川本眼科

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院長のつぶやき

院長のつぶやきトイレ

川本眼科の待合室にあるトイレは身障者対応になっている。
ドアも引き戸になっているし、手すりもつけた。
赤ちゃんのおしめ替えもできるようにしてある。
そして、車イスで中に入り、中で転回可能な広さを確保した。
洗面台の下方に空間を設け、車イスでも手が洗えるようにした。
川本眼科の入り口には段差がない。土足で入れる。
医療機関の責務としてハンディがある方への配慮を心がけた。

一方で、失ったものもある。
身障者トイレと別に普通のトイレを作ることは無理だった。
なんとなくだだっ広い空間で落ち着かないという意見も聞く。
男女別にもできなかった。女性は、男性用小便器が気になるようだ。

最も重大な問題は、トイレが1つでは足りないようなのだ。
患者さんの数が増えるにつれ、この問題は深刻になってきた。

車イスの方が受診されることはそう多くない。
現実問題として、普通のトイレのほうが便利だったのかも知れない。
それでも、多くの身障者がトイレ問題のために外出を控えているという
日本の現状を知っているから、身障者対応のトイレは必須だった。
かと言って、普通のトイレの増設も難しい。ただでさえスペースは足りない。
隣の土地でも手に入れば話は別だが・・

たかがトイレ。されどトイレ。
なかなか良い解決策が見つからなくて、正直なところ困っている。

院長のつぶやきジダンの頭突き

ワールドカップ・ドイツ大会が終わった。
決勝で、フランスのジダンが相手選手を頭突きして退場させられた。
MVPに輝いた選手の愚行として非難されている。
一般に日本では、暴力をふるったほうが絶対的に悪いとされる。
だが、私の見方は異なる。

確かに暴力行為はよくない。だが、言葉による暴力というものもある。
イタリアのマテラッツィはジダンを侮辱・挑発したようだ。
しかし、そのことには何のおとがめもない。
ジダンは退場させられて、フランスは負けた。既に罰は受けている。
マテラッツィはフランスの中心選手を挑発して、退場に追い込んだ。
そのことによって勝ち得た優勝には道義的に疑問符がつく。
優勝を素直に賞賛できないのは私だけだろうか?

それぞれの国は自国選手を擁護している。これはしかたがない。
これほど衆人環視の中でおこったできごとでも見方は驚くほど異なる。

マスコミが流す一面的な物の見方には、常に懐疑的に接する必要がある。
そうでないと、だまされる。

<追記>
この文章は、事件がおこった翌日に書いた。
私が読んだマスコミの論調は完全にジダン非難一色だった。
しかし、私と同じことを考えた人は多かったらしく、その後の記事は
ジダンに同情的なものが多くなっている。

院長のつぶやきチカチカ、チバチバ、ペチャペチャ

日本語には擬声語、擬態語が多い。
ピカピカとかゲラゲラとかワンワンとかザーザーとか、とにかくたくさんある。
擬声語、擬態語は日本語の表現を豊かにしているし、しかも微妙に表現を
工夫して細かな違いを表すこともできる。
確かに便利なのだが、反面、あいまいになりやすいという欠点もある。

診察のとき自覚症状を説明するにも、こういう言葉は多用される。
「目がゴロゴロする」と言えば、ふつうは目の中に何かゴミでも入った
ような感覚があることを表現している。専門用語では「異物感」だ。
実際にはゴミはなくて角膜のキズだけのことが多いが、
症状を一言で言い表すことができて便利この上ない。

だが、1つの擬態語がいくつか違った意味に解釈できることもある。
例えば、「チカチカ」という言葉は、とがったもので刺されたような
感覚を表現することもあるし、光が見えている状態を表現することもある。
患者さんと医師が、お互いが別のことを想像して誤解を生むことが
あるから気をつけなければならない。
できるだけ、「チクチク」とか「ピカピカ」とか言い換えたほうが
間違いは少ないだろう。
もっとも言葉にこだわる方もいらっしゃって、
「いや、チクチクではなくチカチカなんです」と言われることもある。
確かに、微妙に違うのはわかる。だが、小説を書くのと違い、
診療上は言葉の違いにこだわってもあまり意味はなさそうだ。

「モヤモヤ」も難しい。かすんでぼやける状態を表現していることが多いが、
いわく言い難いような目の違和感をモヤモヤと表現する方もいらっしゃる。
頭がぼーっとしてはっきりしないことを表現していることもある。
質問してそのあたりを明確にしようとするのだが、患者さんにしてみると
もともと微妙な感覚なので別の言葉に直すのが難しいこともある。
「モヤモヤは、要するにモヤモヤなんです」などと言われて困ることもある。

「チバチバ」「シバシバ」というのもある。
とくに「チバチバ」は私が千葉県の旭中央病院にいたときに初めて
聞いた表現で、最初は千葉県の方言かと思った。実際には、
かなり広い地域で使われているようだ。
患者さんにとっては便利な表現で、目のあたりの違和感・痛み・
かゆみなどの自覚症状をすべてこの一語で表す。 しかし、あまりに
広い範囲をカバーする言葉なので、どういうことを訴えているのか
把握しにくく、厄介だ。
「目の調子が悪いんです」と言っているのと大して変わらない。
結局、具体的に細かい症状を聞き出す必要がある。

