川本眼科

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院長のつぶやき

院長のつぶやきあまりにも乱暴な医師逮捕事件

福島の県立病院で、帝王切開時の出血多量で母体死亡事故がおきた。
驚いたことに、そのために産婦人科の加藤克彦医師が
逮捕されてしまった。

なくなられた方はまことにお気の毒だ。遺族の心情も理解できる。 遺族が
ほこさきを医師に向け、責任を追及するのはやむを得ないことだろう。
ただ、だからといって、そうそう簡単に警察が医師を逮捕してしまって
いいのだろうか。刑事事件と民事事件ではその重さがまるで異なる。

もちろん、初歩的な注意義務を怠ったとか、医学常識からしてとんでもない
ミスをしたのなら、逮捕されてもしかたがないかも知れない。
しかし、今まで伝え聞いた事実や病院が出した報告書から判断する限り、
加藤医師にミスらしいミスはない。加藤医師は、癒着胎盤というきわめて
まれな事態に遭遇し、必死で大量出血に立ち向かった。しかし、この病院は
産婦人科医師が1人しかいなくてマンパワーも不足していたし、陸の孤島のような交通不便な地にあり、緊急で血液を注文しても届くのに1時間も
かかるため、急激な出血には間に合わなかった。

ミス、というなら、地域の基幹病院たる県立病院に産婦人科医を1人しか
配置していなかったことにあると思うが、これはもちろん加藤医師の
責任ではない。福島県や国の医療政策の問題だと言える。
休暇も睡眠もまともにとれない産婦人科1人勤務の過重な負担に耐えて、
結果が悪ければ1人で責任を取らされるなんて、とんでもない話だ。

血液を十分に準備していなかったことも加藤医師の過失とされているが、
通常帝王切開には十分と思われる1000ml(相当)は準備していた。
これ以上に準備すべきだったろうか? しかし、血液は不足している。
血液を準備して、結局使わなければ、無駄になる。他の必要な施設が
血液を使えなくなるかも知れないし、一定時間が経過した血液は
廃棄しなければならない。血液は大切で、むしろ余分に血液を
準備することはしないよう要請されているのが実情だ。
しかも、最終的に2500ml(相当)を輸血しても救命できていないから、
仮に2倍の量を用意してあったとしても結果は変わらなかったろう。
強いて言えば、緊急事態の時に血液を要請しても1時間も待たなければ
ならない供給体制の不備が問題だろうが、これも加藤医師の
責任ではない。

警察の発表では、「癒着胎盤の経験がないのに」とあるがこれもおかしい。
癒着胎盤はきわめてまれで、産婦人科医師でも一生遭遇しないこともある。
まれな疾患は経験がないのがむしろ当然だ。
しかも、癒着胎盤というのは、胎盤を剥がそうとしてはじめてわかるもので、事前に予想することは困難だ。

癒着胎盤と判断した時点で早めに子宮摘出に踏み切れば母体の生命を
救えたのではないかという意見もある。しかし、結果論に過ぎないし、
医師は子宮を温存してほしいと患者さん側からの要請を受けていたから、
判断の遅れを責めることは酷に過ぎると思う。

結局、発表された事実から判断する限り、どう考えても刑事責任を問われて
逮捕されてしまうような事件ではないのだ。
福島県警が暴走してしまったとしか思えない。

加藤医師は、つまるところ、母体死亡という大変な事態に対する結果責任を
取らされた、ということだろう。これはとんでもないことで、患者さんが
なくなられたら医師はみんな逮捕されなければならないのだろうか?

「目には目を」の言葉で有名なハムラビ法典には、「白内障手術に失敗して
患者が失明したら、医者は両手を切り落とされる」とあるそうだ。
現代の文明国ではもちろんそんなことはありえない。
ハムラビ法典の時代に戻れと言うのか?
故意や明白な重過失がなければ、誠意を持って医療に取り組んでいる
医師を、医療行為の結果が悪かったから逮捕してしまうなんて、
あってはならないことだ。

この事件は多くの医師を震撼させた。
怒りとともに、「これで逮捕されるなら、1人で産婦人科医療はできない。
1人医師の病院から医師は全員引き上げてしまえ」という主張に賛成する
医師が増えている。
もちろん、そんなことになったら、地域の産婦人科医療は崩壊し、
立ちゆかなくなることは目に見えているのだが・・・

この事件の後遺症が心配だ。
おそらく、医師はみな、ハイリスクの患者さんを避けようとする。
保身医療が横行する。その結果、地方の医療状況は悪化し、
遠い都会に出なければ治療が受けられなくなる。
一方で、設備の整った病院に患者さんが集中し、パンク状態になることも
予想される。

福島県警は、正義を執行しているつもりなのだろう。
そして、自分たちがしたことの悪影響などには想像力が及ばないのだろう。

この国の医療はどうなっていくのだろう。暗澹たる思いを禁じ得ない。

院長のつぶやき後継者?

