川本眼科

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院長のつぶやき

院長のつぶやきアドヒアランスなる言葉の危うさ

医療の世界でアドヒアランス(adherence)という言葉が大はやりだ。猫も杓子も使う。

「患者が積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を受けること」

だそうだ。確かに理念としては正しい。結構なことで誰も文句は言えない。

ただ、患者さんを患者様と呼んだり、医療を客商売と規定するようなおもねりを感ずる。

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元々はコンプライアンス(compliance)と呼んでいた。「法令順守」などと訳す。

要するに、医師の指示に患者がどの程度従っているか、を意味する。

薬を指示通りのんでいなければ「服薬コンプライアンスが悪い」

通院をきちんとしなければ「通院コンプライアンスが悪い」

この言葉が上から目線だというので名前を変えてみた、というわけだ。

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けれども、言葉だけいじっても内実を伴わなければ何にもならない。

トイレを「化粧室」と呼んでも実質は何も変わっていないのと同じ。

意気込んで作り出した言葉の内容が旧態依然という例は枚挙に暇がない。

リストラは本来「事業の再構築」の意味だが今は「首切り」と同義になった。

メタボは「高血糖・高血圧・高脂血症・内臓脂肪のリスク重積状態」の意味だった。

言葉の発案者はまさか「肥満」「デブ」の別語になるとは思わなかったろう。

アドヒアランスも結局コンプライアンスという言葉を置き換えただけに終わっている。

中身は全く同じと断言して差しつかえなさそうだ。

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こういう言葉を使うことで妙な誤解がうまれないかも心配だ。

インターネットで見つけてきた真偽不明の情報にやたらこだわる患者。

医師が最善と考える薬を拒否して特殊な薬やサプリメントを使えと要求する患者。

こういう場合、患者の言うなりになることは患者に不利益をもたらす。

医師が断固とした姿勢を取り、指導したり説得したりすることは時に必要だ。

そういう場合にもアドヒアランスという言葉を使うのはおかしくないか?

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そんなわけで私は今後もアドヒアランスなる言葉を使うつもりはない。

もちろん、患者さんによく説明し納得していただくことは重要だと思っている。

大事なのは言葉遊びではなく診療の中身であるべきだ。

(2010.8.11)

院長のつぶやき専門医と総合医

医療の世界は専門分化が進む一方だ。

眼科をやっていると他科の最近のトピックスにはついていけない。

逆もまた然りだろう。内科の医師は眼科の話題はわかるまい。

眼科の中でも、角膜専門、緑内障専門、網膜専門、斜視弱視専門などと分かれる。

専門外のことでも眼科の領域に関しては必死で勉強して知識を身につける努力はする。

それでも最先端のことはついていけなくなっている。

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一方で医師として一通りのことはできるように、という要請もある。

医師なら誰でも知っているべきことがある。確かにそれは正しい。

私は救急の講習に参加したり、内科系の糖尿病講演会も聴きに行ったりしている。

ただ、焼け石に水の感もある。医学知識はどんどん増えて膨大になりすぎた。

「最低限の知識」と言ったってその範囲はきわめて曖昧だ。

大多数の眼科医は、専門領域の学会だってごく一部しか出席できない。

まして内科や他科の講演会に出席して勉強することなど不可能に近い。

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眼科医が病院の全科当直をやらされているケースは多い。

当直免除になる医師がいればそれだけ当直負担が重くなる。

私も勤務医時代にやったことがある。「医師ならできるだろう」と。

ただ、腹痛だの喘息発作だの骨折だのを眼科医が診るのって無理がある。

実際には事務が「今日の当直は眼科なので・・」とほとんど断っていた。

英語の教師が「教師ならできるだろう」と数学の授業に駆り出された感じだ。

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最近は医師会が内科系主体の「生涯教育」を始めた。

全医師が受けろということなのだけれど・・・

「胸痛」「嚥下困難」「肛門部痛」「多尿」等84項目。

そりゃあ知らないより知っていたほうがよいとは思うが眼科ではまず遭遇しない。

眼科専門医制度と医師会生涯教育は全然別の方向。

両方を全員に強制するのはさすがに無理があると思うが。

(2010.7.25)

