院長のつぶやき 薬のネット販売に制限 2009年6月1日
6月1日からネット販売規制が始まった。
ネットで薬を販売していた業者は大反対だ。
楽天の三木谷社長は楽天の会員全員に規制反対のメールを送りつけた。
厚生労働省のパブリックコメントに反対の書き込みを依頼する内容。
そういう扇動をして、それで反対が多くても「国民の支持」とは言えまい。
業者が反対するのはある意味当然だと思う。
収入が減るからで、別に本気で国民の健康を心配しているわけではない。
今回はすべての薬のネット販売を禁止したわけではない。
薬を健康リスクの点から1類・2類・3類の3種類に分けた。
そしてリスクによって取り扱いを変えた。妥当な方法だと思う。
比較的安全なビタミン剤や整腸剤などは3類でネット販売できる。
1類はリスクが高いものでH2ブロッカーや副腎皮質ホルモンなど。
重大な副作用を持つものもある。頻度は低くてもおきたら大変だ。
これをネット販売禁止にしたのはまあ当然。
薬局で薬剤師が説明して売るのだって心配なくらい。
自分勝手に通常量の何倍ものむ人だって出てくる。
予想もしないような使い方をする人もいる。
ネットではチェックと言ってもクリックするだけ。
いろいろ説明が出てきてもたいていの人は読んじゃいない。
いくつも関門を設けてもほとんど意味はない。クリックの回数が増えるだけ。
確認画面で「読んだ」をクリックする仕組みにしたら安全? 強弁に過ぎる。
中高生がネットで「18歳以上ですか」と何度質問されても無視するのと
同じ。
匿名でなく実際に顔を出して買う場合にはそう無茶なことはできない。
同じ効能の薬を大量に集めるなんてことは実際の薬局では難しい。
でもネットなら簡単だ。数量が制限されても別人になりすますことだって
できる。
三木谷社長の言う「対面販売よりネットのほうが安全」は詭弁だと思う。
1類をネット販売可能にして健康被害が出たら誰が責任を取るのだろう。
一部の人が主張するように「自己責任」というわけにはいくまい。
「副作用が出ても私は文句を言いません」をクリックさせておけばいい?
それでも責任は問われると思うよ。
検討する余地があるのは2類の薬だろう。
風邪薬・胃腸薬・漢方薬など。副作用は少ない。でも皆無ではない。
通常量では問題なくても一度に大量に使えば問題はおこる。
私は規制やむなしと考えるが、議論の余地はある。
あるいは分類が妥当かどうかの議論は可能だ。
でも何でもかんでも一律にネット販売を認めろというのはおかしい。
「世界の趨勢は薬のネット販売を認めている」という主張も本当?
私の知る限り、たいていの国で日本より薬の販売規制は
厳しいのだけれど。
(2009.6.1)