息子が灘中に合格した。
親としては、素直にうれしい。

灘中の医学部合格率は群を抜いている。このまましっかり勉強を
続けていってくれれば、医学部へ進み、医者になって、将来川本眼科を
継いでくれる可能性はかなり高い・・・と夢はふくらむ。
子供が後を継いでくれるというのは、開業医としてはある意味当然の
希望である。

小さいながらも苦労して築いた自分の城という意識があるし、
ささやかではあるが自分のやってきたことに誇りも持っている。
歳をとったとき、後継者がいなくて閉院せざるを得ないのは
寂しい限りだろう。幸い、今のところ、息子は親の私をそれなりに
尊敬してくれているようだ。長年の洗脳が功を奏したのか、一応、
川本眼科を継ぐつもりもあるようだ。
うんうん、いいぞ。

もっとも、人生、一寸先は闇である。親元を離れて下宿する息子が、
誰かにつまらないことを吹き込まれて、医者になるのはやめた、
などと言いだすかも知れない。首尾よく医学部に入っても、
今度は眼科なんてつまらない、心臓外科医になる、などと言いだすかも
知れない。 さらにそこをクリアして眼科に進んでくれたとしても、今度は、
ひょっとして出来が良すぎて、アメリカに渡ってそこで研究する、
などと言いだすかも知れない。
小学校の間は、反抗はしても、最後は親の言うことを聞いた。
しかし、人間としてだんだん自立してくると、親のコントロールは
効かなくなってくる。それはしかたのないことだし、むしろ喜ばなければ
ならないのだろうが、どうしても複雑な心境になってしまう。

だから、親としては、うれしいそばから、もういろいろ取り越し苦労を
始めてしまう。心配のタネは尽きないのだ。

院長のつぶやき専門外の薬

ときどき、専門外の病気に対して、薬を出してほしいと頼まれることがある。
例えば、かぜぐすりがほしい、頭痛薬がほしい、湿布がほしい・・・

厳密に考えれば、日常ありふれた病気のように見えても、
実はなにか大きな病気が隠れていることもある。
だから、一見大したことがないようでも、きちんと専門医にかかったほうが
間違いは少ない。そうはいっても、大半が数日で軽快するような病気なら、
あんまり杓子定規に対応するのも不親切というものだろう。

患者さんの気持ちも、わからなくはない。誰だって待たされるのは
嫌に決まっている。川本眼科でも、1時間待ちくらいのことはざらにある。
よそのクリニックにかかって、同じように待たされればうんざりするのも当然だ。
それに、2つの科にかかれば初診料・再診料だって倍かかる。

それほど問題がないと判断すれば、「調子が悪ければ早めに
専門のところにかかって下さい」と指示をしたうえで、
薬を処方することが多い。これも患者サービスとして必要なことだと思う。

ただし、どんな薬でもお出しするわけではない。私なりに基準を決めて、
それから外れるものはお断りしている。
たいていの患者さんは処方できない理由をお話しすれば
わかっていただけるのだが、時にすごくねばられて困ることがある。

患者さんは、内科で前に出た薬と同じならかまわないだろう、
と考えて同じ薬の処方を要求する。
だが、ステロイドのような副作用の強い薬、血糖を下げる
薬のように量の加減が難しい薬は、安易には処方できない。
病状によって増量したり減量したりすることが必要になるし、
時には薬の種類を変更することも必要になる。
また、最初にたてた治療計画がどうなっているのかも
考慮しなければならない。前回と同じならよいとは必ずしも言えない。
主治医でもないのに勝手に薬を出せば、主治医の治療計画、
検査計画を邪魔することになりかねない。
それに、薬だけのんでいればよいわけではなく、時々は検査だって必要だ。

患者さんからは、睡眠薬を要求されることもある。これも、本来眼科で
出す薬ではないだろう。それでも、ほかにはどこの科にも
かかっていないのなら、対応せざるを得ないこともある。
この場合、よその医療機関から睡眠薬をもらっている時は
処方をお断りしている。やはり依存の問題があって、
どうしてもだんだん量が増えがちだ。
複数の医療機関で処方していると、量の歯止めがきかなくなる。
1つの医療機関が責任をもって管理をするべきだと考える。

そもそも餅は餅屋で、内科の問題は内科、整形外科の問題は
整形外科に依頼するのが筋だろう。

いくら頼まれてもうんとは言えない場合があることは
理解していただきたいと思う。

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