川本眼科

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院長のつぶやき

院長のつぶやき24時間対応は無理

4月から診療報酬に「地域医療貢献加算」なる項目が新設された。
再診料に加算できる。診療所の再診料を20円減額した代償らしい。
たった30円ではあるが、再診の患者さん全員に自動的に加算されるので
月5~6万円になるから相当な金額ではある。
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今回の改定では、大病院で実施する手術料は30~50%アップになった反面、
視力・眼圧などの外来検査点数は軒並み減らされた。診療所の経営は厳しくなり、
大病院の収入は増える。疲弊する勤務医対策だというのだが・・
民主党のマニフェストでは医療費全体を大幅増額するはずだったのだから、
明らかな公約違反だと思う。政権交代してもこの国の低医療費政策は変わらない。
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そんな状況下で増額された数少ない報酬項目なのだから、本当はぜひ欲しい。
でも、条件を見てあきらめた。
「24時間患者の問い合わせに電話対応すること」
うーん。しかも医師が対応するのが原則らしい。開業医ならふつう医師は一人だけ。
もし毎日真夜中に電話があれば睡眠不足でふらふらになるのは必至。
いったん睡眠を中断されて、電話で話し指示し、その後すぐ眠れるわけがない。
20歳代の頃とは違い、夜中に起こされるともう朝まで眠れなくなっている。
1日だけなら気力で乗り切るとしても毎日毎日電話があったら体力が持たない。
翌日は別の医師が代わってくれるというわけではないのだ。
寝不足では医療ミスも起こしかねないし、愛想良く振る舞うことも難しい。
たいていの患者さんは常識人だから、よほどの大変な病状でない限り真夜中に電話は
しないだろうが、同じ患者さんが毎日電話してくるという事態は十分ありうる。
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留守番電話で受けてもよいという見解も示されたが、「速やかに電話をかけ返す」
というのは翌朝でもよいのだろうか? 速やか、という言葉では曖昧に過ぎる。
24時間対応を信じた患者さんからクレームがつきそうだ。
何人かの医師がグループをつくり、交代で対応する方法でもよいという。
でも、他院に受診している患者さんのことを電話だけで判断するのも怖い話だ。
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そもそも、確かに地方なら地域の診療所が対応する必要性は高いと言えるが、
名古屋市内にはいくつも大病院があるし、医師が大勢いて交代で夜間救急を
担当している病院もたくさんある。夜間はそういう施設を利用していただくのが
理にかなっていると思う。真の救急なら最初から大病院に直行すべきなのだから。

(2010.4.6)

院長のつぶやき大淀病院事件の誤報問題と毎日新聞社長の強弁

なんだか、最近同じようなことを何度も書いていて気が引けるのだが、
やはりここはちゃんと発言しておかないといけないと思う。

大淀病院事件をご存じだろうか。
2006年、お産のため入院した妊婦さんが子癇発作と脳出血をおこし亡くなられた。
転送先がなかなか見つからず、医療体制の不備を示す事件として注目を集めた。
報道をきっかけに裁判がおこされたがこの3/1に遺族の請求は棄却された。
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この事件は毎日新聞がスクープとして報じた。
しかし、初期の報道内容には問題が多く、医師の多くは誤報として批判している。
毎日新聞は死亡原因がはっきりわからない段階から医療ミスとして報道。
CTさえ撮っておけば妊婦は助かったかのごとく主張→裁判で否定された。
さらに妊婦が数時間放置された、と糾弾したのだが、これは事実ではなかった。
そういう記事を読めば誰だって医師を非難したくなる。だから誤報は怖い。
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後に出された毎日新聞奈良支局長のコメントを読むと、
「何度足を運んでもミスや責任を認めるコメントは取れませんでした。」
「遺族の『怒りの力』による」
と、当初から医師のミスがあったと決めつけていたことがわかる。
マスコミの思い込みは怖い。
なにしろ、思い描いた図式に合致することだけしか報道しない。
その図式に都合の悪い事実はわざと報道しない。編集権という名の下に。
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大淀病院は奈良県南部で唯一お産を扱っていた。
そして大淀病院には産婦人科医師は一人しかいなかった。
週3回以上当直していた。当直で一睡もできなくても翌日は休みではない。
この医師はこの事件でマスコミの非難を浴び、心が折れた。
なにしろたくさんのマスコミがスクラムを組んでよってたかって叩くのだ。
「精神的にも体力的にも限界」とお産をやめた。
その結果、奈良県南部でお産ができる病院は皆無となった。
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マスコミが初期の報道で正確さより速報性を優先するのは理解できる。
ただ、間違いがわかればきちんと訂正して謝罪するのが当然だ。
裁判の結果が出れば自分たちも反省することが必要だ。
報道が強い社会的影響力を持つことも自覚してほしい。
マスコミも当事者だし、報道の結果おこったことには責任がある。
面子にこだわっている場合ではない。
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ところが、3/20に毎日新聞朝比奈社長は唖然とする文書を配布した。
「医療態勢が崩壊していた現実を報道したのであって、
報道が崩壊させたわけではない」
えっ!? 完全に居直っちゃったの?
自分たちの報道と医師がお産をやめたことに関係がないと強弁するの?
奈良県南部にお産ができる病院がなくなったことに何の責任もない!?
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うーん。これは根本の姿勢から間違っていると言わざるを得ない。
ジャーナリズムは他の仕事より職業倫理を問われて当然だと思う。
情報操作により世論を操ることもできるし、政府を倒すこともできる。
それなのに他人に厳しく自分には甘いように見えるのはいかがなものか。
マスコミがその強大な力を使って一個人をつぶすことがあってはならない。
(2010.3.29)

院長のつぶやき医学部新設って、冗談でしょ?

