院長のつぶやき後継者?
息子が灘中に合格した。
親としては、素直にうれしい。
灘中の医学部合格率は群を抜いている。このまましっかり勉強を
続けていってくれれば、医学部へ進み、医者になって、将来川本眼科を
継いでくれる可能性はかなり高い・・・と夢はふくらむ。
子供が後を継いでくれるというのは、開業医としてはある意味当然の
希望である。
小さいながらも苦労して築いた自分の城という意識があるし、
ささやかではあるが自分のやってきたことに誇りも持っている。
歳をとったとき、後継者がいなくて閉院せざるを得ないのは
寂しい限りだろう。幸い、今のところ、息子は親の私をそれなりに
尊敬してくれているようだ。長年の洗脳が功を奏したのか、一応、
川本眼科を継ぐつもりもあるようだ。
うんうん、いいぞ。
もっとも、人生、一寸先は闇である。親元を離れて下宿する息子が、
誰かにつまらないことを吹き込まれて、医者になるのはやめた、
などと言いだすかも知れない。首尾よく医学部に入っても、
今度は眼科なんてつまらない、心臓外科医になる、などと言いだすかも
知れない。 さらにそこをクリアして眼科に進んでくれたとしても、今度は、
ひょっとして出来が良すぎて、アメリカに渡ってそこで研究する、
などと言いだすかも知れない。
小学校の間は、反抗はしても、最後は親の言うことを聞いた。
しかし、人間としてだんだん自立してくると、親のコントロールは
効かなくなってくる。それはしかたのないことだし、むしろ喜ばなければ
ならないのだろうが、どうしても複雑な心境になってしまう。
だから、親としては、うれしいそばから、もういろいろ取り越し苦労を
始めてしまう。心配のタネは尽きないのだ。
院長のつぶやき専門外の薬
ときどき、専門外の病気に対して、薬を出してほしいと頼まれることがある。
例えば、かぜぐすりがほしい、頭痛薬がほしい、湿布がほしい・・・
厳密に考えれば、日常ありふれた病気のように見えても、
実はなにか大きな病気が隠れていることもある。
だから、一見大したことがないようでも、きちんと専門医にかかったほうが
間違いは少ない。そうはいっても、大半が数日で軽快するような病気なら、
あんまり杓子定規に対応するのも不親切というものだろう。
患者さんの気持ちも、わからなくはない。誰だって待たされるのは
嫌に決まっている。川本眼科でも、1時間待ちくらいのことはざらにある。
よそのクリニックにかかって、同じように待たされればうんざりするのも当然だ。
それに、2つの科にかかれば初診料・再診料だって倍かかる。
それほど問題がないと判断すれば、「調子が悪ければ早めに
専門のところにかかって下さい」と指示をしたうえで、
薬を処方することが多い。これも患者サービスとして必要なことだと思う。
ただし、どんな薬でもお出しするわけではない。私なりに基準を決めて、
それから外れるものはお断りしている。
たいていの患者さんは処方できない理由をお話しすれば
わかっていただけるのだが、時にすごくねばられて困ることがある。
患者さんは、内科で前に出た薬と同じならかまわないだろう、
と考えて同じ薬の処方を要求する。
だが、ステロイドのような副作用の強い薬、血糖を下げる
薬のように量の加減が難しい薬は、安易には処方できない。
病状によって増量したり減量したりすることが必要になるし、
時には薬の種類を変更することも必要になる。
また、最初にたてた治療計画がどうなっているのかも
考慮しなければならない。前回と同じならよいとは必ずしも言えない。
主治医でもないのに勝手に薬を出せば、主治医の治療計画、
検査計画を邪魔することになりかねない。
それに、薬だけのんでいればよいわけではなく、時々は検査だって必要だ。
患者さんからは、睡眠薬を要求されることもある。これも、本来眼科で
出す薬ではないだろう。それでも、ほかにはどこの科にも
かかっていないのなら、対応せざるを得ないこともある。
この場合、よその医療機関から睡眠薬をもらっている時は
処方をお断りしている。やはり依存の問題があって、
どうしてもだんだん量が増えがちだ。
複数の医療機関で処方していると、量の歯止めがきかなくなる。
1つの医療機関が責任をもって管理をするべきだと考える。
そもそも餅は餅屋で、内科の問題は内科、整形外科の問題は
整形外科に依頼するのが筋だろう。
いくら頼まれてもうんとは言えない場合があることは
理解していただきたいと思う。