川本眼科

文字サイズ

小 中 大

院長のつぶやき

院長のつぶやき「医者=悪者」という図式の決めつけ報道

ここのところ朝日新聞への批判を何度も書いてきたので「個人的に恨みでもあるのですか?」と聞かれた。

別に個人的に恨みは全くない。それどころか、実は「朝日小学生新聞」以来40年以上の読者でもある。

新聞はたいてい2誌購読していて、一方は読売だったり毎日だったり日経だったり・・今は中日新聞だが、

もう1誌はいつも朝日新聞だった。東京から名古屋に転居しても取り続けてきた。

朝日新聞の記事検索asahi.com Perfectにも入っていて、毎月料金を払い続けている。

診療所の待合室にもその週のAERAが置いてある。

朝日は言わばマスコミの代表だと思っている。だからこそいい加減なことを書いてもらっては困るのだ。

-

朝日で目立つのは「医者=悪者」というステレオタイプで割り切った報道で、長年続いている。

「事故で救命できなければ救急医が悪い」「子供が脳性麻痺なら産婦人科医が悪い」

「救急患者の受け入れ先がないのは医者が悪い」「患者が死んだらなんでも医者が悪い」

「とにかく医療事故はすべて医者が悪い」

近年、医師の側が声を上げるようになり、マスコミに反論をするようになってようやくマシになった。

逆に、反論をしなければ報道内容は絶対に訂正されることはなく、「事実」として一人歩きしてしまう。

その場合、医師や医療機関側がマスコミに立ち向かうのは困難を極める。

なにしろマスコミは自分たちの都合の良いようにいくらでも記事が書ける。発表手段を独占している。

それに対し報道される側が声明を出してもほとんど無視された。

インターネットが普及してようやくマスコミの独占状態に風穴があいた。

-

東大医科研ワクチン報道(2010.10.15)は完全に朝日新聞の勇み足だった。

「医科研ががんワクチンの副作用を隠蔽しようとした」

「裏には中村教授が金銭的利害により開発を急いだ事情があった」

というストーリーを想定し、取材不十分なまま1面トップのキャンペーン記事にした。

新聞側の落ち度がこれほどはっきりしているケースは大変珍しい。

普通は報道される側にも何かしら非難される点があるので、正面切った反論は難しい。

今回は違った。医科研側は猛然と反論した。問題になった「有害事象」は副作用ではなかった。

名指しで非難された中村教授はワクチンの治験に関わっていなかった。

日本癌学会も日本がん免疫学会も抗議し、高久文麿日本医学会会長までがこの抗議を支持した。

朝日側はやむを得ず急激にトーンダウン、最近の記事ではもっぱら弁明に努めている。

糾弾調は影を潜め、「治験のあり方に一石を投じただけだ」というのだからちゃんちゃらおかしい。

-

私は当事者ではないので細かい論点を論じることはしない。

ただ、今回の「言いがかり報道」は「医者=悪者」という図式の延長線上にあると考える。

言うなれば朝日新聞の伝統的な偏見の表れだと思う。

中村教授側は12/8に朝日新聞を名誉毀損で提訴した。

元記事は医科研が悪事を働いたと「示唆」「想像」させるよう随所に工夫してある。

しかし、巧妙に断定を避けているので訴訟に勝つのは大変だろうと思う。

それでも、殴られた時に泣き寝入りではプライドを保てない。

この裁判が言葉尻をつつき合うことに終わったら不幸だ。

マスコミ報道の問題点を明らかにする場になってくれれば、と切に願う。

(2010.12.12)