自分自身もいろいろな意味に取れる曖昧な言葉を使っていないか、
自戒したいと思う。

カルテに書くとき、「ゴロゴロ」を「異物感あり」と書いてしまう医師も
多いようだが、私は、患者さんの言葉は、なるべく患者さんが表現した
通りに書くことにしている。医師が無理に解釈することで、細かい
ニュアンスが伝わらなくなることを恐れるからだ。
同じ理由で、私はカルテを日本語で書く。英語やドイツ語の実力が
ないこともあるが、やはり日本語で表現したことを英語に翻訳して
記載するのは無理があると感じるからだ。
「朝はねちょねちょしていて、昼くらいになるとぺちゃぺちゃするんです」を
どうやって翻訳したらいいのか、私にはわからない。

院長のつぶやきコンタクト診療所

コンタクトの量販店には必ず隣接して眼科診療所がある。
ふつう、一般の眼科診療はしない。コンタクトの処方だけだ。
こういう眼科を俗に「コンタクト診療所」という。

コンタクト診療所は、コンタクトを買いたいユーザーにとっては
便利な存在だ。一般の眼科ほど混雑していないし、交通の便が
よいところにある。もともと眼科医でない医師(内科医など)が
診ていたりすることもあるが、それでも一定の存在意義はある。

数年前から、このコンタクト診療所が健康保険を食い物にしているとして
問題になっている。コンタクトの安売りが激化するにつれ、メーカーが
コンタクト販売店に納入する価格より安く売り、その分を診療費で
補填して儲けるというやり方がまかり通っているのだ。
しかも、だんだんそのやり方がえげつなく、あこぎになっている。

例えば、あるコンタクト販売店は使い捨てを1ヶ月分しか売らない。
そして隣接のコンタクト診療所で毎月定期検診をして保険診療で稼ぐ。
自己負担が3割としても7割は健康保険で支払われる。
コンタクトは原価割れで激安だから、ユーザーは保険の自己負担で
2千円くらい払ってもトータルでみれば安い。コンタクト診療所は
毎回初診扱いにし、約7千円請求する。販売店の赤字はそのお金で
埋めるわけだ。

コンタクト診療所がついに総額で2千億円もの巨額な請求をするようになり、
眼科の診療報酬全体の2~3割にまで達するに及んで、さすがに大問題となった。

対策が検討され、2006年4月の診療報酬改正で、コンタクト診療所の
過大請求を排除するような改正が行われた。この改正は一般眼科にも
影響が及ぶような内容だったため、川本眼科もだいぶ振り回された。

少なくとも定期検診は自費になるのかと思っていたが、軌道修正が行われ、
ほぼすべての定期検診が保険診療となった。
通常の診療への影響が少なくなるように、「疑義解釈」という名の変更も
行われた。制度を改正してから1ヶ月以上も経ってからの変更は
遅すぎると思うが、しかたがない。

川本眼科では、コンタクト診療を自費化したり撤回したりになってしまい、
結果的に患者さんにご迷惑をおかけしたことをお詫びする。

これだけ混乱を招いたのだから、本来の目的である
「コンタクト診療所からの診療報酬請求の削減」が実効あるものに
なってほしいものだ。
なんでも1千億円削減が目標だとか。
その分を本来の眼科診療のために使ってほしいと切に願う。

院長のつぶやき混合診療の二重基準

混合診療というのは、保険診療と自費診療を一緒に行うことだ。
混合診療は禁止されていることになっている。一連の診療行為で
一部でも自費診療の部分があれば、全部を自費にしなければ
ならないとされている。

ところが、混合診療禁止には、実ははっきりした明文規定がない。
何が混合診療で、何が混合診療でないかもはっきりしない。
かなり恣意的に運用されていて、困ることが多い。

例えば、歯科は完全に混合診療だと言える。虫歯の治療で途中から
自費になることはよくあることだ。しかし、これも建前上は混合診療では
ないのだそうだ。産科でも、正常分娩は自費、異常分娩は保険と
決められているので、順調 そうなお産でも途中から問題がおこって
帝王切開になったりすれば保険が使えることになる。
私はこれも妊娠したときからの「一連の診療行為」だと思うのだが、
混合診療ではないのだそうだ。それに、診断書を書いた時の文書料は
自費だが、これも混合診療ではないとされている。
診断書も診療行為の一部だと思うのだが。
「特定療養費制度」というものもある。差額ベッド代とか高度先進医療とか、
紹介状のない初診料とか、医薬品の適応外投与などで特に認められた
場合、保険診療でも別途自費を徴収できることになっている。
これも実質は混合診療だと言える。

眼科でも、一昔前は、保険で行う白内障手術なのに眼内レンズを自費で
購入していただいていた。これも本当は混合診療だろう。
この4月には、コンタクトの定期検査が自費になった。
初診時や自覚症状がある時は保険が使える。コンタクト診療全体が
「一連の診療行為」だと思うのだが、混合診療ではないのだそうだ。

カルテも、自費と保険では別にしなければならないという指導もされていて、
ややこしいことこの上ない。両方のカルテを読まないと全体の経過が
つかめないし、時間の順序がわかりにくくてしかたがない。

要するに、すでに実質的には混合診療が相当導入されている。
それらは別に違法ではない。それなのに、一連ではなさそうな
診療行為でも、保険診療と自費診療を同日に行うことはまかりならん、
などというやたら厳しい指導がされたりする。
二重基準(ダブル・スタンダード)ではないだろうか。

明文化されていないために、役人やら学会・医会のお偉いさんが勝手に
解釈して恣意的に運用することがまかり通っているのだ。
厳密に法的根拠を突き詰めていくと、何が許され、何が許されないのか
明確ではない。それなのに、変に目立ったりにらまれたりすると
罰せられるかも知れない、というわけだ。
はたしてこれで法治国家と言えるだろうか?

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