院長のつぶやき 朝日新聞の大誤報 2010年10月20日
朝日新聞は10月15日朝刊の一面トップで東大医科研を攻撃する記事を掲載した。
がん治療ワクチンが原因で消化管出血をおこしたのにそれを隠蔽したとする内容。
だが、現在までの情報を総合すると完全な早とちりだったようだ。
つまり、消化管出血とワクチンの間に因果関係はないと医科研では判断しているのだ。
もちろん、因果関係の有無を100%証明するなど無理に決まっている。
ただ、大マスコミが1面トップで断罪する以上、叩く相手を疑うそれなりの根拠は必要だ。
ところが続報もなく、どうやら根拠はきわめて薄弱のようだ。
新聞記者の無知がおこした大誤報らしい。
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誠実な医学研究者は、因果関係が99%ないと判断しても可能性は0%ではないと考える。
臨床治験中におこったことはどんなことでもすべて記録する。後で検証するために。
そのうち患者に不利益なできごとを「有害事象」と呼ぶ。
例えば、ある朝ビタミン剤をのんだ。昼下痢をした。
普通ビタミン剤が下痢の原因になることはないが100%原因でないとも言い切れない。
そこで「有害事象」として記録しておく。これは副作用という意味ではない。
記者は「有害事象」なる言葉の響きにつられて薬の副作用と即断したようだ。
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別の見方もある。
わざと「有害事象=副作用」と誤認させるような記事を書く。
手間暇かけた取材だから記事にならないと困る。特ダネにしたい。
見出しだけセンセーショナルにすればみんな医科研が悪者だと信じるさ。
自分たちが立てた筋立てに都合よい情報だけ組み合わせて話を作る。
関係者の発言の断片を恣意的に切り取ってつなぎ合わせているとも指摘されている。
もし本当にそういうことなら罪は重い。ほとんど捏造に近い。
少なくとも名誉毀損に相当するだろう。
誤報でも訂正記事は出さず、誤報の印象だけ広めるのはマスコミの常套手段。
自らが作り出したイメージを利用して自分たちを正義の側に見せかける。
汚いやり口だと感じる。良心に恥じないのだろうか。
マスコミは第四の権力でその力は大きい。もっと責任を自覚してほしい。
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なお、私は東大医科研とは何の利害関係もない。
まったくの部外者で報道やインターネットからの情報しか知らない。念のため。
(2010.10.20)