川本眼科

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院長のつぶやき

院長のつぶやき名医ガイドは半分広告

「名医紹介のムックを出版するから広告を出しませんか?」
また企画書が届いた。今度は週刊新潮らしい。
今までにも、朝日、毎日、読売など、各社が手がける。

それだけ需要が多いのだろう。
より良い医療を受けたいという願いは切実なものがある。

ただ、こういう企画が乱立する理由がもう1つある。
医療機関が広告を出してくれることを期待しているのだ。
購入者が支払う代金だけでは利益は出ない。
広告料が収益の柱になっている。

広告料金は大きさによって、10万円、20万円・・と様々。
インタビュー記事のような体裁を装った広告もある。
一見すると広告には見えないので、宣伝効果が高くなる。
1ページで100万円、2ページで180万円。

以前、川本眼科だよりでも書いたけど、これはあくまでも広告。
大きな記事が出ていても、単に広告料をたくさん払っただけのこと。
宣伝コピーをあまり信用してはいけない。

(2016.9.11)

院長のつぶやきまた医師不当逮捕

警視庁がまた勇み足をやらかしたらしい。

女性患者が全身麻酔直後に外科医からわいせつ行為を受けたと訴えた事件。
医師は全面的に否定、病院はホームページで抗議文を公表した。

報道で明らかになった事実関係をみれば病院の言い分が正しいと思う。
女性の証言は「術後譫妄」だったと確信する。

それにしても、女性の証言だけを根拠にした逮捕って恐ろしい。
個室ならともかく、4人部屋で術直後の看護師の出入りが激しい状況。
どう考えても、ありえないと思う。

不起訴の可能性が高いし、裁判になっても無罪確実だと思われる。
実名報道をした報道機関は人権侵害に加担したことを反省してほしい。

警察は医師を逮捕することの重大性を認識しているのだろうか?
日本全国の外科系医師の士気を損なうことはなはだしい。
医師が女性患者の病室を訪れることを避けるようになる心配もある。
必ず看護師同伴なんてことになったら、その心配は現実になる。
どこの病院もマンパワーは不足していて、必ず同伴なんて無理だから。

証拠隠滅の恐れなどあり得ないのに、無理やり自白させようと逮捕。
こういう権力の濫用には、強く抗議する。

(2016.9.11)

院長のつぶやきドナルド・マクドナルド・ハウスへの寄付

ドナルド・マクドナルド・ハウスのことは以前にも取り上げた。
難病の子供を持つ家族が医療機関のそばで宿泊するための施設。
実際に、難病を持つ子供の家族が困っていて、必要性が高い施設。
そして、国や自治体がお金を出してくれない施設。

ネットをのぞいて少々驚いた。
「マクドナルドは儲けているのだから全額出せ」みたいな主張が幅をきかせている。
(今、日本マクドナルドは赤字のはずだが)
宣伝活動、売名行為としか捉えられず、誤解されている面があるようだ。

しかし、こんな施設を作ったところでハンバーガーがたくさん売れるはずもない。
私も、寄付はしたが、特にマクドナルドを食べるようになったわけではない。
同じハンバーグでも、少しお洒落な高級バーガーに食指が伸びる。
この活動とハンバーガーの売れ行きにはほとんど関係がないのだ。

宣伝なら、テレビでCMを流したほうが効果的なことは間違いない。
あるいは、抽選で何かが当たるとか、そういう促販活動をしたほうが売れる。
会社の利益だけを考えたら、道楽みたいな事業には手を出さないほうが良い。
1974年から40年以上にわたり、世界中の358ヶ所にこのハウスは作られた。
広告として役に立つなら他社が真似しそうなものだが、どこも手を出さない。
金ばかりかかって、宣伝効果が薄いからだ。

寄付がなければこのハウスは建たない。
米国では宗教的背景からチャリティの伝統があるため、寄付が集まりやすい。
だから米国には179のドナルド・マクドナルド・ハウスがある。
寄付が集まらない国では1つ(16ヵ国)か2つ(5ヵ国)しか建たない。
日本では医療関係者が苦労して努力して誘致した甲斐があって、
ようやく11のハウスができた。
でも、まだ足りない。もっと多くのハウスが必要だ。

ドナルド・マクドナルド・ハウスへの寄付に否定的なコメントをネットで流すことは
難病の患者・家族を苦しめることだと知って欲しい。
自分が寄付するかしないかは自由、でも足を引っ張らないで欲しい。

(2016. 8.16)

院長のつぶやきタンザニア眼科事情

金沢大学の佐々木洋先生の講演を聴いた。(2016.8.6)
海外で現地の人たちの検査をした結果を教えていただいた。
気象条件の異なる7地域で実際に調査された結果で、貴重な報告。

日本から検査機器を運び、日本人が検査しており、信頼性が高い。
国際比較の場合、同一条件なのかデータは信用できるのかが問題になる。
今回の報告はその点ケチの付けようがない。素晴らしい。

私が特におもしろいと思ったのはタンザニアの調査結果。
近視や白内障の進行に地域差・気象差がどう影響するか示唆に富む。

タンザニアの子供・若者に近視はほとんどいない。正視か軽度遠視。
つまりメガネをかけなくてもよく見える。
メガネ屋自体どこにもないらしい。
日本人では近視が非常に多い。圧倒的な差だ。