院長のつぶやきレーシックの価格競争と集団感染

レーシック手術後に集団感染を起こした「銀座眼科」の院長が逮捕された。

行き過ぎた価格競争の結果と言われている。

手術に使うエキシマレーザーは数千万円もする上に維持費が馬鹿高い。

手術に使わなくても機械を持っているだけで金がかかるという代物だ。

コンスタントに患者を集めて手術をし続けなければたちまち赤字となる。

無理をしても「機械を遊ばせておくよりは・・」と患者集めに走る。

しかし、手術内容の細かな差は患者にはわからない。結局は価格の勝負となる。

価格を下げても経営を立ちゆかせるためにはどこかでコストダウンが必要だ。

広告費などは削れない。患者集めに必須だから。

人件費も削りにくい。特に検査ができるスタッフは給料が高くても辞めさせられない。

しわ寄せが来るのは患者の目に見えにくい衛生管理の部分になりやすい。

本気で衛生管理に取り組めば金も手間暇もかかる。

滅菌消毒器のメンテナンス。空調の特殊フィルター。浮遊細菌のチェック。

スタッフ全員の手術時手洗い教育。使い捨て製品の使用・・・

手を抜いてコストも浮かせるという誘惑にかられてもおかしくない。

さらに、術後の通院回数を極端に少なくしてアフターケアに手を抜く手法も目立つ。

「何か問題があったら近所の一般眼科にかかって下さい」と言い放つそうだ。

手術費用には術後ケアの分も含まれているはずなのに。

それに自費の手術の術後観察を健康保険で診療するのは本来違法だ。

元凶は無理な価格競争、無理なコストダウンにある。

どうも「安かろう悪かろう」になってしまっている気がする。極端に安い場合は要注意だ。

視機能は大事だ。角膜混濁や高度不正乱視などの後遺症が残ったら一生後悔する。

レーシックをしようと考えている人は価格よりも安全性を重視してほしい。

(2010.12.7)

院長のつぶやきスキャンダル政治

柳田法相が辞任した。

この人はもともと法務に疎い人だったようなので、もともと資質に問題があったとは思う。

ただ、失言に対するメディア・スクラムが尋常ではなかった。

この問題ばかり連日連夜一面報道するほどの重大事なのだろうか。

ほかにいくらでも大事なことはあるだろうに。日本はそれほど平和で問題が少ないのか。

大新聞やテレビの報道番組がタブロイド紙やワイドショーに堕した感がある。

-

もともとの失言だって、ある意味国会の現状を言い当てている。

国会質疑が形骸化していることの揶揄・皮肉になっている。間違ってはいない。

ただ、当事者がそれを言っちゃいけないよ、ということで非難を浴びた。

でも、本当は発言を非難するより、国会審議のあり方こそ非難されるべきだろう。

昔「前向きに検討させていただきます」を何百回繰り返したのは自民党政権だった。

そして実際には何もしなかったのだから罪は深い。自民党に非難する資格はない。

自民党と連立政権を担った他の党も無罪とは言えない。

-

失言で辞任させられるとなると、何かと失言のあら探しになりそうだ。

失言しないように本音を言わず当たり障りのない応答ばかりするのは良いことなのか?

政治家は言葉も大事だが、結果としてどんな成果を出したかはもっと大事だ。

政敵倒しのため互いにスキャンダル探しばかり熱心になるのは勘弁してほしい。

反対のため、選挙のために人格攻撃・・ってアメリカの悪いところを真似しすぎ。

(2010.11.24)

