院長のつぶやき バリアフリーは今後コスト重視へ 2017年6月28日
バニラエアに下半身不随の男性が搭乗しようとした。
同乗者が車いすを担ごうとしたら、規則で認めないと制止された。
結局男性は、タラップを自力で這い上がって搭乗した。
このニュースに、世の中の意見は真っ二つに分かれている。
バニラエアを非難する声と、障害男性をクレーマー扱いする声と。
調べてみると、この男性は一般の障害者とは言えないことが分かる。
「バリアフリー研究所」の代表で、世界各地のバリアフリーを調べている。
もともと航空会社との軋轢を覚悟し、問題提起を意図している人だ。
航空会社を「血も涙もない」と非難するのは問題の本質を見誤っている。
この男性の考え方は、日本の多数意見とはかなり異なる。
日本のバリアフリーは高コストに過ぎ、過剰だというのだ。
障害者を特別視しすぎていると彼は言う。
それよりも「設備がないから乗せない」はダメだと主張する。
専用の設備は要らないとも言う。
完璧を要求しすぎるとかえって障害者が利用できなくなる、と。
私は彼の考え方は正しいし、将来的にはその道しかないとも思う。
同乗者が車いすを担いで乗るのを阻止したのが事の発端らしい。
何か事故があったとき責任が取れないということだろう。
それなら「自分で責任を取り、航空会社に賠償を求めない」という
一筆をかいてもらえばよい話。
這って昇るのも、屈辱的だとかそういう捉え方をする必要はない。
本人が納得しているなら、問題視しなくてよいだろう。
下半身不随ならば、這うことは「歩く」と同じ移動目的の行為だ。
正常人側の色眼鏡で変に感情移入する必要はないのではないか。
バリアフリーは今後できるだけ低コストにしていく必要がある。
エレベータや階段昇降機やホーム柵は確かに有用な設備だ。
でも、それには莫大なお金がかかる。かかりすぎる。
全国津々浦々ありとあらゆる場所に設置するのはもともと無理な話。
赤字になれば、経済に余裕がなくなれば、たちまち頓挫する。
障害者が困っていたら、担いだりおんぶしたりして対応する。
それはお金がかけずに今すぐにでも可能な方法だ。
階段を昇降できる車いすを施設内に1台置いて、移動させて使う。
すべての階段に改修工事を行うより、ずっと現実的だ。
今後作るものにバリアフリーを配慮するのは当然。
でも、既存の施設のバリアフリーは知恵や工夫や親切心で乗り切る。
これが正解だと思う。
(2017. 6.28)