院長のつぶやき あご受けの紙 2005年7月18日
眼科の検査機器は、たいてい、
患者さんにあごを乗せていただくようになっている。
このあごのところには、紙がついている。
なぜ、こんな紙がついているのかご存じだろうか。
「前の人が肌をくっつけたところに触るのを嫌がる人が多いから」というのは
誰しも考えるようだが、実はそういう目的ではないのだ。
それが証拠に、あご同様におでこもぴったりくっつけるのだが、こちらには
紙なんかついていない。
そもそも、ドアの取っ手とか、手すりとか、他人が肌を触れた所に
さわることはよくあることだ。そこを紙で覆って、いちいち取り替える
なんてことは誰もしない。
そもそも、手に比べればあごはずっと清潔だと思う。手でさわる箇所は
気にしないで、あごだけ気にするというのは、どう考えても不合理だ。
欧米ではあご紙がついていないが、日本人が潔癖症だから日本の
メーカーがつけた、という説を聞いたことがある。
なるほど、日本では「便座シート」なるものが普及しているが、本家本元の
欧米のトイレにはふつう便座シートなんてついていない。肌の接触に対して
敏感な日本の国民性から来ていると考えられなくもない。
しかし、ドイツのメーカーであるツァイスの製品だってこの
あご紙がついている。
この説もどうも本当か疑わしい。
正解は、あごを乗せたまま目薬をさすことが結構あって、目薬がたれて
汚れること が多いからだ。簡単にきれいにできるように紙を敷いたのだ。
そんなわけで、私は、汚れなければあご紙を交換したりはしない。
以前薄い紙を使っていた時は、1回でくしゃくしゃになってしまうので毎回
交換していたが、今は厚手の丈夫な紙を使用しているので、
ふつうはそのまま使う。
ただ、患者さんによってはわざわざ自分であご紙を破って新しくする方も
いらっしゃる。
どうも、毎回替えるべきものを医師が忘れていると誤解されているようだ。
どうぞ誤解なきよう。