2月21日の朝日新聞は一面トップで医学部新設の可能性を報じた。

国際医療福祉大、北海道医療大、聖隷クリストファー大の3大学だそうだ。

こんなこと、本気で考えているのだろうか?

医師不足騒ぎに便乗した悪乗りとしか思えない。

いったん大学を造ったら、簡単にはつぶせないのだ。

経営を考えれば入学定員を削減することもなかなかできない。

20~30年先に医師過剰問題が生じて大変なことになるのが目に見えている。

経営困難に陥った大学が高額な寄付金と引き替えに出来の悪い学生を入学させる。

金で入った学生は投資の回収のため卒後せっせと金儲けにいそしむ。

過当競争のため衛生・消毒など表面に現れにくい安全面でコストダウンが行われる。

倒産したり、借金で首が回らなくなった医師に医療倫理など全く期待できない。

・・・悪夢だが、冷静に想像力を働かせれば予測できる未来だ。

しかも、残念なことに、たぶんこの予測は正しい。

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実は歯学部に既に先例はある。

1970年代、80年代に歯学部をやたらに新設した。

現在、歯科医師が余って困っている。歯科医院はコンビニより多い。

歯科医院の経営は悪化、一部の歯科医師はワーキングプアとさえ言われる。

歯学部は定員割れが目立ち、希望者が事実上全員入学できる大学もある。

それで学生の質が低下しないはずがない。

大学の造りすぎが後でツケとなってはねかえる。本当は予測できたはずなのに。

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こういう問題に関しては世論とか国民の要望とやらも怪しい。

新型インフルエンザのワクチンが典型的な例だ。

ワクチンが足りないとパニックになりかかった。

マスコミと国民がワクチンを確保しろと大合唱。

しかし、いまや緊急に確保した輸入ワクチンのほとんどが余りそう。

1千億円が無駄になるらしい。・・・ためいきが出る。

マスコミは無関係のような顔をしているがマスコミの責任も大きい。

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目先のことだけ考えていると失敗する。

余分に用意しておけばよいってものじゃない。

医師不足に対しては、当面既設の医大の定員を増やして対応するのが正解。

それなら、十分な医師数を確保した時点で定員を減らせばよいのだから。

(2010.2.23)

院長のつぶやきマスコミの説明責任

マスコミがおかしい。

自分に甘く、自らの誤りを正す自浄作用が全く働かなくなっている。

マスコミの力は強大だ。政治も経済も社会もマスコミがコントロールしているようなもの。

現代社会は四権分立だと思う。立法、行政、司法、そしてマスコミ。

マスコミが世論を誘導し、選挙結果に影響を与える。四権のうちマスコミが最強。

それだけマスコミの責任は重い。ところがマスコミだけが他からチェックを受けない。

政治家以上にマスコミには説明責任があるのに、まるで果たしていない。

評論家の江川紹子氏がそのことを問題にしている。

江川紹子ジャーナル:新聞の「説明責任」を問う

小沢氏の問題に対するマスコミの姿勢を批判した記事だ。

念のため断っておくが私は小沢氏は嫌いである。

それでも今回のマスコミ報道は異常だし自己反省のなさには驚く。

小沢氏問題に限らない。医療問題にも同じ構図が成り立つ。

最初から善玉・悪玉を決めてイメージ作りをする手法。

そのイメージ作りに都合が良ければ伝聞や憶測で根拠が薄くても報道する。

いったん報道したことは誤報でも撤回しない。あるいは小さな訂正記事でお茶を濁す。

マスコミの主張に沿ったイメージだけはしっかり残るという寸法だ。

事の真実を追求するより、自分たちの立てた仮説を擁護することに汲々としている

「みんなで渡れば怖くない」とばかりに各社足並みを揃えた追いかけ報道。

自分の主張に都合の良い点だけ報道し、都合の悪いことは伏せておく不公正さ。

他人からの批判に耳を貸さない尊大な態度も目立つ。

マスコミは自分だけが正しいと思っているように見える。

マスコミの暴走を抑える仕組みを作らないととんでもないことになるかも知れない。

(2010.2.14)

院長のつぶやき眼科手術学会

1月22日(金)~24日(日)に日本眼科手術学会東京国際フォーラムで開催された。

私も土曜日の診療を終えてから急いで駆けつけた。

会場の東京国際フォーラムは医学関係の学会ではよく使われる。

東京駅から歩いて行けるのでありがたい。名古屋からでも午後3時半には到着した。

一番聴きたかった講演は聴けなかった。まあ、仕方ない。

休診にすれば朝から参加できるのだが、患者さんに迷惑がかかる。

プログラムは夜8時まで続くのでそれなりに新しい知識を仕入れることができた。

翌日も日曜の朝8時から昼過ぎまでみっちり勉強してきた。

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今回の収穫はボツリヌス毒素注射に関する講習を受け認定をもらったこと。

「眼瞼けいれん」や「片側顔面けいれん」の特効薬。他に良く効く薬はない。

自院でボツリヌス療法ができれば患者さんの手間暇が大きく軽減される。

いちいち大病院に紹介されて治療を受けに行くのは大変だ。

3ヶ月くらいで効き目が切れて繰り返し治療が必要なのでなおさらだ。

昔オウム真理教が細菌兵器として使おうとしたせいで取り扱いが極端に厳しい。

医療用の製剤は量が少なすぎて殺人なんて無理なのだけれど。

在庫を置くこともできないのでいちいち1本ずつ注文しなければならない。

廃棄処分方法にもうるさい。やれやれ、面倒だ。

(2010.1.26)

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