院長のつぶやき医師会候補の落選

参議院選挙で医師会候補は3人いて、全員落選した。

候補を一本化できなかった時点でこの結果は予想されていた。

比例代表候補の当選は、個人名での投票数で決まる。

今回、民主党でも自民党でも、個人名投票が11万票あれば当選できた。

3人で17万票集めたのだから一本化していれば当選していたはず。

医師会会長は親民主党、しかし他の執行役員の多くは親自民党。

分裂したせいで組織的な選挙活動もほとんど行われなかったようだ。

いつもならポスターを貼ってくれとか要請があるのだが、今回はなし。

3年前には19万票弱集めた。たぶん17~19万票が医師会の実力か。

医師数が27万人くらいで、政治的意見も様々だからこんなものか。

看護師や従業員が医師会候補に投票することも減っているのだと思う。

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3年前まで医師会が擁立した国会議員は2人いた。

前回の参議院選挙で武見議員は落選、今回西島議員が落選。

これで誰もいなくなった。(医師出身の議員はかなりいる)

医師会の考えを政治に反映させ、予算をつけることは困難になった。

もちろん、医師は診療することが本分。私自身は政治とは距離を置いてきた。

でも、こうなるとさすがに必要な医療費まで削られるのではないかと心配だ。

(2020.7.12)

院長のつぶやき「ホメオパシー」に騙されないで

以前、患者さんから「ホメオパシー」について質問を受けた。

その時にはよく知らなかったが、最近、医師の間で問題になっていることを知った。

どんなものかは Wikipedia で「ホメオパシー」と検索してほしい。

エセ医学と断定して構わないと思う。

科学的裏付けがない。エビデンスが全くない。科学の常識にも反する。

治療に使われるレメディなる砂糖玉にはプラセボ効果しか認められない。

薬の代わりになると信じて使うと大変危険だ。訴訟になったケースもあるらしい。

インターネットで薬効を主張して効能をうたっているけれど、

もちろんきちんとした臨床試験で薬効を証明した薬ではない。

明らかに薬事法違反だと思われる。

似たような話は多くてたいてい無視するのだけれど、結構勢力が大きいようだ。

現代医療への不信をあおって商売しようとする手口はエセ医学の常套手段。

だまされる人が多くなると社会的に問題となる。

くれぐれも騙されないよう、気をつけて!

(2010.7.11)

院長のつぶやき増税を言い出すと選挙は負ける

明日は参議院選挙。菅首相が消費税増税に言及した途端支持率急落。

税収37兆円で支出が92兆円、新たな借金44兆円ではやっていけないのは当然。

逆に増税なしでやれると言っている人は嘘つき。嘘つき政治家がたくさんいる。

嘘をつかないと選挙に勝てないっていうのも何だかなあ・・・

世論や民意は近視眼的で、結局自分自身の目先の利益しか考えていないんだな・・・

マスコミも大衆迎合だし。

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民主党は過半数が取れず、ねじれ国会必至らしい。

これで、政治の停滞は避けられず、物事が進まない状況が続くわけか。

それとも小政党がキャスティングボードを握って引っかき回す?

選挙で大して票を取れなかった政党が大きな顔をするのはどんなものか。

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最近は二院制の欠点ばかり目につく。

政治にスピードが求められる時代にそぐわない。

とりあえず選挙に勝った政党に任せて仕事ができるようにしないと。

「二院が同じ意見なら二院は不要だし、違う意見なら混乱の元になるだけ」

国会議員の既得権の問題なら数はそのままで統合してしまえばよい。

それに何百億円もかかる選挙をしょっちゅうやるのも無駄な気がする。

今度の選挙の予算は約500億円。これを毎年のようにやられてはかなわんなあ。

(2010.7.10)

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