のアレルギー
ブタクサの花粉症→バナナ、スイカ、キュウリ等のアレルギー
カモガヤの花粉症→メロン、スイカ、トマトのアレルギー
イネの花粉症→メロン、スイカ、トマト、オレンジのアレルギー

眼科医の私は知らなかった。
眼瞼浮腫が食物アレルギーで起こる可能性を心に留めておこう。

(2015. 8.23)

院長のつぶやき

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