院長のつぶやき救急車の不適切利用を奨励する朝日新聞

救急車の不適切な利用が増え、問題になっている。

タクシー代わりに利用したり、軽症で緊急性がないのに救急車を使う人が多い。

「救急車で行けば順番を飛ばして診てくれると思った」という身勝手な理由も多い。

こういう人が多いと真に救急車が必要な人が救急車を呼んでも出はらっているかも知れない。

実際、軽症利用者激増のため救急車の現場到着時間は10年間で6分→8分に延びたそうだ。

心停止の場合だと、蘇生開始が1分遅れると救命率が10%下がる。

救急車の不適切利用が他人の命を奪っている! これは深刻な問題だ。

-

当然、オピニオンリーダーたるマスコミはそういう状況を理解して報道することが求められる。

ところがこの問題を全然理解していないとしか思えない記事が出た。

10月24日朝日新聞によると、

尿管結石で病院で順番待ちをしていた53歳の男が激痛の発作に見舞われた。

看護師に訴えたが待てと言われたので病院外に出て119番通報した。

救急車は来たがその病院が「自院で対応する」と言ったので引き返した。

男はその後2回通報したが出動は拒まれた。

そこでタクシーに乗って消防署に行き、救急車に乗せるよう談判、他の病院に救急車で運ばれた。

-

朝日新聞は「救急車、患者搬送せず引き返す」と救急隊の落ち度のように報じた。

だが、上記の事実関係から判断する限り、救急隊の対応は正しい。

朝日新聞は公器として救急車の適正利用の観点から報道する義務があった。

見出しは「病院外に出て救急車を呼ぶ」とでもすべきだった。

尿管結石の発作は確かに痛い。だが危険性は少ない。命の危険はない。

最初の病院が速やかに鎮痛処置をしておけば問題はおこらなかっただろう。

しかし、もっと重症の患者がいれば少し待たされることはありうる。

そのまま最初の病院にいれば多少は待ってもじきに処置を受けられただろう。

外に出て119番通報し、タクシーで消防署に行っている間に処置は終わっていたはずだ。

おそらく病院の対応に腹を立てたのだろうが、救急車を巻き込んではいけない。

そもそも、本当に激痛のときはタクシーで消防署まで行って談判なんかできない。

最初は激痛でも時間が経って収まったのだろうが、それならなおさら救急車を使ってはいけない。

消防署の対応で不適切なのは結局救急車を使わせてしまったことだ。

タクシーが使えるのだから、タクシーで別の病院に行ってもらうのが正解。

ゴネ得を許したことになる。理不尽な要求でもやった者勝ちという悪例を残した。

医療や搬送に使える人も金も時間も残念ながら有限だ。

どうしても優先順位をつける必要があり、命に関わる場合が優先される。

-

朝日新聞の報道はステレオタイプ化されているのが特徴だ。

医療関係者はすべて悪で、患者側はすべて善という単純きわまりない割り切り。

すべての事件をそういう勧善懲悪的発想に基づいて報道しようとする。

特に取材が不十分で背景がよくわからない段階での報道にそれが顕著に表れる。

中国が「悪いのはみんな日本」と決めつけるのとよく似ている。

今回は医療関係者の代わりに救急車が「悪」とされ槍玉に挙がった。

記事にする前に、記者はもっと自分の頭でよく考えたらどうだろう。

ちょっと考えればどこに問題があるのか見えてくるはずなのに。

記事は「命をどう考えているのか」という男の言葉で結んでいる。

これをそのまま朝日新聞に返したい。

救急車の不適切利用を奨励するのか。命をどう考えているのか。

(2010.11.6)

院長のつぶやき朝日新聞はコメントもでっちあげていた!

東大医科研がんワクチン治験に関する朝日新聞大誤報の第三報。

われながらしつこいとは思うのだが、あまりにひどい話なので仕方ない。

朝日新聞は記事の中で臨床試験の共同研究をしている関係者のコメントを載せている。

「私たちが知りたかった情報・・・なぜ提供してくれなかったのだろうか」

このコメントで医科研が悪いことをしていると読者に印象づけているわけだ。

ところがすべての臨床試験実施施設で確認したところ、

(1)朝日新聞記者から直接対面取材を受けたのは大阪大学だけ

(2)大阪大学ではそのような応答はしていない

たくさん共同研究施設はあるのに1つしか取材していない!

手抜き取材ですな。そのいい加減さは推して知るべし。

そして、どこにも存在しない幽霊みたいな関係者の証言・・・これって捏造でしょ?

-

日本癌学会、日本がん免疫学会、日本医学会、がん患者団体等が抗議声明を出している。

医療関係者の中で朝日新聞を擁護する意見はほとんど聞かれない。

それなのに朝日新聞はいまだ訂正も謝罪もしていない。

仮にも大部数を誇る大新聞社が朝刊1面トップで掲載した記事だ。

ワクチン開発を遅らせ、東大医科研の名誉を毀損し、世論を間違った方向に誘導した。

何しろ社説ではナチス・ドイツの人体実験にまで言及して非難したのだ。

朝日新聞は「研究者の良心が問われる」と述べた。

話は逆だ。「朝日新聞の良心が問われる」

何の説明もせず、責任にほおかむりすることは許されない。

(2010.11.4)

院長のつぶやき

最近の投稿
2020年8月2日
最近の川本眼科
2020年6月8日
コロナの日常
2019年11月4日
名古屋市医師会急病センター
2019年11月1日
川本眼科25周年
2019年2月25日
リニア新幹線
2019年2月3日
北側への増築工事
2018年4月26日
受診されていない方のお問い合わせ
2018年4月16日
身体障害認定基準の改正
2018年4月13日
スマホの買い替え
2018年2月25日
入試出題ミス救済処置への疑問