これは人種差なのか環境の差なのか。
ある報告ではアフリカ系米国人では近視27%、米国白人では近視21%
アフリカ系のほうが確かに少ないが、それほどの差ではない。
タンザニアでは近視はゼロに近いのだから、人種差では説明できない。
つまり、環境の影響が大きいと思われる。

近視が少ない原因はまだ仮説であって証明はされていない。
有力なのは「近業が少ない」「太陽光をたくさん浴びる」の2つだ。

近業とは近くを見る作業のこと。日本人は近頃、近くばかり見ている。
本やマンガを読む、携帯ゲーム機で遊ぶ、スマホを使う、・・・
タンザニアでは近くはそれほど見ない。遠くを見る時間が長い。
もっとも、アフリカでも最近急激にスマホが普及しているらしい。
状況は短期間で大きく変わる可能性がある。

太陽光が近視の進行に影響することは確実視されている。
「屋外活動を1日1時間以上すれば近視になりにくい」と証明された。
なぜかは未解明だが、松果体に光が影響するという説が有力だ
タンザニアでは家が開放的で家にいても相当量の太陽光を浴びる。
太陽光に含まれる紫外線量は日本の2倍近い。
なるほどこれは説得力がある説だ。
近年日本の子供に近視が増えたのは外で遊ばなくなったせいとも言われる。

それでは、子供にはなるべく屋外で生活させたほうがよいのか?
確かに近視は抑制されるだろう。
近視が強いと網膜剥離や緑内障になりやすいからこれは良いことだ。
しかし、実は太陽光の影響で増える病気がある。
白内障、翼状片、加齢黄斑変性だ。

タンザニアでは60歳を過ぎると白内障が急激に増える。日本より早い。
太陽光中の紫外線をたくさん浴びて、白内障になりやすく、進行しやすいのだ。
そのため、タンザニアでは60歳以上になると低視力者が激増する。

かつては日本でも歳を取れば白内障で見えないのは当たり前だった。
白内障手術の普及はそういう状況を大きく変えた。
これほど社会に貢献した手術はほかにないと思う。
タンザニア国内には白内障手術ができる眼科医はわずかしかいない。
佐々木先生によれば人口5千万人に対して10人ほど!
しかもみんな手術を受けるだけのお金はない。つまり放置される。
そして、白内障のために失明してしまうことになる。
タンザニア人の平均寿命は50歳くらいなので今は問題になっていないが、
これから寿命が延びていくと、将来社会的に大問題になると予想されている。

日本人は、どうすればよいのだろう?
日本では白内障は手術すればすむ。でも加齢黄斑変性は厄介だ。
今のところ、太陽光がどの病気にどれだけ影響するか見積もることは困難だ。
太陽光を浴びるべきかどうか誰にも答えられない。

プラスもマイナスもあるので、現時点では差し引きゼロと考えればよい。
屋外スポーツをしたい人はすればいい。健康的だと思う。
かといってインドアが好きな子供を無理やり外に連れ出すほどでもなさそうだ。

(2016. 8.7)

院長のつぶやき週刊現代2016.7.30日号のトンデモ医学特集

週刊現代の7月30日号が売れているらしい。
私も記事の内容を確認しようとしたが売り切れだった。
表題は「ちょっと待て!その手術、この薬が危ない」

週刊誌にしてみれば売れることは正義である。
完全な虚偽でなければ、少々怪しげな話であっても、
センセーショナルに取り上げて、病人の不安を煽り立てれば、売れる。
誰もがよくのんでる薬が危ないという記事を書けば爆発的に売れる。

逆に、科学的に正しくても、面白みのない話では、売れない。

ネタを提供しているのは浜六郎氏らしい。
この人の言説は知っている。トンデモ医学でメシを食っている人。
うっかり言っていることを信じたらエライ目に遭う。
ほとんどの医者は相手にしていない。
議論をすることさえ時間の無駄と思っている。

ところが、無視すると逆に絡んでくるのですな。
「本当のことを言われて困るから議論を避けている」とか
「悪徳医者が既得権を守るために正論を吐く筆者を集団で排除しようとする」とか
自分は正義の味方で、陰湿で権威主義的な悪い医者集団と闘っている、と主張。

週刊誌ネタになりそうな面白い構図を作って売り込むわけ。

それにしても、こういう記事が出ると必ずそのまま鵜呑みにする人が出てくる。
その結果、病気を悪化させたり、起こさなくて良い合併症を起こしたりする。
週刊誌は、ある人の主張を紹介しただけ、とか反対意見も採り上げましたとか、
自分には責任がないかのごとく弁明するのだろう。

なお、私は眼科医である。
週刊誌に出ている手術や薬は私の日常臨床とは無縁だ。
つまり、週刊誌の記事に対して直接の利害関係はない。
(記事が出て自分が処方している薬を非難されて反論したわけではない)
むしろ、記事に登場する高血圧の薬を私は自分で処方してのんでいる。
これからものみつづけるつもりだ。

(2016. 7.20)

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