川本眼科

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院長のつぶやき

院長のつぶやき チカチカ、チバチバ、ペチャペチャ 2006年6月8日

日本語には擬声語、擬態語が多い。
ピカピカとかゲラゲラとかワンワンとかザーザーとか、とにかくたくさんある。
擬声語、擬態語は日本語の表現を豊かにしているし、しかも微妙に表現を
工夫して細かな違いを表すこともできる。
確かに便利なのだが、反面、あいまいになりやすいという欠点もある。

診察のとき自覚症状を説明するにも、こういう言葉は多用される。
「目がゴロゴロする」と言えば、ふつうは目の中に何かゴミでも入った
ような感覚があることを表現している。専門用語では「異物感」だ。
実際にはゴミはなくて角膜のキズだけのことが多いが、
症状を一言で言い表すことができて便利この上ない。

だが、1つの擬態語がいくつか違った意味に解釈できることもある。
例えば、「チカチカ」という言葉は、とがったもので刺されたような
感覚を表現することもあるし、光が見えている状態を表現することもある。
患者さんと医師が、お互いが別のことを想像して誤解を生むことが
あるから気をつけなければならない。
できるだけ、「チクチク」とか「ピカピカ」とか言い換えたほうが
間違いは少ないだろう。
もっとも言葉にこだわる方もいらっしゃって、
「いや、チクチクではなくチカチカなんです」と言われることもある。
確かに、微妙に違うのはわかる。だが、小説を書くのと違い、
診療上は言葉の違いにこだわってもあまり意味はなさそうだ。

「モヤモヤ」も難しい。かすんでぼやける状態を表現していることが多いが、
いわく言い難いような目の違和感をモヤモヤと表現する方もいらっしゃる。
頭がぼーっとしてはっきりしないことを表現していることもある。
質問してそのあたりを明確にしようとするのだが、患者さんにしてみると
もともと微妙な感覚なので別の言葉に直すのが難しいこともある。
「モヤモヤは、要するにモヤモヤなんです」などと言われて困ることもある。

「チバチバ」「シバシバ」というのもある。
とくに「チバチバ」は私が千葉県の旭中央病院にいたときに初めて
聞いた表現で、最初は千葉県の方言かと思った。実際には、
かなり広い地域で使われているようだ。
患者さんにとっては便利な表現で、目のあたりの違和感・痛み・
かゆみなどの自覚症状をすべてこの一語で表す。 しかし、あまりに
広い範囲をカバーする言葉なので、どういうことを訴えているのか
把握しにくく、厄介だ。
「目の調子が悪いんです」と言っているのと大して変わらない。
結局、具体的に細かい症状を聞き出す必要がある。

自分自身もいろいろな意味に取れる曖昧な言葉を使っていないか、
自戒したいと思う。

カルテに書くとき、「ゴロゴロ」を「異物感あり」と書いてしまう医師も
多いようだが、私は、患者さんの言葉は、なるべく患者さんが表現した
通りに書くことにしている。医師が無理に解釈することで、細かい
ニュアンスが伝わらなくなることを恐れるからだ。
同じ理由で、私はカルテを日本語で書く。英語やドイツ語の実力が
ないこともあるが、やはり日本語で表現したことを英語に翻訳して
記載するのは無理があると感じるからだ。
「朝はねちょねちょしていて、昼くらいになるとぺちゃぺちゃするんです」を
どうやって翻訳したらいいのか、私にはわからない。

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